BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

ウィーン少年合唱団の新作「SILK ROAD」

世界を旅する現代版シルクロードの少年たち

silk road

今年もまたウィーン少年合唱団の来日公演がまもなく始まります。'89年以来欠かさず公演には行っておりましたが、今年はGWのメドがたたない状態があったのと、「そろそろ一休みするか・・・」という心境でチケットをとるのをやめました。惰性であろうと続けているものを止めるのは、それなりの勇気もいるもんだな、と。


もともと2000年を過ぎた頃から、ウィーン少年合唱団への”特別な愛情”は、だいぶ薄れておりました。そんな自分を感じながらそれでもコンサート会場に向かっていたのです。ブログを読み返しても、毎回そんなモヤモヤを充分に読み取れますね(笑)。ただ、かつてのような「美声に陶酔」という思いは変質しても、やっぱり好きなことには違いない。*1


ふとJAPANアーツ主催の公式ブログを覗いたところ、今年のツアーグッズが紹介されておりました。また、お馴染みのロゴにTシャツとかバッグとかかな?と軽い気持ちで見ると、新作の「シルクロード」CDとDVDも発売品に含まれていました。なにせこのCDジャケットは、以前に「え?砂漠でターバンの少年兵!?」と目を疑ったほど、衝撃的で脳裏に焼きついておりました。


もちろん、よくよく見ればウィーン少年合唱団の団員でした。黒人の団員という組み合わせもインパクトありました。”変”好きな私ですら、内心「ウィーン少年合唱団もなかなかキワドイ世界へ行ってしまったなあ・・・(汗)」と思ったんですが、これは映像作品もあるようで興味は膨らんでおりました。写真入グッズに弱い私としましては、また使いみちのない一筆箋もまた注文してしまうし。


しかし驚いたのは、それだけじゃない。なんとこの注文した商品がわずか2日のスピードで即納されたこと。祝日も近いのでまあ2週間くらいかかるかな、と踏んでいたのですが、いい仕事してますわ。会場でも買えるとありましたが、送料さえ気にしなければお勧めします。

【まさに異文化の世界】


早速CDを聴きましたが、1曲目からあまりにも想像通りの中近東っぽい音楽にたじろぎました。映画のサウンドトラックを聴いてるような不思議な感覚。聴いてるとウィーン少年合唱団が歌ってることを忘れてしまいます。効果音として使用されている民族楽器や、現地の達者な謡い手(たまに邪魔に感じますが)も少年達と共に世界を作り出してます。


その「ホンモノっぽさ」には唸りました(→好き嫌いはともかく)。過去に発売されている世界各国の民謡集なんかとは比較になりません。特にアラブ系と中国系の歌は、少年達も雰囲気をとても出していてあまり違和感を感じませんでした。数年前に輸入盤で買ったユダヤ系作品のCDは、あまりにつまらなかったので今回も一抹の不安がありましたが、大丈夫。合間に収録されているヴィバルディやシューベルトのほうが好きなのは違いませんが(笑)。


DVD*2のほうもまた近年ないくらいの完成度でした。英語で見たので細部は不明確ですが、「ウィーン少年合唱団で”シルクロード”のショートフィルムを作成する」というコンセプトで、メイキングビデオの形をとってる(?)凝った作りです。ビデオの冒頭、監督が撮影セットの中で「どの少年が主役をとる?」と少年達に尋ねます。最初は、「僕だよ、ボク!」と全員が手を上げます。


少年達は、砂漠のセットの中で民族衣装を着たり、雨乞いのダンスをしたり、シルクロードの世界を謡いながら楽しんでいきます。合間には、沢山の団員がいろんな国の出身であり、なぜ合唱団に入団したか、というルーツ、音楽への接し方、将来の夢など沢山のインタビューに答える映像がつぎつぎ流れます。


さらには、少年合唱団の歴史再現(これが見どころ!)もあり、最初はウィーンという限られた地域だった音楽が現在のグローバル化へと広がっていった・・・という意図を自然に組み込んでいるようです。

【魅力的に取り上げられた日本人団員】


この作品で主役というわけではないですが、日本人であるヒビキ・サダマツ君と黒人のカヨーデ・オルクベンガ君(いずれも昨年来日メンバー)が非常に目立った活躍を見せます。まさに少年合唱団のグローバル化を感じさせる2人が取り上げられたのは、至極当然かもしれませんが、ソリストとしての魅力やスター性(?)なんかもちゃんと備えていたからかもしれません。


Kay(カヨーデ)君について語る他の団員の「彼は肌の色が違うから」というさりげない発言にドキっとしました。決して差別表現ではなく、自分達と違ったルーツを持ってる少年の個性を尊重して「主役にふさわしい」と答えているのです。ヒビキ君については、ある種特別扱いしてます(歌ソロもいっぱい)。家族構成なんかも、ドイツ語でインタビューに答えるヒビキ君。(お父さんが指揮者なんですね。)


日本で来日公演を見た時は、あまりソロを歌う姿は見られなかった*3のですが、わずか数ヶ月でソリストとして成長したのですね。とても瑞々しいソプラノソロにシビレました。また自然な表情のなんて可愛いこと!!ひさびさに魂を持っていかれました(笑)。「Sus Xatin♪」なんてみるとアイドル並のラブリーさですし、中国の曲もやはり”アジアの血”を感じます。とにかく目立ちまくり。


今でも長年の合唱団ファンとしては、ウィーン少年合唱団の中に日本人団員が増えることには非常に懐疑的です。今年も日本人団員としては3人目のシンタロウ*4が来日します。もしかしたら、今度は立派にソリストとして歌うことになるかもしれません。その歌声を単純に聴いてみたいと思う反面、どこかに抵抗があるのも事実です。他のアジア人ではなく、まさに同郷の”日本人”だからこそ、複雑なんですね。


但し、ヒビキ君がヨーロッパの教会の中でオーケストラと共に立派に歌い上げてる姿を見るにつけ、彼にとって、これらのことがどれだけ得がたい大きな経験であるかを痛感します。世界中から集まった優秀な少年達と一緒に音楽教育を受け、海外ツアーに参加し、ショートフィルムへ出演してるのを見ると、そんな経験を日本にいたら到底味わえないわけですからねえ。


フィルムが進行するにつれて、最初の問いの答えが明らかになります。一体、誰が主役に選ばれたか?そんな映画的エッセンスの楽しみと、ふんだんに流れる美しく新鮮な少年達の歌声、最後は兵馬桶とモツレクで締めくくる(笑)珍しいエンディングと、いやあ凝った映像でした。見慣れた練習光景までが斬新に見えてしまうこのシルクロード、日本語盤の発売を待ちたいです。



Silk Road

Silk Road

輸入盤らしいのですが、AMAZONでも取り扱いが始まるようです。('09.11.10追記)

DVDとCDがセットになっているものや単品やブルーレイなどいくつか種類があるので注意。日本語翻訳有のDVDを見たら、また一段と面白味が増しました。ヒビキ君だけは、一人アップが多いのも発見!、カメラスタッフによほど愛されていたらしい(笑)。('10.4.11追記)

*1:どうにか近隣でのコンサートがあれば駆けつけようと画策はしていたのですが。

*2:リージョンフリーでNTSC規格なのでDVDデッキで再生可能です。

*3:見なかったBプロでソロがあったとか

*4:彼もシマダ・カイ君の姿もビデオに少し含まれています