BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

映画「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」鑑賞記

ボーイソプラノ

映画「ボーイ・ソプラノ ただひとつの歌声」が公開され、地元の映画館*1で見てきました。この映画のことを知ってから、初秋の上映はまだまだ先かあ、なんて思っていたのに、あっという間にこの日がきちゃうとは。


映画のストーリー自体は、かなりシンプルです。家庭環境に問題を抱え、いつも何かに苛立っているような主人公ステットが、全米一の厳格な”国立少年合唱団”の寄宿学校で音楽教育を受ける間に自分の才能を開花させていく、というお話。でも、全体的にトーンを落として真面目に描き出して、ハリウッド映画特有の成功物語的な明るいイメージではありません。


むしろ、ハイレベルな教育や教師達の間でもがきながらも、次第に自分と向き合っていくステットは、音楽を通してやっと「自分のプライドと心の声」を取り戻していく・・・という1人の少年の成長物語でした。音楽をスポーツに置き換えても成立するような、オーソドックスな内容でした。ステット役のギャレット君もぴったり役のイメージに合ってましたね。可愛い顔立ちなのに、敵意むき出しの表情が印象的で、孤高な感じや、葛藤しながら必死にもがている様子をちゃんと演じきっていました。


アメリカ映画でよく見かけるようなハートフルな場面はかなり抑え目なっていて、ダスティン・ホフマンをはじめ各教師達の厳しい叱咤の言葉や、強い視線の交し合いなどで進んでいきます。一方で合唱団の経営論とか、「質の高いソリストを持ちたい」「あの合唱団には負けたくない」なんて本音も出てくるのが面白かったです。


映画の主役は、ボーイソプラノと音楽


この映画、アメリカ少年合唱団(American Boyschoir School)が全面協力していて、あの存在感あるヨーロッパ風な寄宿舎も、出演する少年合唱団団員もほとんどがアメリカ少年合唱団の団員達(主要な少年6名が子役)のようですね。ボーイソプラノソリストの声は、吹き替えだとしても、コーラスの見事さなんかは、まさに鳥肌ものです。


しかも選曲もなかなかのもの。コンサートで何度も耳にした曲がスクリーンから響いてくるのも嬉しくて、すぐにサントラあるのかな?と思いました。ボーイソプラノの歌声は余すところなく、これでもか、と登場していましたし。バックミュージックでも絶え間なく流れていて、やや過剰なくらいに(笑)。


プチ情報ですが、少年合唱団がツアーで行く先が日本で「ほたる来い」の輪唱を練習していたり、ある少年団員が語る日本ファンの印象とかが「まさに・・・それよねえ(苦笑)」と思える台詞があったりクスッと笑えちゃいました。全米選抜エリートばかりの団員の鼻持ちならない感じとか、本当にああいう子ばかりじゃないよね(笑)、と願いつつも。


全体的にすごくドキュメンタリーの味わいを持った映画という感じがします。その昔、「制服姿を脱いだ時の君たちがいつも天使であれ、とは思わないが。」という台詞が出てきた漫画(映画だったかな?)がありましたが、年頃の少年達の生存競争の激しさ、みたいなのもチラつかせて、いつの時代もどの国でも変わらない生きづらさを感じる瞬間もありましたし。


すごく地道でシリアスな映画なので、一般受けはしないような気がしますが(汗)、この数十年で見た映画の中で、「最も少年合唱団をちゃんと描いた作品なのではないか」という気がしました。そして、パンフレットがなかなかに美しく麗しい(写真上)ので、映画館へ足を運ばれたボーイソプラノファンは是非ゲットして欲しいです。


アメリカの少年合唱団は、似たような名前の合唱団が多いのですが、恐らく私はこのアメリカ少年合唱団の来日公演を、'90年代に見に行ってます。当時、ヨーロッパの少年合唱団ばかり聴いていたのであまり期待してなかったのですが、あまりの素晴らしさ、とりわけボーイソプラノソリストの上手さに感動して、客席でボロボロ涙を流した記憶があります。


今でも記憶に残る素晴らしい公演の思い出、その時の少年合唱団が、この映画で取り上げられた合唱団ならば、やはりあの実力はうなづける!と納得が出来ました。ブルーレイでもお買い上げは決定です。ドキュメンタリーのような、真剣さが溢れた映画でした。


こういう真剣な映画を見ながらも、時折、ウィーン少年合唱団のディズニー製作映画「青きドナウ」を思い出してしましました。あの”夢ゆめしい華やかな世界観”は、今から50年も前に作られた作品だからなのか、楽しい少年合唱団映画ももう一度見たいものですが、現代ではなかなか難しいのかもしれませんね。

◆アメリカ少年合唱団公式サイト:http://www.americanboychoir.org/index.php


初回発売は、ブルーレイとDVDの2枚組(どちらも本編)という半端な組み合わせでしたが、あっという間に廉価版発売されました。特典映像も少なく、この廉価版で充分だった気がします。


Boychoir (Music From The Motion Picture)

Boychoir (Music From The Motion Picture)

MP3デジタルミュージックの映画サントラは発売されているのですね。CDで欲しいなあ。


boysvoice-2.hatenablog.com

*1:地元と言っても、結構遠出となりましたけど・・・。いつ上映終了になるか分からないので急ぐ必要がありました。