BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

ジャケ買いを阻む?トレブル・ソリスト集

もろボーイソプラノを取り扱った映画が公開されたり、ドラマや映画で意外と静かな合唱ブーム(?)という噂もある昨今。季節的にも秋に差し掛かり、少し肌寒く人恋しくなる、物寂しい季節です。そんなときには、ちょっと静かにトレブル・ソロなど聴きたいじゃありませんか?!


今夜もそんな思いで、渋いジャケットの作品を取り出してきました。私自身は、「ほうら、どうだ。文句なしに可愛いだろう!」とお顔ドッカーンのわかり易いアルバムが好きなんですが、世の中にはヒーリングブームを狙ってか、単に予算の都合か(笑)、「全然、売る気ないじゃないの?」と疑ってしまいそうになる、不思議に地味なジャケットがあります。


アイドルブームが長いわが日本では、滅多にないことのような気がするんですよねえ。少年ソリストの写真が表紙に全く出てないようなCD。(もしや顔出し御免のソリスト?なんてことはあるまいし。)でも、輸入盤は半分以上、そんな感じ。絵画ですらなく、デザイン画みたいな無機質なものも多く、試聴しないで買うのにはかなり勇気が要ります。


かといってあまり事前に調べたりも好きではないので(まっさらな感覚で少年の声に出会いたい)、結局、勢いに任せて買ったりしちゃいます。おかげで成功率は、五分五分ですけど・・・(汗)。今回は趣向を変えて、地味だけど印象深いCDをちょっと書いてみましょ、と。


Cantus angelicus/Heldur Harry Polda

このCDは、取り揃えてる曲が耳に馴染んでる人気のものばかり、そこに斬新なアレンジが特徴的で、なんだか妙に心が躍ってきます。本当にジャケットは、地味なのに。1996年生まれのHeldur君は、エストニア出身。8歳の頃から、オペラやミュージカルの舞台に少年ソリストとして立っていたようで、なかなかのキャリアのようです。


ライナーノーツの一番最初に写真が載ってますが、結構トウが立ってる感じのソリストに見えます。2011年10月、彼が15歳の時の録音のようですが、声は平べったく、甲高い感じ。オペラ風の声を張り上げるタイプの歌が得意そうな感じですね。最初は、ちょっとばかし抵抗がある声なんですけど、完成しきってないところが微妙な揺らぎを感じさせて、なかなかよろしい。


中でも、2曲目の「カッチーニアヴェ・マリア」は、アレンジがまるで舞台から流れているような、臨場感と切なさが叙情的な歌声と相まって最高で泣けます・・・(感涙)。タリン・シンフォニアというグループの演奏が、普通のオーケストラと異なり、とっても軽やか良いのです。


アヴェ・マリア」などのいわゆるクラシックの有名曲から始まって、最後のほうは、なぜかミュージカルナンバーの「オリバー」「マイフェア・レディ」が出てきたり、まか不思議な選曲が面白いです。ラストを締めくくる「Caruso」は、どこか懐かしい歌謡曲のような感じの曲で面白かったですね。ボーイソプラノと言っても、こういう曲こそ、個性がしっかり出てくる気がします。


Cantus Angelicus

Cantus Angelicus


J.S.Bach集/Constantin Emanuel

たまたま夏頃に、渋谷のCD店で2度も見かけたCD。ちゃんとソリスト名も太字で「boy soprano」としっかりジャケットにも書いてあるので、「何だろう、これ?」と気がつきました。バッハ作品集なので、さすがにそこまで間違いはないだろう、と勝手な思い込みで買いました。


オルガンとボーイソプラノがときに共演、または交互に淡々と続く・・・という構成です。Constantin Emanuel君は、スイス系ドイツ人で、音楽の勉強もしている少年で、過去に歌の受賞歴もあり、オペラや大曲への出演作もあり、いろいろとキャリアを積んだソリストのようですが、どの合唱団出身とかは書いてありませんでした。2014年の録音ということです。


