BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

拝啓 金子恭平さま、ずっと歌い続けていて下さい

挫折を繰り返しても闘い続けるミュージシャンが好きです

金子恭平


きっかけはほんの些細なことでした。久しぶりに昔の映画やDVDを見ているうちに、「そういえば、”あの子”どうなったんだろう?」なんて軽い気持ちで思い出した、ティーンボーカリストがいました。FLAMEの金子恭平君。


その全盛期は知らないものの、購入したPV集で、わずか14、15歳というのに脅威のハイトーンボイスと歌唱力を見せつけて私の度肝を抜いた少年。恭平君は、2004年に契約満了となりFLAMEから突然の脱退。その後しばらくメンバーを変更しながら予想以上に長く続いたFLAMEも解散(2010年)したとか。


恭平君、実は同郷でもある、ということで勝手に親近感が沸き、ソロアルバム「To You...」を入手したものの、そこまでで途切れておりました。(なんと2006年に当ブログで言及してましたね。)数年ぶりにFLAMEのPVを見返してみたら、「やっぱり、この子は上手いわ〜。」と改めて実感することしきり。


少年グループやジャニーズ系も長らく見てますが、10代の若さだとやはり可愛いなあ、頑張ってるなあ、という年上(あるいは保護者?)目線での感想がせいぜい。日本人の少年達の中で歌ってる姿に歌心(ハート)まで感じられる少年シンガーは、ほとんど見たことがありません。


でも彼の場合は、たとえPVであっても、LIVE映像を見ていても、過剰に溢れ出る表情の中に音楽に人一倍真剣なことが伝わってくる。まるで「もっと歌わせてくれ!」と体中で叫んでいるような、そう、それは時に痛々しい・・・見ていて苦しくなるほど切実。脱退自体が、かなり不幸な出来事だったということは、細かく調べなくても察するものがありました。


<ここから私の勝手な想像ですが> ミュージックダンスユニットで、ダントツに歌が上手くて、踊りも達者で、だからこそセンターでメインボーカルとして、めいっぱい歌い続けていた少年が、事務所の戦略*1のあおりを受け、本人には関係のない、納得できない理由でどんどん背後に押やられていってしまった・・・その絶望感や閉塞感ってどれだけのものだったのでしょう。


脱退しても、まだまだ若く情熱を持って、「音楽だけは諦めたくない」「いつまでも歌って生きていきたい」と思い、希望や高い理想とモチベーションを持っていたはずです。恭平君は、何度か形を変え、地道にソロ活動を続けていたようです。当然、強力な後ろ盾もない状態で、決して順調だったとはいえないでしょう。


遅ればせながら、2007年に発売されたソロアルバムを聴いてみたのですが、やっぱり彼が心酔している「R&B」というジャンルってちょっと慣れなくて環境音楽みたい(笑)に感じてしまいました。耳に気持ちよくスーッと流れていく感じで、一度聴いただけでは、あまり後をひかない。繰り返して聞いてみると、だんだん良さは伝わってくるんですが、「大好き」とはなりにくいタイプの曲ですね。


私としては、恭平君のハイトーンボイスで、FLAME*2時代の「Truly」「Close My Eyes」のような必殺「泣きのバラード」が一番聴きたいし、彼なら、そういう激しい情熱をありのまま出すほうがずっと魅力が伝わるんじゃないかな、と思ったりします。”熱唱型ボーカリスト”やって欲しいなあ。


まあ、えてして本人の「やりたい音楽」が必ずしも一番本人に合ってる、とは限らないという法則もあったりするんですけど・・・。客観的にアーティストの魅力と適正を分析して、一番的確なものを与える、優れたプロデューサーの存在とかやっぱり必要なんだな〜、と痛感してしまいます。

【再チャレンジに賭けた想い】


そんなこんなあった恭平君が、FLAME時代のメンバーと2013年に再結成したのがEMALF。少年時代に、悔しい思いを何度もして、いっぱい傷つき、夢破れて去らなければいけなかった日を決して忘れたことはないはず。でも、時が経ち、青年となった彼は、ミュージシャンとしても成長を続け、歌い続けることの価値と大変さを実感していったのは想像に難くありません。音楽で生計を立てる、なんて(きっと)並大抵のことではありませんもの。


だからこそ、自分からユニット去った、という負い目を持ちながらも、わずかに残った淡い期待を持って、今度こそ逃げないと再出発を誓った「昔の場所」。その決意表明とも言える、EMALFの「Try Again」PVを見てみて、こりゃあすごいわ、と衝撃を受けました。初めて恭平君の歌を聴いた時以上に、あまりにも感銘を受けて、ここ最近、毎日流しています。


画面に流れる歌詞と、恭平君の意味ありげな表情を何度か見るうちに、「これって、もしかして恭平君自身の作詞じゃない?」と気づきました。「飛び出した故郷に背を向け・・・戻らないと誓った過去」のくだりとか、どこかしら東北人っぽいニュアンスを感じてしまうんですよね。


全編もう彼の、脱退してからの試行錯誤、紆余曲折、そのまま迷いながらの再結成までの並々ならぬ覚悟を、あらかさまに投影している歌詞が続くだけに、ズンズンと胸に響いてくるのです。まさに、彼の想いを噛み締めて聴くと、


 心がうち震えました(超感動)


ありったけの思いを込めた表情で歌い続ける恭平君が、ラストで見せる輝く笑顔が泣きそうに綺麗でグッときてしまいます。


何度も挫折して、形を変えてまた出てくるミュージシャンの思いってきっとこんな感じなんでしょうね。脱退して、古巣に戻ってくる、やり直すって、ものすごく怖いはずです。どれほど迷い悩んだことか。そして「それでもやるんだ」と決めた時の覚悟や本気度って半端ないほど強かったでしょう。それだけでも充分”尊い決心”と思います。

