BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

初観劇!「黒執事ミュージカル−地に燃えるリコリス−」 in 宮城

【侮れぬ実力を実感、2.5次元ミュージカル

旧友が地方遠征に来る、ということで「見てみる?」と軽めのお誘いを受け、行ってきました、ナマ「黒執事」。時は11/15(日)、場所は、仙台市の南に位置する名取市文化会館。外観はガラス張りで天井も高く、名取イオンモールの近くにあって「地元周辺に、こんな綺麗なホールがあったとは!」と驚きの良きホールでした。


何かと話題の多い、2.5次元ミュージカルとしては、少し前に「テニスの王子様」も来仙していたようですが、私自身、今回が初のナマ観劇となります。とはいえ、過去に黒執事シリーズの『−千の魂と堕ちた死神−』初演(2010年)を映画館(ゲキシネ)に見に行ったため、なんとなく他のミュージカルに比べて馴染みな感じもしておりました。


そのときは、キーマンの死神アラン役を、劇団スタジオライフの看板役者である松本慎也君が儚く情熱的に演じたほか、同じく劇団から岩崎大青木隆敏の2人も参加していたことが、ライブビューイングで見たくなった大きな要因でした。そして、シエル役にD-BOYS西井幸人君も出演していて、眼の保養もできました。


原作漫画は立ち読み程度の知識でしたが、「執事と悪魔」を組み合わせて、仄かにBL風な世界観を生み出している(あくまで私の主観です)発想と、登場人物に印象的なブラックフォーマルをアレンジしたゴスロリ風装いなど、鮮烈に絵柄に反映した作風には感銘を受けたものです。シリアスな設定の中で光るコミカルな台詞回し、なんかもなかなかのもの。


舞台版「黒執事」については、一番思ったのは、セットも衣装もやけにゴージャスだな、と思ったところです。頑張ってチープさを払拭しようとしている(笑)演劇を見慣れているので、本当に”惜しげもなくお金をかけている舞台”って、すがすがしく気持ちが良いものです。マゴにも衣装、というわけではありませんが、役者さん達もそれぞれイケメン揃いなので、見惚れてしまいました。


あらすじ:ロンドンの街で、娼婦を狙った猟奇殺人が多発する。現場に残されたのは、惨殺され、子宮を奪われた遺体。犯人は、「切り裂きジャック」と呼ばれて、人々から恐れられていた。女王陛下の命により、シエルとその執事セバスチャンによる犯人捜しが始まる。犯人と疑われたのは、女好きと名高いドルトイット子爵だった。


【個々に芸達者が多く、見ごたえがありました】


さて友人が、大いにハマッテいるのが、ドルイット子爵役の佐々木喜英さん、愛称「ヒデ様」。確かに芸達者を絵に描いたような人で、宝塚ばりの派手な衣装を着て、エロエロな腰つきを見せつけて歌っていても、ちっともいやらしく見えない見事なツワモノっぷりでございました。


彼は、舞台中心の活動をされているようで、友人から聞くまではその名前すら知らない未知の役者さんでしたが、演劇を基礎から学んできた方らしく、その若さに似合わない実力者のようです。二枚目ももちろんですが、ドルトイットのような、モロ強烈なキャラクター(変態&女好き)も楽々こなす姿を見て、「ふむふむ、日本ミュージカル界にも、久々に楽しみな才能が出てきたな〜。」と、どこぞの批評家オッサンめいた感想を抱きました。


もう一人、目が行った人物が、主役でもある二代目黒執事・セバスチャン役の古川雄大君。『ライン』という舞台DVDでストレートプレイを演じる古川君は見ていたのですが、ミュージカルで歌う彼は初めて。東宝ミュージカルにも参加されている今注目の方なので、なかなかの歌いっぷりも良かったですが、立ち姿の美しさと原作漫画とのシンクロ率の高さには、非常に満足しました。


芝居の後半でハラリとジャケットを脱ぐシーンに、ドキッとするほど色っぽく艶やかで「匂いたつような麗しさ」とでも形容したくなるような素敵さでした。見栄えだけではなく、主シエルへ向ける、皮肉めいた台詞の数々に”ピュアな親愛の情”が入り混じるところなんかは、まさに漫画の世界を体現しているようでかなり楽しめました。


