BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

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幻の名画「菩提樹」復活リリース! 期待に違わぬ名作

幻の名画「菩提樹」復活リリース!
菩提樹

今年1月にはすでに手元にあったものの、すっかり見るのが遅れてしまったのが、「菩提樹」「続・菩提樹」という映画です。もうン十年も前からその存在は知っていたものの、ずっと”幻の映画”であったこの作品。


それもそのはず、この作品は、有名すぎるミュージカル映画「サウンド・オブ・ミュージック」の原案となった作品ながらも、権利(→恐らく50年間)の関係で長らく封印されていたからだそうです。


しかも続編もあると知ったのは復刻の広告が出てからでした。最初に2枚のDVD-BOX(CD付)という限定盤が発売されていたのですが買い逃し、意気消沈していたところ、年明け廉価版発売の報に狂喜。最初に「菩提樹」のほうを見ました。


内容はまさに「サウンド・オブ・ミュージック」そのまま。というかこちらがオリジナルなんですから当然なんですけど、ここまでソックリだとは思わず、ビックリしました。


但しファミリー向けに楽しく、ストーリーも劇的にアレンジされている「サウンド〜」に比べて、原作のトラップ一家にもっと近づいた”素朴さ”が魅力の作品に仕上がっていました。ドイツ映画だけにドイツ語の民謡が聴けますし、より民族色を感じました。


一番異なっていたのは、ラストシーン。オーストリアからアメリカへ逃亡した一家が移民局で入国審査を受けるシーン、不安でいっぱいの家族を美しい歌声が救ってくれるシーンは、リアルでとても感動的でした。


マリア役のルート・ロイヴェリックという女優さんが、ジュリー・アンドリュースにひけを取らない魅力でこの映画の躍動感を生み出しています。当時('50年代後半)ドイツを代表する人気の名女優で、バリトン歌手のフィッシャー・ディスカウの奥さんだとか。


男爵のハンス・ホルト氏もシルバーグレイの昔カタギのナイスミドルで惚れ惚れしました。他にも何かの映画で見た覚えがある・・・と思ったら、「青きドナウ」でウィーン少年合唱団理事長を演じていたんですね、どうりで(笑)。


そして可愛い子供達には、この映画を見たいと思ったきっかけの少年が参加しています。ミヒャエル・アンデ(MICHAEL ANDE 写真左端)。この2作品と同じ頃に撮られた「野ばら」の主役の少年です。彼が子供達の中でも目立つ位置にあり、ボーイソプラノでソロを歌い上げてます。


とはいっても、素晴らしい歌声は、レーゲンスブルク大聖堂聖歌隊ソリストウィーン少年合唱団団員、という説も有)のもの。但し、彼の生き生きとした表情はその歌声にマッチしていて違和感を感じさせません。

【続編の美しすぎる歌声】


今日、やっと「続・菩提樹」のほうも見ることができましたが、こちらはトラップ一家がアメリカに移り住んでからの苦労談が中心。始めは深刻な資金難と人気の無さ(カタイ宗教曲ばかりをレパートリーにしていたため)で、挫折を繰り返す家族。それでもマリアの前向きな意思と子供達の美しいハーモニーで逆境を切り抜けていきます。


学生の頃、マリア・トラップの自伝を読んだ記憶が甦りました。この自伝については、もう記憶が曖昧になってますが、実際の家族はずっと地道で、成功まで長いの道のりだったことが綴られていました。


ドイツ人ということでスパイと疑われたり、映画にも出てきますが山小屋を自分達の住処にするのにも、全て自分達の手で家を改修し、自給自足を目指したり、とタフなトラップファミリーが浮かび上がってきて(映画のような)夢物語とは大違いだな、と思いました。


マリアという女性が映画のヒロインに輪をかけて強靭な精神力の持ち主であることも戸惑いの一つでしたし・・・。まあ、それはともかく、この続編は事実をかなりちゃんと盛り込んでいることに好感を持ちました。


しかも子供達の合唱シーンは、どれもこれも大事な場面で登場し、ヴェルナー(ミヒャエル・アンデ)のボーイソプラノのソロが引き立って涙・・・、また涙。ブレの無い透明で力強いボーイソプラノは、魂を揺さぶります。まさに「青きドナウ」「野ばら」など50年も前の時代のボーイソプラノが持つ特有の響きかもしれません。近年はソフトで幼さの残る歌声が主流ですから。


女の子達の声は、児童合唱団のもののようです。少年合唱団ばかり聴いてる耳には、女の子特有の平べったく甘ったるさが残る声は、無意識に拒否感が働くのですが、そこは映画の良さに免じて我慢できます(おいおい)。実際、子役の女の子達も可愛いですし。それにしても”歌う少年”のイメージだけが残っていたミヒャエル・アンデが現役の俳優でいまだ活躍中という事実に驚きました。


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