BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

牛田智大 ミニコンサート in 岩沼

被災地に立つ天使

コンサートチケット

実は、今週からは稀にみるイベントデイの連続となっておりまして、体力が持つかどうか、という嬉しい悲鳴のさなかです。東日本大震災が主なきっかけということもありまして、一過性のものである可能性も高いので、手放しで喜んでもいられませんが、それでもはるばる東北まで来て下さるのはありがたきこと。


9月に引き続き、2度目のコンサートとなったのは、牛田智大君。今回は、仙台からちょっと南へ下がった岩沼市に招聘されてのことのようです。実はこの岩沼市も、沿岸部で津波の被害を受けておりまして、市民会館の周りには、仮設住宅が取り囲んでいるような状態でした。幾分、落ち着いた様子に見えましたが、2度目の冬をどのように越すのかなあ、と思いながら見てしまいました。


公演の最初に、三枝成彰さんと今回もう一人のアーティストである塩田美奈子さん(ソプラノ歌手)さんへ、岩沼市長から表彰状が渡されておりました。震災の時に、いろいろな支援をして下さったことへの感謝状とのことです。その後、お二人からの一言もあり、三枝さんは、震災孤児への支援活動について*1、お話をして下さいました。


あしながおじさん」的なこの支援の輪には、企業や各界から有名人も参加されていて、AKBで有名な秋元康氏の名前もあるとか。震災から1年半が過ぎましたが、沢山の人々がこういう地道で息の長い支援活動をしているんだなあ、と感慨深い思いでした。

【初めて知ったルーツ】


13歳の中学生になった牛田君は、相変わらずのラブリーフェイス顕在で、つるつるほっぺと綺麗にセットされた髪型、紺のベストとズボンに赤いネクタイといういつもの出で立ち。ハイトーンボイスでニコニコと笑顔を絶やさなず、”清らかな天使”そのものでした。


今回は、かなりの前席で牛田君をほぼ真横から見られる位置だったので、圧巻の指使い以外にも、細かい顔の表情や足の動きなど観察(笑)できました。会場に足を踏み入れた時は、やや緊張の面持ちで入ってきましたが、舞台中央に立ち、いつものスマイルで「ありがとうございます」と口を動かしながら、丁寧にお辞儀をしています。頭を上げると、ビーバーのような大きな前歯と八重歯が口元からのぞいて、可愛らしさ全開。


演奏に入る前は、一転してピリリと引き締まった表情に変わります。ピアノの椅子の位置を確かめながらずらし、かなり前方にチョコンと腰を下ろすと、フーッと一息深呼吸。その後、虚空を見上げてしばらく集中し、ゆっくりと指を鍵盤におろして演奏を始めます。毎回、曲の度にこの動作を繰り返していましたし、ちゃんと曲のイメージが舞い降りてくるまで、決して急ぎません。


やや重めや悲しい曲が続いたので、時折、憂いを秘めた横顔と苦しそうな表情を浮かばせて弾いていました。「子犬のワルツ」だけは、テレビで見せていた無垢な笑顔をかいま見せてくれたりして。激しいタッチの曲では、体ごとふわっと浮き上がって、細い指が折れるんじゃないかと心配になるほど、勢いよくガツンガツンと鍵盤にぶつかってました。指だけではなく足元もペダルをひっきりなしに操ってるので、相当の運動量なのでしょう。時折、うっすらと耳のそばに一筋落ちる汗。


ピアノの表現力とか曲の世界観とかよく言われることですが、”ド素人”の私には、よう分からないのですが、牛田君の奏でるメロディは、とてつもなくドラマチックで心を揺り動かされます。彼の真剣な思いがほとばしり出ているような、それでいて混じり気や華美な装飾のない、素直で透明感に満ち溢れています。ショパンの「ノクターン」や「エディットピアフを讃えて」という曲が、私のお気に入りなのですが、ホント泣きそうになります。


前半の曲が終わって、一旦幕間に下がったときのは、ホッカイロのようなものを手に握っていました。指を冷やさないようにかな?

<セットリスト>

    1. リスト:コンソレーション(慰め) 第3番 変ニ長調 S.172
    2. リスト:愛の夢 第3番 変イ長調 S.298
    3. ショパン:3つの夜想曲ノクターン)第2番 変ホ長調 作品9-2
    4. グラナドス:スペイン舞曲集より「アンダルーサ(祈り)」
    5. 汪立三:組曲東山魁夷画意」より第4曲”涛声”
    6. プーランク:愛の小径
    7. プーランク即興曲 第15番 ハ短調 ”エディット・ピアフを讃えて”
    8. ヒナステラ:アルゼンチン舞曲集 作品2
    9. (アンコール)「子犬のワルツ」


曲目は、前回の「せんくら」とほぼ同じ。合間には、曲に対する熱い思いや震災への思いなどを三枝さんとトークしていました。マイクを向けられると積極的に、かつ知的な回答をする牛田君。ショパンは、「ポーランド出身のショパンが故郷に帰りたくても帰れないという思いを込めた曲で、震災で帰りたくても帰れない方々を思いながら弾きたいと思います。」とか、「愛する人と別れなければならないという悲しい思いを・・・」云々。


毎度「キミ、一体いくつなの?」(笑)と心の中で問いかけてしまうのですが、ある意味、音楽の造詣が深くなると、感性が開花して、自然と早熟になるのかもしれないですね。トークの中で、牛田君が震災について真剣に語る理由が分かりました。祖父母がいわき市福島県)に住んでいて、震災の初期には、安否確認がとれなかったという経験があったからだとか。更に、牛田君の出生地がまさにこの”いわき市”だった、ということ。


なるほど、子供心に震災のショックを受けただけではなく、身近な親族がどこにいるのか生存すら分からないという不安なひとときを実体験していた被災者家族であった故だったのですね。幼少期は上海で育ち、現在は名古屋に住む彼が、まさか東北とこういう繋がりがあるとは思わず、急に身近に感じた一瞬でした。


今回は、CD購入者にサイン会のおまけつき。公演後に、エントランスにズラリと並んだお客さんににこやかスマイルと共に、ずっとサインし続けておりました。70人くらいはいたんじゃないかな〜。「Tomo」と整った字ですが、Tの横にデフォルメされた目の絵がついてて、なんか初々しいです。餌につられて、また同じCDを買ってしまいましたが(汗)、やっぱりミーハーはやめられません!!

*1:学生時代のあらゆる生活援助