 Try Againはこちら → Try Again(Full ver.) EMALF - YouTube


メンバー全員、もはや少年時代のような、若さやがむしゃらだけで突っ走られるだけの無鉄砲さはない。いつの間にか歳を重ねて、歌って踊れるボーイズユニットとしては年齢的な限界も見えてきている。きっと昔からのファンは、このビックサプライズを喜んだ人もいれば、複雑な思いで見た人もいたでしょう。


これからが真のスタートとなるはずでした。ところがどっこい、翌年彼はまたもやEMALFを脱退してしまいます。どうやら一部メンバーとの信頼関係、その溝を埋めることができなかったことが原因のようです。バンドの脱退劇でも腐るほど聞く「方向性の違い」という理由は、大抵シビアな人間関係に発端があるわけですから、悩ましいところですね。


いくつかのファンブログを見て何があったのか少し首を突っ込んでみましたが、人一倍、自分に正直で、こと音楽(仕事)に妥協のない恭平君と、マイペースを貫く他メンバーとの折り合いのつかなさだったんだろうな、と。そして、恭平君が脱退してからも、今なお新メンバーを入れて続いてるEMALF。それはそれで頑張ってるなあ、と感心もしています。


色々と問題があっても、せっかく再結成したグループですし、ファンの手前、一日でも長く続けていくことが彼らの使命でもあるわけです。そして、最低限の、一番大事な約束をちゃんと守り続けているのだから、残ったメンバーの選択は、間違いではないですし、活動を頑張っていることに違いはありません。


こういう場合、”抜けた側”が一番リスクを被り易いし、困難や悲劇にぶつかって不幸な結果になりやすい(最悪、音楽を諦めなくてはならなくなる)のは、悲しい現実なんです。正直者がバカを見る、というと実も蓋もないんですけど・・・。

【そしてこれから・・・のこと】


三十路間近な恭平君が、今アーティストとしてどういう立場にいるか、変わらず歌い続けようとしてているのかあまり分からないですし、もしかしてそろそろイムリミット(所帯持って、堅気の生活を送ろう)とか思ってるんじゃないのかな、とか考えなくもない。一方で、他アーティストの振付をしたり、ちゃんと本業(整体師)を持ってる、という噂も聞きました。


私の中で、少年時代の恭平君のボーカルは、驚異的な伸びやかさと上手さで忘れられない存在です。デビューした頃は、すでに変声していたのですが、高めのキラキラボイスは今なおご健在。そして、表現することに飢えたような瞳も印象的。時にプライドとコンプレックスの狭間で、ありあまる感情を抑えきれないまま、わざと視線を逸らすようなナメた真似(笑)もしてくれる。


ただの「カッコつけ野郎」だったら、こんなに気にならないんですよね。たぶん、どんな形であっても彼は歌ってないと耐えられないタイプの歌手じゃないかな、と想像してしまいます。だからこそ、いつか私がナマで恭平君を見られる日がくるように、たとえ細々であったとしても、どこかで歌い続けていて欲しい。私のささやかな願いです。


私は、「闘い続けているアーティスト」が好きです。実際、私が好きな役者やミュージシャンは、個性も才能もあり、華やかなステージに上っていた過去がありつつも、挫折もあって、決して報われているとは言いがたい環境で、懸命に動き回っています。でも「たとえどんなことがあっても一生歌い/演じ続けるから。」と、不定期でも続けている。


何人も好きなアーティストに死なれている私にとっては、「若きカリスマ」と奉られ、後世に語り継がれることに価値を感じません。むしろ、泥臭く、地べたを這いずり回ってでも表現し続けるほうが、絶対に良いと実感しています。結局、どんな形であれ、死ぬまで続けることが、真の「勝ち」なんだな、と強く感じるこのごろです。


ひょんなきっかけで、私には”未知の少年ボーカリスト”だった、金子恭平君へ。貴方の歌声は、今でも、ちゃんとどこかで誰かを感動させています。このちっぽけなブログから、ありったけの想いと期待を込めて、今の貴方へ心からのエールを贈ります!


■2015.10.10追記:記事をアップしてから少し調べたら、今でも恭平君、インディーズのグループでサブボーカルとかで歌ったりしてるみたいですね。かなりライブの本数は少ないし、必ずしも本人の求める形態ではないようですが、歌い続けている、という事実は嬉しいです。■2017.11.25追記:現在、フリーで演奏活動を再開されてます。Twitterも活発に発信中。

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boysvoice-2.hatenablog.com


RISE

RISE

Escape!

Escape!

2007年に発売された2枚のソロアルバム。「R&B、ダンス」というジャンルらしいですが、聴き易いヒーリングっぽい歌が多く、本人も気持ち良く歌っているのが分かります。(私的には、もう少しドラマチックなサウンドも聴きたかったなあ・・・。)流れに任せた伸びやかな歌声のオンパレード。やっぱり彼の声ってすごく耳に優しくて好きなんですよねえ。


tower.jp
「Try Again」を収録したEMALFのファーストアルバム(MP3)です。私は、CDで入手しましたが、前半はとても男っぽい感じ。なんとグループコンセプトは、「パーティーボーイズ」ですって(汗)。1曲目の「Party Up!」、ヴォーカルをデジタル処理するのは、K-POP亜流みたいでどうもいただけません。でも、美しすぎる旋律と恭平君の澄み切ったファルセットを優しく聴かせてくれた「Open My Eyes」に大・大満足でした。


miyabi2013.hatenablog.com

*1:グループの人気配分やパワーバランス

*2:曲自体が面白いのは間違いないです。お金かかってるから、というのもあるのかな。