ピアノ嫌いも思わずファンになる
書こう書こうと思って早半年。ようやくブログに登場させますのが、牛田智大君。すでにテレビや雑誌でも人気沸騰中なので、ご存知の方は多いはず。私も、彼が騒がれ始めるちょっと前(今年の春頃)にCDショップの店頭で、その名前と顔を知りました。何せ漫画から抜け出たようなその美少年ぶり。素通りできませんでした(笑)。
ちょうどデビューアルバムが発売された直後ということでしたが、ジャケット2パターンがどちらも”もろ”ストライクゾーンで、美少年好きを惹きつけるこの戦略に思わず乗ってしまいました。特に、Vネックの白ベストを着こんでピアノの前に立っているこのショットの美しいこと!ちょっと一昔前の”おぼっちゃま然”とした優等生の雰囲気を醸し出していて・・・溜息。
そんなこんなで購入したのは早かったのですが、実際に曲を聴くまでにはかなり時間を要しました(汗)。と申すのも、実は”ピアノ”が苦手という事実。幼少に2度ほどトライして、いずれも2年しかもたなかった挫折の過去。ましてや当時も高価だったピアノを買ってもらいながら、というこの醜態。可哀想に自宅奥に未だに鎮座してメンテナンスもされていない姿は涙をそそります。。。牛田君と同じ12歳の頃、とにかくピアノの稽古が苦痛でした。
でも長じて気付いたのは、「自分はピアノの音があまり好きじゃな」ということ。弦楽器ならバイオリンやチェンバロなんかはそれなりに好きなのですが、どうもピアノとなると、歌の伴奏でもよく使われているだけに身近すぎてあまり魅力を感じないのです。そんなピアノ嫌いな私なので、CDデッキにかけるまでがなかなか大変でした。数か月経ってやっと、てな具合。牛田君の2枚目のアルバムもやはりそんな感じで。
そうえいばだいぶ昔のことですが、1枚だけピアノのアルバムを買ったことがありました。フランスのセバスチャンという少年ピアニストが弾いた「天使のアルペジオ」です。インストゥルメンタル系のアルバムで、これもジャケットが可愛かった、という単純な理由でした。ミーハー根性とはいえ、まあそうでもなければ手を出さないのがピアノ曲なわけです。
【強烈かつ不思議な個性が炸裂!】
そうこうしているうちに、テレビで牛田君のミニ特集が放送されて、牛田君自身の魅力にますます惚れ込んでいきました。上海育ちで、赤ちゃんの頃から音楽の天賦の才を感じさせるエピソードがたくさん。コンクールでの優勝も数多くあり、まさに神童ぶりを発揮していたそうです。もちろん現在も、テレビなどあまり見ないで1日8時間以上、毎日ピアノに向かってる日々。
牛田君のキャラクター自体も大変面白いです。とにかく一番には、現代の日本の少年とは思えないほどに丁寧な日本語。なんでも上海に住んでいたときに、日本語を”NHKテレビ”で学んだ影響だとか。もちろん挨拶や躾的なものも完璧で、周りの大人達が呆気にとられるほどの素晴らしさ。純粋培養でもしない限り、これだけ品格の備わった「お子様」を育てるのは無理、と思わせるエピソードです。
さらには毎日、お父さんの日本経済新聞を読み、渋い日本人作家・重松清氏の愛好家で、フィギュアスケーターの羽生結弦君も好き(→納得。非常に近いものを感じます)とのこと。好きな漫画は「ピアノの森」(やっぱりね)。甘いものよりお煎餅が好物のよう。スポーツはあまり得意ではないらしく、球技の授業は、グローブをはめて行ったり、夏でも冷房対策に白いふわふわのミトンをはめて指をケアしたり、とピアニストらしい横顔も。
テレビ番組の取材で、銀座の山野楽器に行ったときだったでしょうか。ピアノが展示されているショールームに目を輝かせながら駆け込んでいって、いろんなピアノの感触・音の響きを楽しんだり、沢山の楽譜を見て「僕、1日中ここにいても飽きません。」と興奮しながら満面の笑みでインタビューに答えている姿が微笑ましかったです。確かに子供らしい一面もあるのですが、対象物がちょっと変わってるんですよね、彼の場合。
【9/29 初のナマライブ鑑賞】
