BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

元祖美少年 ビョルン・アンドレセン

ビョルン・アンドレセン

”美少年”と言えば、必ず名前が挙がるのが映画『ベニスに死す [DVD]』のタッジオ役で世に衝撃を与えたビョルン・アンドレセン。私は彼を知ったのがリアルタイムではなかった上、その後に雑誌などの”美少年特集”であまりにもメインで紹介されるので、少し食傷気味でした。


確かに、少女漫画から抜け出たような、その姿態。上品そうで妖しくて一目見ただけで気になるのは間違いないと思います。それでも、私の中の美少年像とはかなりかけ離れていたので(彼はどちらかというと美少女に近い顔立ち、しかも少年というより青年では・・・?)あまり魅力は感じなかったです。単に天邪鬼なのかもしれませんが。


映画『ベニスに死す』も実際に映画館でリバイバル上映で見た時、『地獄に堕ちた勇者ども』と二本だて、といういうすごいカップリングのため、あまりの毒々しさに見終わって吐きそうになりました(苦笑)。それでもヴィスコンティ監督の作品は、やはり退廃とか耽美をリアルに見せてくれるな、とは思いました。


貴族社会に造詣が深いせいなんでしょう、日本人が描く幻想的な”耽美”の甘ったるさなどなく、どこか皮肉も感じたりして。


(つづく)


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「ベニスに死す」の裏側

【 オーディションビデオ「タッジオを求めて」 】

この「ベニスに死す」という映画については、映画よりむしろその裏側に2つの興味深いことがあります。一つは、ビデオ化された『タッジオを求めて』という作品。ヴィスコンティ監督が実際にヨーロッパ各地を訪れてタッジオ役を捜したドキュメンタリーです。


このビデオで出てくる少年達、「おいおい、どこが美少年だい!?」と激しくツッコミを入れたくなってしまうような少年ばかりなんです。少年合唱団の団員でも結構美少年は見かけるので、オーディションに、そばかすの元気少年とか出てくると「・・・?」状態でした。


アンドレセンは最後に出てきますが、確かにこの頃の彼はまだ映画の時より若干少年らしい、例えれば子鹿のような瑞々しさがありました。監督は非常に見た目から神経質&厳格そうでしたが、「大きすぎるな」と言いつつもやはりアンドレセンには興味を持った様子で、あれこれカメラテストをしてます。


シャツを脱がせたり、ニッコリ笑わせたり(→アルカイック・スマイルのアンドレセンにひきつり笑いしちゃいます)細かい注文を出してました。そんな裏側を知るとこの映画の別な面白さが分かる気がします。



こんな映像も公開されているんですね。スゴイわ〜。

【 ホンモノのタッジオは!?】


そしてもう一つの話は、本物のタッジオに関してです。トーマス・マン原作のこの小説は、もともと筆者の実体験に基づいたものだということです。主人公の音楽家はマン自身の投影、であれば当然、タッジオのモデルがいたはずです。原作では黒髪の美少年で、その記述も映画とはだいぶ異なってます。


確か『夜想』シリーズの「少年」という本の中で、この(老人となった)タッジオ本人にインタビューを求めた、という話が掲載されてました。どこまでが真実か、全てフィクションなのか判別できませんが、この話はとても面白く、印象に残ってます。


小説が発表されたとき、それを読んだ周りの人が「貴方のことではないの?」と彼に言ったそうです。確かに過去、非常な美少年であった彼でしたが、ベニスで自分を見ていた男性(トーマス・マン)の存在については全く覚えがありません。但しシチュエーションにはなるほど自分の境遇を思わせるものが多々あったとか。


しかし、この映画の中での母親の描写に対しては、あまりにも「俗物」扱いしている、と嫌悪したそうです。どこかでひっそりと映画を見てそれなりの感慨は持ったものの、記者の「公の場に出たらどうか」という勧めには、応じなかったそうです。確かにこのようなことは充分ありそうなことでしょうね。


 美しさは、それ自体ですでに罪悪なのかも。。。


ベニスに死す [DVD]

ベニスに死す [DVD]

有名な代表作

The Beautiful Boy

The Beautiful Boy

アンドレセンが表紙の洋書です。さすがにギリシア彫刻のような美しさ。しかし、内容は映画とは関係なく、少年論のようです。


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