BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

日本人ボーイソプラノの透明で無機質の輝き 栗原一朗「永遠」

栗原一朗

そのCDの存在を知ったのは、AMAZONの「あなたにおススメ」のメールでした。いかにも児童合唱団あがりと思われる見慣れない日本人男の子の顔と、聞き慣れない名前に戸惑いながらも、これは”ボーイソプラノ愛好家”には、避けて通れない魅惑の囁き(笑)。


普段、日本の児童合唱団や少年合唱団にはほとんど知識がない私ですが、フレーベル少年合唱団という名前は聞いたことがありました。一度か二度くらいは、海外の合唱団との友情共演*1でナマで見たことがあったかもしれません。


かといって日本の少年合唱団について、全く興味がないわけではないのです。家族や親戚が歌ってる、というような特殊な状況ならともかく、一般人としては、よほど興味を持って情報を追いかけてなければ出会う機会が少なすぎて、ついつい見逃す・・・と云った状況です。


そのフレーベル少年合唱団のソリストとして、本当につい最近まで活動していたのがこの栗原一朗君。プロフィールを読んでも、ボーイソプラノ需要の少ない日本で、なかなかのご活躍のようです。2001年生まれとありますので、まだ13歳くらいなのですね。とすると、ギリギリ変声したかしないか、のあたりかな。


オフィシャルサイトも見つかりましたし、Youtube動画もかなりアップされています。何より、Amazonでこのようなマイナー系CDが購入できるのは、すごく有難い、の一言です。プライベート盤のソロCDは、日本・海外どちらにしても入手困難ですから、気付いた時はすでに時遅し、という感じなのです。それどころか録音製作自体が稀な世界ですから、まさに貴重な一枚です。


20年前、日本には、村上友一君という稀有のソリストが現れました。ボーイソプラノファンなら、耳にしたことがあるかもしれません。彼の美しく純度の高いソプラノは、今もCDに残され発売されることで、後世のファンが今なお聞くことができる歌声として生き続けております。


他にも沢山の美声の持ち主が、一瞬のきらめきのごとく、現れては消えていきました。一期一会、だからこそその出会いはいつでも貴重です。


【日本人のボーイソプラノの魅力は、”天使の声”じゃない】


まずCDを聴いた第一印象は、「典型的な日本人ボーイソプラノ」だということで、その意味では期待を裏切りませんでした。私が、日本人のボーイソプラノに求めるのは、技巧的に優れた歌唱でも圧倒的なテクニックでもありません(仮にいたら聴いてみたいですけど)。奥ゆかしく、シンプルに淡々と歌ってくれたらそれでいい。


栗原一朗君の声は、ドラマティックではないものの、清純で気持ち良く響く、飽きのこない歌声でした。ミニアルバムというのもちょうど良いですし、選曲も「ピア・イエズ」「アヴェ・マリア」「アメイジンググレイス」など、ボーイソプラノソロとしての定番曲が多い割に新鮮に聴けます。それは、まさに日本人らしい平坦なイントネーションだったり、合間に英語と日本語が入れ替わる歌詞だったり、にも現れています。


「うまく歌おう」なんていう妙な欲や力み、色気なんか出さずに(あくまで私の想像ですが)、ただ”目の前の曲をあるがままに歌うこと”を最大限に生かしているところが、欧米の少年達とは異なる”最大の魅力”だと思っています。欧米のボーイソプラノを聴き慣れていると、上手い下手に関わらず、素朴であってもどこかしら感情豊かで、そこがちょっと疲労感を感じる時があります。


その点、日本のボーイソプラノは”和食”みたいな、淡泊で無機質な味付け。自分の中で勝手に調味料を加えたり、その日の天候で料理ができる素材という気がします。なので、疲労感が少なく、胸やけもせず、リラックスして楽しめます。母国語の日本語で歌われるだけに、ちょっとそこに”器用さ”や劇的なニュアンスが入るとやたらと感情が動くものですが、抑えた感じがなかなか良いです。


よく多くの人が形容する「天使の歌声」って表現がありますが、それってなんでもかんでも全てを十把一絡げにしているようで、非常に違和感を感じてしまいます。逆にボーイソプラノをあまり知らない、声の違いなんか分かってない素人*2だからこそ、使える便利な表現というか。


ボーイソプラノって、ただただ美しいわけではないですから。長時間聴いてると精神が病みそうになるような悪魔的に毒々しいソプラノ(笑)だってありますし、技巧的過ぎて「全然くつろげない、うるさいわ〜!」とか、「ったく、どこが天使よ」な声だってあるわけで。子供だから全て純真なんて言ったら、子供に失礼です。


余談ですが、「天使」というのは、キリスト教的な響きがありますから、どうも日本人の私には違和感が残るわけで。ビジュアル的にも、黒髪ストレート&アジア系の天使ってほとんど見たことなしですし(笑)。日本人には、どちらかというと、「声美童子」とかそういうニュアンスのほうがいいかも、なんて思ったりします。


同じ子供であっても、同じ曲を歌っていても、何かが違う日本人のボーイソプラノ。そういえば、ウィーン少年合唱団のソプラノソリストで一時期活躍した、貞松響君もどこか日本的な雰囲気を漂わせた美声でした。同様に、中東やアジア圏、アフリカ圏のボーイソプラノも、どこか違って聞こえます。やっぱり生まれ育った文化が、何か見えない影響を与えてるのかもしれませんね。



アルバムの中でも、一層良かった曲”You Raise Me Up”を歌う一朗君(静止画)。ヒット曲は、その時代の息吹を感じられるから面白いんですよね。


kckuriamazon.wix.com


★CD「さえずり」★
◇上野琴久: 音楽家を両親に持つ上野琴久君(2003-2004年録音)というボーイソプラノもおりました。ボーイソプラノの曲だけでなく、擬音で歌ったり、オリジナル曲にハミングしたりと、かなり独創的なサウンドです。今でもCDは入手できるようですね。


永遠?Angel Song?

永遠?Angel Song?

ご家族や関係者の方が出品されているようですね。一枚でも多く売れて、沢山の人に楽しんでもらえるといいな、と思います。私も、このアルバムに出逢えて感謝でしたから。


ジョイフル・ジョイフル

ジョイフル・ジョイフル

ジャケットが素敵な、2001年に発売のウィリアム.W.スピアマン君のオリジナルアルバム。横須賀出身のハーフの少年です。当時、変声直前にナマの歌声を聴くことができました。歌声としては可もなく不可もなく、かな。

*1:無名の合唱団来日公演において、”客寄せ”の意味合いが強く、海外少年合唱ファンとしては必ずしも手放しで歓迎できませんが。

*2:私は、と云いますと、ピアノニストの音色の違いがほとんど分からないズブのクラシック愛好家ですが。