BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

韓国版『女王の教室』 賛否両論の反響

最近は梅雨の蒸し暑さになんとなく気力が萎え気味なのもあって、すっかりブログを更新するのを忘れておりました。ネットは、毎日見ているのですが、発信するほどの情報も少ないし、何よりそういう時は別なものにハマっている場合だったり、単純に目先のチケットの手配や遠征準備に気持ちが追われていたり、と。


そんな私が最近プチブームなのが、ドラマ『女王の教室』。といっても2005年に放映された日本版ではなく、韓国版のほうです。韓国MBCという地上波の放送局で、6/12から放送開始。毎週水・木の22:00より放映されていて、現在6話まで完了しています。物語で言うなれば前半の見どころである、<財布盗難事件〜和美への激しいいじめと復活>あたりです。


日本版が11話という長さに比較して、韓国版は16話まで予定されており、1話70分(しかもCM無し)という尺なのですが、今のところかなり原作に忠実で*1膨らました要素も少なめなので、日本版で2006年にスペシャル放送された女教師・阿久津真矢の過去も含まれているようです。


私は、日本版をオンエアでは見なかったため再放送で見たのですが、今でも印象に強く残っていて、何度見ても泣かされる名作だなあ、と思っています。あまり”小学生女子”には興味がありませんが(笑)、それでも中心的な子役であった和美(志田未来)の健気さや進藤ひかる(福田麻由子)のどこか大人びたクールな眼差しには、心ときめいたものです。当時、麻由子ちゃんの出演舞台を見に行ったりしたのは、その影響でしたし、未来ちゃんのドラマや映画も続けて見たものです。


また当時かなり話題になった、過激な内容を含んだストーリー展開も、構成の巧みさや台詞の力強さなどに感服しました。7年も前の作品でも色褪せることありませんし、それまであまり興味のなかった天海祐希さんにも魅了された作品です。宝塚の印象が強かった彼女が、女優として大きく羽ばたいたのはこの作品からではなかったでしょうか。


それだけに韓国版があのストーリーをどのように再生してくるのか、かなり気になっていました。日本ですら問題作であったのですから、拒否反応もかなりあるのではないか、と。軽く比較文化的な楽しみ方をしています。私自身は韓流ファンでもありませんし、韓国語も堪能ではないので、MBCが公式にアップしているドラマの断片映像を見たり、翻訳サイトをハシゴする程度なんですが、ブログを見ると日本人でも興味を持って韓国版を視聴している人は結構いるようですね。


【名子役達の活躍と日韓の世相が見えて楽しい】


現地の方のドラマの感想を通して、面白いことが分かります。まず、韓国人のドラマ好きは有名で、日本にもかなりの量が輸入されて、テレビ放送やレンタルでも流れまくってますが、最近はネタがやや尽きている感じみたいですね。なので日本のリメイクドラマも多く、それなりの成功を収めるドラマも出てきています。原作が完成品であれば、それだけ製作費も切りつめられるし、興行的な失敗が減ってくるということがあるようです。(もちろん日本への逆輸入というメリットも想定されますし。)


さらに韓国ドラマに多いと思われる、情緒重視の人間ドラマや現実離れしたファンタジックな恋愛もの、その中に含まれる出生の秘密や三角関係などマンネリ要素にも食傷気味になってきているようです。小学生が中心のドラマがこの「女王の教室」で初めてという話にも驚きました。もちろん日本と同様、名子役は多いですが、主に主人公の少年時代を演ずることが大半なんだとか。


日本では、過去に若き水谷豊が、瑞々しい新米先生を演じた「熱中時代」という名作もあったり、学園ドラマは「金八先生」のみならず「われら!青春」「スクールウォーズ」などの青春ドラマも数多くありましたから素地が豊富。そういう学園ドラマを数多く経てきてこその、異質な「女王の教室」の登場という衝撃がありましたが、全く初めて題材となる小学生モノでこの作品と出会うというのは果たしてどんなものか。


今のところ話題性の割に、7〜8%の低視聴率に落ち着いてるようです。まだ上昇する余地はありますが、裏番組が現在、現在人気ナンバー1の作品*2なので、結構苦しい闘いを強いられています。まだまだ上がる要素もありますし、土日に再放送しているようなので、実質視聴率はもう少し高いと思いますが、ドラマの性質上、抵抗感が強いのは仕方がありませんね。


日本版と異なるのは、まずびっくりするようなカラフルな色合いの教室や家のセット。少女達もイマドキの子、なだけにスマホを駆使していじめる(!)シーンとか、パッと見の違いは鮮明です。早くも子役達の名演技は話題となっておりますが、私が見ても日本版とかなりシンクロ率が高く、オーバーアクションなくらい泣く演技は堂に入ってます。


【キャストの高いシンクロ率】


和美=シムハナ役のキム・ヒョンギちゃんは、声がちょっと重めですが、なつこい笑顔はキュート*3ですし、とりわけ泣きの演技は素晴らしい、の一言。彼女の同志となる真鍋由介=オドング役(チョン・ボグン)は小柄で、もうちょっと素朴になっちゃったけれど、親近感があります。進藤光=ソヒョン(キム・セロン)は、映画「冬の小鳥」で鮮烈なデビューを果たした子だけに、かなりの存在感があります。背は伸びて160cm以上ありそう。


和美を裏切る気の弱い馬場久子=ボミ役は、ソ・シネという14歳くらいの名子役が演じております。この子が怪演してるので、日本版より”馬場ちゃん”の比重がアップしてより怖い感じ。恵里花=ナリ役の子も、もっと憎らしいイメージになっています。クラスメートも大人びた子が多く、「とても小学生のクラスには見えないなあ」と思わなくもないんですが、見ていくとだんだん気にはならなくなります。


