BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

父娘の限りなき愛~人気子役・福田麻由子の『雨と夢のあとに』

6月頃、配布チラシを見てから、とても気になっていた芝居が劇団キャラメルボックスの『雨と夢のあとに』でした。そのチラシでは、今をときめく売れっ子人気子役の福田麻由子ちゃんが観覧車の前を見上げてる写真があり、なんだか妙に後ろ髪が引かれる雰囲気で。病み上がりのため悩んでいましたが、「やっぱり気になる!」と昨夜見に行ってきました。


前評判をちらっと読むとかなり泣かされる・・・ということで、涙もろい私はまずテキメンだろうと想像していたのですが、ベタベタと泣かせどころ満載という作りではなく、どこかカラリと爽やかで清々しささえ残る味わいに素直に嬉しさを感じ、とても満足しました。筋や見せ場を掘り下げると魅力が半減してしまいそうなので、中途半端な感想になってしまいますが。


あらすじ:小学6年生の桜井雨は、台湾に一人、蝶を採りに出かけた父親朝晴を待ちわびていた。そこへひょっこり帰ってきた朝晴。父娘二人きりのささやかだが暖かい暮らしがいつもの通り続く、と疑わない二人だったが、思いもしない形で別れが時が迫ってきていた。二人をとりまく人々の可笑しいけれども精一杯な心配り、やがて雨は大好きなパパと思い出の観覧車へ乗り込み、二人だけの最後のひとときをすごす。


芝居の開始直前、キャラメルボックス名物の前説があり、そこで法律(児童福祉法?)のからみで「子供なので21時までに麻由子ちゃんは、劇場を出なければいけないんです。」という説明がありました。ということで2時間ノンストップ、スピーディで飽きない舞台でした。中央の張りガラスには、時折人工の雨が滴るというちょっと凝った作り。


朝晴役の岡田達也さんはこの劇団の実力派の一人なのでしょう、若い父親ぶりでしたが娘への溢れんばかりの愛情を体中から湯気が出そうなほどに熱演していました。麻由子ちゃんも、シッカリ者だけれども、時折見せるはにかんだ笑顔が眩しく、TVや映画で見るよりも年齢相応に素直に見えました。さすがに今ノリにノッてる売れっ子女優(笑)だけに出てきただけでとても存在感があります。


『止まらない12人』観劇以来、そのダイナマイトボディと只ならぬ強烈な演技力でちょっとファンになってしまった楠見薫さん*1も出演されていたのがとても嬉しかったです。


元々、キャラメルボックスは小劇団系とはいえ、かなり人気のある劇団なので、役者はみんな個性的で上手いのですが、朝晴の父母役をもう少し年季の入った役者が演じたら良かったかも、と思いました。


この芝居、柳美里さんの原作でドラマ化もされているようです。一つ一つのエピソードは特に目新しいものはないのですが、非常に感情の機微を捉えていて予定調和にならないのが見事です。しんみりしそうな題材なのに、キャラメルボックス特有の”笑い”が調味料となって、笑わせながら同時に泣かせてくれます。


お互いを思いやって生きている親子、ささやかな日常こそが愛おしい・・・と優しい気持ちにさせてくれる良い芝居でした。

【劇団キャラメルボックスについて】


実は何を隠そう、キャラメルボックスは私にとって苦手な劇団でありました。何故かというと、芝居の中で要所要所に飛び出す「笑い」の演出に独特のクセがあり、役者の上手さとファンの「待ってました!」的なムードが一部馴れ合い化している感じが、どうにも引いてしまう・・・と。*2しかし、これは本能的なものなので慣れるしかないところですね(汗)。


今回の芝居はとても好きで「DVDが出たら買うぞ!」と思ってるのですが、相変わらず劇団自体はそんなに得意ではないかも。一方、この劇団が熱烈なファンを持つ所以は分かる気がします。ファンをサポーターと呼び、アットホームなムードとあらゆる方法で醸し出されるサービス満点ぶりはすごい。スタッフの懇切丁寧ぶりも商業演劇ではありえないほど見事です。


入場した瞬間から、「キャラメルワールドへようこそ!」という感じ。こんなに愛されてて役者がいい加減な演技をするわけがない(笑)と思わされてしまうのです。劇団の個性の違いは、良くも悪くも非常に面白いですね。

福田麻由子ちゃんのこれから】


下妻物語』のこまっしゃくれた子供、『女王の教室』『白夜行』の陰を背負った美少女、『日本沈没』の健気な娘、といわゆる”ザ・子役”な活躍をしている麻由子ちゃん。これから中学生になってどんどん大人っぽくなっていくでしょうが、子役のカベを超えた実力派に成長するのかどうか楽しみです。彼女の魅力は、あの”暗い瞳”と儚げな笑顔。


今は大人への階段を登る一歩手前、なかなか魅力的な時期だと思うので、ちょっとシュールで笑顔が少ない(笑)写真集を出して欲しいなあ。そんなの買うのは私くらいでしょうか。

◇公式サイト:演劇集団キャラメルボックス[CARAMELBOX]
 8月20日まで東京、8月24〜31日は大阪公演。

FLARE-フレア- [DVD]

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雨と夢のあとに

雨と夢のあとに

 原作本です。少女・雨の目から描いているとか。

*1:後藤ひろひと氏の愛妻、”薫ちゃん”です。

*2:舞台の上と下での駆け引きは好きなのですが、お互い狙いすぎると醒めてしまって。