BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

オペラアリアを華麗に歌い上げるボーイソプラノ、ALOIS

久しぶりに耳にする怪物すぎる〜キミ

ALOIS

今年は楽しみにしていた少年合唱団のコンサートも、いろいろと吹っ飛んでしまったこともあり、なんとなく気合が入らずお休み状態だった、ボーイソプラノの世界。とりわけ昨今は、動画サイトでも見ようなら、ありとあらゆる音楽が転がっていて、”希少価値のボーイソプラノを楽しむ”という秘めやかな楽しみも薄まってしまう感じです。


本当はこの状況を喜ぶべきなのでしょうが、人間が強い興味と関心を持って追える量ってのは限られているわけです。時間もそう。何かを取れば何かを失います。それならば限られた時間の中で、より心を奪われる演奏を聴きたい!ボーイソプラノのソロアルバムをコンスタントに購入しながらも、そんな衝動に駆られていた昨今。


久しぶりに「うわっ、すんげ〜!怪物くんだわ、この子」とビックリさせられたのが、オーストリア出身のアロイス・ミュールバッヒャー(ALOIS Mühlbacher)君。たまたまネットで見つけた彼の情報と歌声に興味深々となりました。更に彼が所属する聖フローリアン少年合唱団の公式サイトでは、「どこまで特別扱いなん!?」と驚かされます。特集ページにドキュメンタリー映像まで。


映像で流れていた歌声を聴けば、彼が非凡なソリストだということが一発で理解できます。いやはやその歌ってる時の表情ときたら・・・吸い込まれそうなすっごい迫力。顔もデカけりゃ、身体もデカイ(笑)。目とか口とかパーツが一様にデカくて、なんだか市場で買い物してる元気なオバちゃんみたいにやたら庶民的な感じ(失礼)。


オペラ、女声みたいなエキセントリック・ハイソプラノ、超絶的テクニック。実はそれらは、私にとって”三重苦”に値するもの。私の好物の、素朴でどこまでも少年性の高い天上の歌声、とは正反対に位置しているものです。それでもぎりぎりセーフ!CDを聴くかぎりでは、アロイス君の歌声は、どれも際どいラインで”少年性”を残していて、興味深く聴けました。

【少年オペラ歌手の誕生?】


ライナー・ノーツにあった簡単な紹介文です。1995年、オーストリアのHinterstoder生まれ。(めっちゃ最近だわ・・・汗。)2005年に聖フローリアン少年合唱団に入団。世界中へ演奏旅行の経験があるとのこと。大曲コンサートでのソロのみならず、オペラへの出演も多数あり、「魔笛」三童子の第一童子、「ぺレアスとメリザンド」のイニョルド役、「タンホイザー」の羊飼いの少年、「アルチーナ(Alcina)」のオベルト役などが代表作。


ペレアス〜」については、なんと東京公演だったようです。日本にも降臨(笑)してましたか。ヘンデルの幻のオペラ「アルチーナ」は、2010年のウィーン国立歌劇場で上演されてるそうですが、ウィーン少年合唱団団員で2009年に来日した日本人ソリストシンタロウ君とダブルキャストで歌ったのではないか、と。シンタロウ君もかなりの快挙だったと思いますが、想像するにアロイス君のほうがよりオペラ向きの声ではないかしら。


2011年2月にソロCD『ALOIS UNERHORT/ALOIS〜The Boy and his Voice』をリリース。いきなり1曲目から「魔笛」の夜の女王のアリアからスタートかいっ!と”これでもか”攻撃をくらいました。(→ボーイソプラノでもこの難曲を歌える少年は、超エリート)ボーイソプラノでありがちな耳に優しい名曲集や民謡などには目もくれず、徹底的にオペラ・アリアに拘ったありえないほどマニアックな1枚です。運良く、AMAZONの輸入盤で発売されたばかりです。


オペラには明るくないので、あまり知らない曲も多いのですが、プッチーニ作「私のお父さん」(O mio babbino caro)が収録されていたのはとても嬉しいです。私が今も1番好きなお芝居*1のとても重要なシーンで流れた曲なのです。それを、ボーイソプラノで味わえるなんて最高の贅沢です。ラストの「Dome epais」、同じ合唱団から参加しているKarsten Kohne君もなかなかお上手なソリストで驚きました。もしや知らぬ間に、合唱団のレベルが上がってる?!


2011年8月26日には、ソロコンサートも予定されているようですね。ということは、まだなんとかソプラノを保持しているのかしら?CDのほうも、変声間際の最も完成された時期の録音のような気がします。やがてこの高音もカゲっていき、いつかはテナーやバリトンボイスに変わっていくのか、と思うと分かっていても残酷な喪失感を味わいそうです。

【大好きな少年合唱団】


アロイス君の所属している、聖フローリアン少年合唱団の制服は、ウィーン少年合唱団のようなセーラー服。どちらかというの日本の女子中学生が着ているような可愛いタイプのセーラー服と丸みを帯びた帽子がなんとも魅力的です。過去日本にも何度か来日し、演奏を見せてくれています。


ウィーン少年合唱団ほどの派手さはないものの、素朴で心洗われる深いハーモニーがいつも感動を与えてくれて大好きな合唱団です。ウィーン少年合唱団からほとんど感じることがなくなってしまった、オーストリアの息吹を今も持ち続けているので、またいつか来日して欲しいなあ、と願っております。小さな合唱団でありながらソリストには、時折びっくりするほど魅力のある少年が輩出されています。


以前、ブログに書いたグレゴール・バウエルンシュミート君も素晴らしいボーイアルトで今なお、脳裏に焼きついております。よもやこの素朴な合唱団にアロイス君のようなテクニック系ソリストが出現するとは思いませんでしたが、これまでも優れたソリスト達の歌声をちゃんとソロCDを出して特別扱いする(笑)ところが最高です。そんな環境だからこそ、なんとも素敵なソリストが出てくるのでしょうね。



「Alcina」のオペラ歌唱もいっぱいアップされていますが、得体の知れない&怪しげな旋律の子供の歌(まさにドイッチェ・キンダーリートって感じ)を歌うアロイスはなんかミョーでクスっとします。

聖フローリアン少年合唱団 公式サイトより:St. Florianer Sängerknaben - Startseite


ボーイ・ソプラノ集 (ALOIS UNERHORT / Alois - The Boy and his voice) [輸入盤]

ボーイ・ソプラノ集 (ALOIS UNERHORT / Alois - The Boy and his voice) [輸入盤]

メリハリのある面白さよりも、とにかくALOISのよどみない強烈ソプラノを聴くためのアルバムです。心は休まりませんが(笑)、妙に活力が与えられてしまうかもしれません。それにしても、少年であることを忘れるほど安定した歌声ですね。


Alois at Midnight

Alois at Midnight

◆'11.12.17追記:アロイス君の新譜が発売されました。あまり楽しい選曲ではありませんが、変声前だったのは嬉しいです。

boysvoice-2.hatenablog.com

*1:劇団スタジオライフの「LILIES」