子役のオーデションは、かなり時間をかけているだけあって、日本版と遜色ない出来映え。シムハナ役は300人、オドングは200人の実力派子役から、何度もオーディションを繰り返して選んだ、という気の使いようで、役柄にピッタリの子を手間暇かけたそうですし、2000万ウォンの特製子役部屋まで作って備えたそうです。


やっぱり1番違うのは、阿久津真矢=マ・ヨジン先生かな。現地では、一部で”ミス・キャスト”との声もある、コ・ヒョンジョンさん。3年ぶりの復帰作であるそうですが、一見すると丸顔で中年太りでとても天海さんのシャープさとは違う感じです。演技もベテラン女優の風格は感じられますが、”ちょっと意地悪で怖い先生”という感じで、なんとも形容できないカリスマ性を感じた阿久津先生を全くなぞらえてません。


ま、リメイクといってもそっくり同じに作る必要はないので、違えば違うほど面白い部分もあるでしょうけど。日本版の色のない感じと異なり、全体的に演技も演出も”トゥーマッチ”なところが見ていて楽しいところではあります。いやあ、いじめ事件も徹底的にオドロオドロしくなっていて、「ある意味、韓国ドラマになってるなあ」と感心して見てました。早く全編通して見たいものです。


【こんな楽しみ方もある】


一方で、面白いのがドラマニュースの作り方。検索していると同じような内容のネット記事がいろいろな新聞社からどんどんアップされています。これは各マスコミが数名のフリーの記者と契約しているのかな、と思うのですが、その人たちがドラマを見ながらリアルタイムで情報更新してるようです。それも1つの話で15分、30分、45分と切り分けて感想をどんどん小出しにアップしていくのです。


その細やかさには、本当にビックリです。「お茶の間の涙を誘った。」とか、有り触れた宣伝文句もありますが、「それ不特定多数ではなくて、キミ(記者)自身だろう?!」とツッコミながら読むのが楽しい。それにしても毎回、どのドラマにもかなりの数の公式な記事がアップされているところを見ると、面白いドラマに対する期待感は半端ないんだなあ、と思ってしまいます。


韓国人ブロガーのドラマへの熱い批評なんかも、日本ではお目にかかれないようななかなかの名文が多数見つかって、ただならぬ勢いを感じます。とりわけ「女王の教室」みたいな好き嫌いがハッキリ分かれるドラマだと、他国の感性・情緒との違いなんかも詳細に分析してくれて、どこが合う合わない、というのが逆に分かってくるという。


女王の教室」についてシチュエーションは非現実的でも、ドラマの中での登場人物の行動や態度が非常に現実的に受け止められているようです。日本ドラマの細やかな人物描写や、過激なシチュエーションの中でも、先生の吐き出す毒舌が正論であることもあり、その独特の教育観は、現場の教師にもなかなか受けがいいようですね。(もちろん、過激すぎるゆえに拒否反応を起こす人もおりますが。)


逆に私が感じたのは、日本ドラマでは阿久津先生だけでなく、外部から突然入り込んできた超人的な「異分子」により、周りが翻弄されるようなドラマが多いな、ということ。ちょっと思い出すだけでも「家政婦のミタ」「35歳の高校生」「家族ゲーム」と、いくつも出てきます。会社でも学校でも家庭でも社会に変革を起こして、世界をガラリと変えることは、”内部の人間”には無理と諦めているような・・・(出る杭は打たれるのごとし)。


政治家にリーダーシップを求め、正しい世界へ導いて欲しいと思ってしまう、このお任せ体質は日本人そのものの中から出ているのですね。そして近年のドラマでは、そういう人物像が顕著に見られるようになってきている、というマスコミ記事を読んだことがあります。これはどんどん、見せ掛けだけの安定にしがみついて祈っているだけ、の保守的な日本人の閉塞感なのかもしれませんね。


◆2013.7.7現在:ちょうどドラマは8話の折り返し地点。財布盗難事件の解決から、ちょっと日本版より異なる内容を加筆していますが、視聴率は10%前後に上昇し、公式サイトのコメント欄は、賛否両論の意見が花盛り状態で、教育関係者や親世代を中心に徐々に「女王シンドローム」に陥る視聴者が出てきている様子です。まんまとドラマの中毒性にハマっている様子が伺えており、なかなか面白い反応を楽しんでます。



ドラマ主題歌を歌う韓国グループ(SHINee)と出演する子役達のエンディングテーマ。日本版を真似てダンスシーンもあってなかなかの可愛らしさです。白いワンピース姿で踊る、こぼれるような笑顔のキム・ヒョンギが眩しくてたまりません。


japanese.joins.com
japanese.joins.com
ちょっとネガティブな批評ですが、実際はもっと好意的な記事もいっぱい出ています。韓国版と全く違う構成のドラマに戸惑いながらも、新しい教育ドラマとして熱烈なファンを獲得しているようです。

hellosunday.jugem.jp


女王の教室 DVD-BOX

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今見ても本当に型破りで刺激的な名作ドラマだと思います。再び見返して楽しんでます。


冬の小鳥 [DVD]

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父親に捨てられ、施設に入ることになる気丈な少女役を演じたキム・セロンが印象的でした。

*1:日本版を視聴している韓国人の話からすると90%くらい同じだとか

*2:題材的に「サトラレ」みたいなドラマのようで、視聴率16〜18%程度のようです

*3:どこか二宮和也君を連想させる表情も