BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

『独立少年合唱団』特集(2)

「独立少年合唱団」メイキングとトークショー

『独立少年合唱団』の舞台裏を知ることができたのは、WOWOWで放映されたメイキングと'00年11月23日に香川照之さんと藤間宇宙君を呼んで開催された映画館でのトークショーでした。記憶が薄れていたので久しぶりに見返し、それぞれの内容を加味してまとめてみようと思います。

【オーディション】

1999年2月11日のこと。メイキングでは、伊藤淳史君がナレーションもやっていましたが、自分のオーディション風景のビデオは照れくさそうでした。校歌を微妙な(笑)調子で歌ってる姿も有。当時15歳の伊藤君、600人の候補者から主役に選ばれたのは、「めちゃくちゃ嬉しかった」と率直な感想でした。学ランを着込んでの本読みや軽いリハーサルの光景も映りました。これから1年にわたっての長丁場がスタートすることで少年達は緊張の面持ちです。

【プロデューサー&監督の意向】

映画を創る、緒方明監督、仙頭武則プロデューサーや関係スタッフが集まったミーティングの光景。「子供が大人になっていく姿を撮るのだから、同じ目線にならないように」と語る仙頭プロデューサー*1。また、緒方監督の「生意気なことを言うやつがいたら、ちゃんと子供を叱って下さい。」という言葉も印象的でした。当たり前ですが大事なことですね。

【合唱の特訓】

同年4月10日。映画に出演している少年達のナマの歌声が使用される、ということで合唱の特訓がスタート。大阪のある高校で合唱指導をしている先生を読んでリハーサル室で歌う光景。厳しいけれど味のある、この先生の言葉はなんだか懐かしい響きがしました。始めは”表情に力のない”少年達が少しずつ変わっていきます。


合唱についての宇宙君の感想。「どうなるかと思うくらい最初はバラバラでした。」「始めはすごい顔をして歌うのに抵抗があったけれど、一生懸命やっているうちにまとまりが出てきて、終わった時はすごく達成感がありました。」まさにそうだろうなあ、と納得するような話でしたね。

群馬県中之条町での合宿】

夏場に廃校に寝泊りする俳優、少年達&スタッフ。クーラー*2もテレビもなく、絨毯1枚敷き詰めただけの環境。近所にコンビニもない。しかし、藤間宇宙君はこの非現代的な状況も慣れると楽しめた、と話していました。美しい自然や星空も楽しみ、「何もないからこそ集中できたかも」、とは香川さんの弁。これは、本当に貴重な体験だろうと思います。

【素顔の伊藤君と宇宙君】

とにかくやんちゃでひょうきん者の伊藤君→「明るくて場を盛り上げてくれた」(宇宙君)けれども「少しは集中しろ!」「メイクさんにタメ口で話してたし。」(香川さん)という、映画とは正反対な素顔。対する宇宙君は、同じ劇団で1才年上の友達でもある伊藤君曰く、「普段はボーっとしてるけど、’役に入る’と変わる」。香川さんも宇宙君については「シットリしてるよね」と語っていました。

【宇宙君の変貌】

映画の中でも途中から、”革命を信じる若人”の厳しい目を持つようになる康夫。香川さんが提案し、撮影前に毎朝30分”気をつけ”をするようになった宇宙君。直立不動で目を見開き、学校から窓の外を眺める、という訓練なのですが、これが集中力を高めるのに大層役立ち、実際に自分でも「目の色が変わっていく」のが分かったそうです。

【伊藤君の本気】

同級生に”革命”を呼びかけるシーンでは、宇宙君と共に厳しい目を表現しなければいけなかった伊藤君に、監督の怒号がとびました。「お前が演技が上手いのは分かってるが、上手い芝居だけでもうごまかしきれないんだぞ!お前自身の気持ちがなれければオレは演出なんてできない。」と言って外へ出てしまいました。


ピアノの前で泣き出す伊藤君。その伊藤君に香川さんが近づき、「お前はいつ強くなるんだ?1時間後か、30分後か、それとも5分後か?」と叱咤。やがて顔をあげて監督を呼びに行く伊藤君。涙で濡れ若干赤い目元には、前にはなかった意気込みが現れて、OK。映画の中では見られないもう一つの映画的なシーンでした。

【クランクアップへ】

合唱もさまになってきた独立学院グリークラブの少年達。映画でも登場する他校の女生徒達は、実際に国際コンクールで優勝するような実力派だったそうで、最初は心配もあったようですが、歌いだすとなかなか負けていません。思わず監督達も笑顔になってました。クランクアップは、合唱コンクールのシーンで、終わって少年達には鉢植えが渡されて和やかな情景でした。

【ベルリン映画祭招聘】

ベルリン映画祭の赤絨毯をやや緊張の面持ちで歩く伊藤君と宇宙君。観客は500人くらい入ってたと思いますが、中規模で少し古びた感じの映画館でした。とても暖かな拍手の中、監督や香川さん、仙頭Pも上映後の舞台挨拶に登場しました。伊藤君が頬を高潮させて「今日はベルリンのお客さんに映画を見てもらってとても幸せです。このことは一生忘れません。」と挨拶していました。

【こぼれ話】

宇宙君は、ウッドブロック(小さな木琴)を叩くシーンがあるのですが、これが意外に難しく、「リズム感がないみたいで」苦戦したそうです。伊藤君は、逆にとても上手だったので自信気に叩いていたそうです。また、3ヶ月ピアノを練習した香川さんは実際にピアノを弾いてるシーンは2秒だけだった、と笑いながら話していました。楽器は何にせよ、根気が要るので大変なことです。ピアノを習得できなかった私にはひたすら尊敬のまなざしです。


これにて「独立少年合唱団」の思い出は一区切り。あとは、思い出の中で変わらず輝き続けてくれると思います。

*1:この方は、いくつもの斬新な邦画の企画・製作に関わり、海外の映画祭にも紹介する、など敏腕プロディーサーとしても知られており、彼の関わった作品は、過去に私自身も興味を持つものが多かったです。

*2:体育館に1台だけ扇風機があり、その前でよく皆で集まっていたそうです。