「ママに捧げる詩」で大旋風
だいぶ前からしっかり取り上げたい、と思っていた少年歌手がおります。'70年代初めに登場したニール・リード(NEIL REID)。ほぼ同時期に大人気となったルネ・シマールに比べて知名度は劣るかもしれませんが、ルネと並ぶほどの天才的な少年歌手でした。
というかこの両者、'70年代特有の哀愁を帯びたメロディーに「ママへの一途な愛」を歌う必殺泣きのバラードという共通項はありますが、正確にはタイプの異なる歌手。どこかデリケートな"母性本能系"美少年のルネと、どこまでも健康的な(体格もふくよかですが)伸びやかな歌声をもつ熱唱タイプのニール。
どちらも現役時代の活躍を覚えてない、年上の歌手なのですが、同時期に本「鏡の中の少年たち」(竹宮恵子著)で興味を持ち、10年ほど経って中古アルバムで存在を知った、ということで私の中では”双子”のような突出した存在です。そして今尚、歌の上手な少年歌手は山ほどおりますが、温め続け憧れ続けた期間が長いだけに思い入れは一層深くなっています。
この時代の少年達だけが持つ特別な雰囲気というのがあって、シンプルな演奏に乗せてメロディーをガッチリ歌いこむ、その魅力は何ものも寄せ付けない破壊的な威力(笑)があります。そうやってガッチリと魂を奪い取っていくんですね。"歌うバズーカー砲"という感じでしょうか。
【名曲「ママに捧げる詩」】
ニール・リードの代表的なヒット曲は、「ママに捧げる詩(Mother of Mine)」。日本でもヒットした作品だけに、この曲について書いてるサイトページは結構あるのですが、ニール・リード本人についての情報は、かなり限られています。いわゆる一発屋?的な扱いになってるのが、残念で仕方がありません。といっても名歌唱揃いの彼のアルバムはCD化になっておらず、その意味では仕方がないのかもしれません。
しかし、この「ママに捧げる詩」は私的に少年歌手モノのヒット曲としては最高峰と言っても過言ではないと思います。旋律の物悲しさに、ニールの確かな理解力(歌唱力)がリンクしてえもいわれぬ見事さとなっています。それこそルネ・シマールも、ジミー・オズモンドも、現在も多くの少年少女歌手がカバーしていますが、いまだニール・リードの牙城を崩すものは一人としていない、と言わざるを得ません。
最近は、動画サイトでニール・リードの歌唱映像がアップされてきて、ひときわ感動を覚えます。日本に来日したことがあるのかどうか不明なのですが、おそらくは、イギリス在住の方が持っていた貴重なビデオ映像なんでしょうね。まさに”お宝”です。
【プロフィール】
ウィキペディアと2枚の日本版アルバムの説明を元に、ニール・リードの経歴を綴ってみます。
質問 | 回答 |
---|---|
生年月日 | 1959年5月5日生 |
出身国 | スコットランド |
出身地 | ランカシャー・マザーウェル |
家族 | 学校教師の父、母、妹モラグ |
好きな教科 | 国語と数学 |
得意なスポーツ | 水泳・乗馬・サッカー |
エピソード
- 幼い頃から歌上手、近隣の町まで有名になっていた人気者
- 地元のフォークコンサートでも歌っていたが、何百という出演申込が殺到
- 1971年7月 地元の名歌手カラム・ケネディーがグラスゴーのキングス劇場でのショー「Calum's Ceilidh」に、1ヶ月間出演させた。
- 1971年11月2日 TV「ジュニア・ショータイム」に初出演
- 同11月8日からITV局の「Opportunity Knocks」連続6回出演、爆発的な人気を呼ぶ
- 1stシングル「ママに捧げる詩」は、英250万枚・日本40万枚の売上
- 同12月13日 1stアルバム『NEIL REID』*1発売、ゴールドディスク受賞(1920年代のボーイソプラノ、アーネスト・ロウ以来、少年歌手としては50年ぶりの100万枚突破、12歳9ヶ月でUKアルバムチャート1位の最も若い歌手となる)
- 1972年 第3回世界歌謡祭「ボクの子犬」を歌う
- 2年後、変声してプロ歌手を辞める
- 現在、ランカシャー州ブラックプールに住み、Independent Financial Adviserとして働く
- 2008年 TVでインタビューを受けた
他にも、イギリスで「1年に40回以上の仕事をしてはいけない」という法律に従い、4ヶ月の仕事禁止命令が出たなど、当時の人気ぶりを想像できるエピソードが書かれておりました。あまりにも急激で巨大な人気は時として残酷な結末をもたらしますが、ニール・リードもまたその名声を持続させることはできず、変声を機にショービジネスから足を洗ったようです。
1枚目ほど売れなかったと思われる2枚目アルバム「スマイル」でも、その少年離れしたパンチのある歌声は健在で、なんら遜色はありません。大衆がニール・リードのずば抜けた歌唱力に慣れた?ことや、「ママに捧げる詩」ほどのヒット曲に恵まれなかったことも関係してるのでしょうか。
一聴すると、一本調子に歌い上げてる感じも受けますが、どの曲を聴いても彼の声の安定感は素晴らしく、揺らぎなく、しかもまろやかな高音を響かせております。どこか少年らしい素朴さも忘れていないし、40年経っても色褪せないニール・リードの歌声を是非復活させて欲しいものです。
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*1:日本盤タイトル:「ママに捧げる詩」