シエル役の福崎那由他君は若干14歳ながらも(13歳のときの初演から1年後ということもあるのでしょう)堂々とした演技で、黒執事の世界観に引き込まれる原動力になりましたね。ポスターを見たときは、正直言ってビジュアル面に・・・がっかり・・・しなくもなかったのですが、そこは役者特有のマジック、とでもいうか、シエルとしての存在感の確かさを見せ付けてくれて、これまた嬉しい誤算でした。


ロンドンの街を震撼させる「切り裂きジャック」と疑われたドルトイット子爵の屋敷で、パーティーにピンクのドレスを着て現れるシエル。セバスチャンの策略で、女装させられて嫌々参加する那由他シエルは、一つの見せ場ですね。西井シエルの肉付きの良い女装も可愛かったですが、ドレスからはみ出した肩のラインが細くて、見るからに弱々しい那由他君の”ブサ可愛い”女装姿は、もっと妄想を掻き立てられました(すいません、変なシュミで)。


「僕の命令に逆らうな!」「僕だけに従え!」と何度も繰り返される、シエルとセバスチャンのストレートで激しいけれど、どこかいびつな愛を感じさせる主従関係は、那由他君と古川君の組み合わせで見ると、ゾクゾクするほど妖しくていいです。きっと2人とも、見せ場だからと意識して力まずに、邪心無く演じているからこその良さのような気がします。


かつてBL映画で見かけた、広瀬さんや荒木君も「こんなに歌えるんだ」と驚きましたし、ずっとシングルキャストで演じ続けているグレル役の植原さんの大活躍ぶりにも目を引きつけられました。そして、ダークなヒロイン、マダム・レッド役のAKANE LIVさんも圧巻。


好きな歌い方と声だなあ、と思っていたら、なんと彼女は、元宝塚男役だった、とのこと。私がちょうど宝塚にハマリ始めた頃くらいに辞められているようなので、直接歌う姿を見たかどうかは分かりませんが、低音&中音ドッシリで高音も滑らかで、かなり聴き応えがある歌声でした。


友人曰く、「今回は、よくこれだけ歌える人達を集めたものだ。」と感心するほどのキャスト陣だったようです。見始める前は、そこまでの期待はしてなかった舞台なのですが(失礼)、蓋を開けたらびっくり!なほどに、すごく楽しめました。出演者である、クセモノキャラが次々と歌い踊りまくって、とにかく休む暇なし、って感じです。


唯一、難点と思ったところは、エピソードが幾つか盛り込まれて、その度にキャラクターが大活躍なんですけど、若干、歌の内容や演出にクドイ面があること。ずっとボルテージも高いミュージカルなので、見終わって疲労感を感じてしまうところですね。そういう意味では、硬軟とりまぜられている”ストレートプレイ”(歌無しの芝居)のほうが自分には向きかも・・・と再認識しました。


終演後の特別イベント”スペシャルカーテンコール”では、古川君のやや緊張気味(笑)の司会で紹介された5名のキャストの挨拶がありました。特に印象的だったのは、AKANEさんが「14年前に、宝塚の全国ツアーの時にこの名取市文化会館で公演しました。」という話と、矢田君が、翌16日に誕生日ということでバースデイのお祝いに、(ケーキではなく)地元のシュー菓子が運ばれてきたことでした。ニコニコ笑顔で、お菓子にかぶりつく矢田君でした。


その人気ゆえに色眼鏡で見られてしまいがちな2.5次元ミュージカルではありますが、どうしてどうして、こんなに楽しくて、魅力ある未知のスター達が輩出されるなら、その世界は充分ホンモノと呼べるものじゃないか、と実感した1日でした。


www.namashitsuji.jp


来年に発売ですね。約1年前の公演DVDも友人に少し見せてもらいましたが、再演で再び集合した全員がグレードアップしているのが分かりました。


miyabi2013.hatenablog.com