【 オーディションビデオ「タッジオを求めて」 】
この「ベニスに死す」という映画については、映画よりむしろその裏側に2つの興味深いことがあります。一つは、ビデオ化された『タッジオを求めて』という作品。ヴィスコンティ監督が実際にヨーロッパ各地を訪れてタッジオ役を捜したドキュメンタリーです。
このビデオで出てくる少年達、「おいおい、どこが美少年だい!?」と激しくツッコミを入れたくなってしまうような少年ばかりなんです。少年合唱団の団員でも結構美少年は見かけるので、オーディションに、そばかすの元気少年とか出てくると「・・・?」状態でした。
アンドレセンは最後に出てきますが、確かにこの頃の彼はまだ映画の時より若干少年らしい、例えれば子鹿のような瑞々しさがありました。監督は非常に見た目から神経質&厳格そうでしたが、「大きすぎるな」と言いつつもやはりアンドレセンには興味を持った様子で、あれこれカメラテストをしてます。
シャツを脱がせたり、ニッコリ笑わせたり(→アルカイック・スマイルのアンドレセンにひきつり笑いしちゃいます)細かい注文を出してました。そんな裏側を知るとこの映画の別な面白さが分かる気がします。
こんな映像も公開されているんですね。スゴイわ〜。
【 ホンモノのタッジオは!?】
そしてもう一つの話は、本物のタッジオに関してです。トーマス・マン原作のこの小説は、もともと筆者の実体験に基づいたものだということです。主人公の音楽家はマン自身の投影、であれば当然、タッジオのモデルがいたはずです。原作では黒髪の美少年で、その記述も映画とはだいぶ異なってます。
確か『夜想』シリーズの「少年」という本の中で、この(老人となった)タッジオ本人にインタビューを求めた、という話が掲載されてました。どこまでが真実か、全てフィクションなのか判別できませんが、この話はとても面白く、印象に残ってます。
小説が発表されたとき、それを読んだ周りの人が「貴方のことではないの?」と彼に言ったそうです。確かに過去、非常な美少年であった彼でしたが、ベニスで自分を見ていた男性(トーマス・マン)の存在については全く覚えがありません。但しシチュエーションにはなるほど自分の境遇を思わせるものが多々あったとか。
しかし、この映画の中での母親の描写に対しては、あまりにも「俗物」扱いしている、と嫌悪したそうです。どこかでひっそりと映画を見てそれなりの感慨は持ったものの、記者の「公の場に出たらどうか」という勧めには、応じなかったそうです。確かにこのようなことは充分ありそうなことでしょうね。
美しさは、それ自体ですでに罪悪なのかも。。。
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