そんな注目を続けていた牛田君のライブに、9/29にようやく行ってきました。仙台クラシックフェスティバル(通称・せんくら)で、披露された1時間ほどのミニコンサート。満員の聴衆の前に、黒のスーツ姿で現れた牛田君。幾分緊張を浮かべながらも、マイクを手にして3曲ずつ曲紹介をしながら丁寧に進めていきました。
柔らかいハイトーンボイスで少しだけ早口ですが、手にした紙を読書感想文調に読み上げながら、真面目に語ります。牛田君の声を聞きながら、「この子、歌が上手かったら、きっと綺麗なボーイソプラノで歌えるだろうなあ。」などとくだらないことを考えてましたが、残念ながら本人曰く、「ボク、音痴なんです。」なのだとか(笑)。天は二物を与えず、か。
今回のミニコンサートは、チラシによると”震災に対する「癒しと復興」がテーマ”とありました。牛田君自身も被災地の聴衆を前にしている、という意識がとても強かったのでしょう、1曲ごとに作品の世界観と震災を絡めての言及がありました。「震災で傷ついた心が少しでも安らげば」「故郷に帰りたくても帰れないという福島の人たちの思い」等。
12歳の少年には、やや重いかなあ、と思わなくもなかったのですが、「どうにか自分のピアノで励ましを与えられれば・・・」という使命感にも溢れていて、しっかりと力強い演奏でした。演奏前は、ピアノ椅子の前のほうに軽く腰をかけ、ちょっと斜めに顔をあげ、瞑想なのか精神統一なのか、充分に集中力を高めてから、ピアノの鍵盤にゆっくり手を乗せて弾き始めます。
私の席からは残念ながら、演奏以上に魅力的な”恍惚の表情”などは見られなかったのですが、セットされて美しい黒髪と白いうなじのライン、引き締めた口元が印象的な横顔が見られました。一心不乱にピアノに向かう牛田君のピアノからは、美しく切ない物語が紡がれていき、もう引き込まれまくりでした。無機質だったり感情過多でうるさいピアノと違って、情感もたっぷり。
<セットリスト>
今回、特に感動したのは、「ショパン:ノクターン 第2番 変ホ長調 作品9-2」です。あまりにも有名すぎるこの曲は、映画『櫻の園』で、そしてこの映画から連想される自分自身の学生時代の楽しい思い出、胸に強く残る1曲となりました。ただでさえ思い出深いところを牛田君のふんわり包み込まれるような優しい演奏で、涙腺刺激されてもう大変。
「愛の夢」なんかもそうですが、牛田君はきっと”ロマンチストな男の子”なんだと思います。こういう優しいタッチの曲が、切なくも繊細な響きで胸に迫ってくるというのは、ちょっと想定外。まして想像だけ(?)で、こんな風に弾けるというのは、とんでもなくすごいことだなあ、と感嘆。どんな感性してるんだ、キミは!?
中国人作曲家の汪立三の曲については、牛田君の解説も印象的でした。「波が岸壁にガツーン!とぶつかる音や、滴がポトポトとしたたる音(中略)、また銅鑼の音や太鼓、琴の音などいろいろな音が出てきます。」という擬音語に溢れた楽しい紹介をしてくれました。その後には、「日本と中国で生まれ育った僕にとって・・・」というフレーズにドキリ。今、日中関係がギクシャクしていることなんかも、恐らく小さな胸を痛めてる出来事なのかもしれません。
ともかくも”ピアノ音痴”の私をこれだけ魅了する牛田智大は、若くても偉大なピアニストです。どこまで私のファン熱が続くかは分かりませんけど、出来る限り成長を見守りたいと思います。年内にもう一度、牛田君のコンサートに行くことに決めましたし、彼の醸し出す音楽にしっとり浸りたいものです。
(おまけ)コンサート会場で牛田君の2013カレンダー(2000円)もゲットしました。今までの広報写真が中心でしたけど、すでにこういうグッズが作られているのか、と驚きました。
デビューアルバム。ジャケットは、Vネックベストに惹かれましたが、タートルネックも清潔感があって可愛らしいです。定番のピアノ曲が並びます。2枚目のアルバム。「マルマルモリモリ」や、自作の曲なども含まれていて、少しラフな感じの1枚です。
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