ライナー・ノーツにモノクロの大きな写真があるので、その容姿を見たところ、彼も14歳かそれ以上には見えますね。安定感のあるソプラノで、高音は私のあまり得意ではないタイプの声*1ですが、普通にうまいです。割と単調に進むのでバックミュージックとして邪魔しない、それでもバッハなので眠たくなるほどではない感じです(とかいいつつ、初回は寝ちゃったかな?)。

Bach, J.S.: Constantin Emanuel

Bach, J.S.: Constantin Emanuel


バッハ・カンタータ131番、12番、51番/ベルサイユ少年合唱団

ソロ集ではありませんが、バッハ/カンタータの51番のソプラノソリストAugustin Serraz君が印象的だったので、一応挙げときます。もちろん、アーノンクール全集でも聴いて知ってる曲ではありますが、この51番はほとんどソプラノ独唱なんですね。べらぼうに上手い、というタイプではないのですが、いかにも少年らしい澄み切った透明な声質が素敵でした。

Cantatas Bwv 12 51 131

Cantatas Bwv 12 51 131


boysvoice-2.hatenablog.com



Pray of Passion/Jeremy Budd

確か20年くらい前、無駄に体力とエネルギーがあった頃(笑)、輸入CD店も花盛りで膨大なCDをそろえている店舗が多かった、あの良き時代。古楽コーナーで見つけた”掘り出し物”の1枚です。Jeremy Budd君というトレブル・ソリストとカウンター・テナーのMichael Chanceのデュエットや、楽器だけのものや、トレブル・ソロとオムニバス形式で進む、ちょっと環境音楽のような(笑)作品。


「一体、これを何の情報もなくいきなり見つけ出せる人っているの?」と、見つけてからも思わずのけぞるほどに、クレジットには小さな文字で申し訳程度に書かれたソリスト名が。ソリストについての情報すら書かれていない超不親切なCDですし、面白くはないんですが、かなりJeremy少年の絶頂期のトレブルボイス(私的にも理想的なタイプの声です)が地味な曲でも、煌びやかで苦労のしがいがあった、一枚でした。


Jremy Buddは、セント・ポールカテドラル合唱団のトレブル・ソリストで、録音も結構多いですし、当時結構名が知れていた?ソリストだったと思います。私は、ポール・マッカートニー作曲の「リバプール・オラトリオ」という、いまいち面白味のなかったビデオで彼の歌う姿を見ておりました。


彼は今もテナーとして歌っているようですね。このアルバムは、バージンクラシックスからの発売で、1990年録音のアルバムです。

Byrd;a Play of Passion

Byrd;a Play of Passion


聖セシリア島のオード/Simon Woolf

最後は、本当に個人的趣味になってしまいますが、パーセルの「聖セシリア島のオード」を挙げます。私のとって憧れの、'60年代トレブル、Simon Woolf君がたった2曲だけ参加しているのですが、そのソロがあまりに好きで好きで・・・。特にバスとのデュエット「Hark, each Tree」は、一度聴いただけで虜になってしまいました。


どこまでも天高く舞い上がる、明朗快活な少年らしいソプラノ、Simonの「Hark・・・」を聴いてから、この曲を他のソリストでは聴けない、と思ってしまったほどの魔力がありました。どちらかというとちょっと可愛い感じの”決してお高くとまっていない”タイプの優しい声なんですけど、なんでこんなに好きなんでしょう。


時代も国も飛び越えて、まるで曲の深みから語りかけてくるような親しみやすさととてつもなく説得力のある歌唱、それが稀有なトレブルの証かもしれません。Simonは、当時ソロアルバム(LP)を発売しているだけの実力があるソリストでもありましたし、その片鱗はこの2曲だけでも存分に伺い知ることができます。69年ロンドン録音。

Ode on St.Cecilia's Day

Ode on St.Cecilia's Day


以上、一体売る気があるのか、ないのか・・・なCD特集でした。次回は、思いっきりジャケットで買わせて、挙句に内容も良いという(笑)CDを紹介したいと思います。


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*1:伝説の超絶トレブルソリスト、Max E. Cencicに似た女声に近い声