BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

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これぞ大衆演劇!夏の夜の大衆演劇〜橘小竜丸劇団〜

橘龍丸

真夏の横浜小旅行から戻って以来、雨ばかりの毎日です。横浜に着くなり、「是非貴方と一緒に老舗の芝居小屋で大衆演劇を見たいの」という友人Hさんの口説き文句に乗せられ、なぜか川崎へ直行。川崎から更に路線バスにて、目的地に到着しました。


バス停からものの5分ほど歩き、とても庶民的な町並みの中にひっそり佇む大島劇場。入口でチケットを購入し、靴を入れるビニール袋をもらい、座布団(有料)を借りて畳の上に座ると、そこはちょっと懐かしさを感じる(全くの未知の世界でもあった)昔ながらの芝居小屋でした。


さすがに週末は混むようですが、この日は平日の夜ということもあって、お客さんも20人程度、どこに座っても良し、というリラックス感があります。ミニショー、お芝居、グランドショーという3部構成でたっぷり3時間も見せてくれました。役者さんはすぐ隣で踊ってくれたり、と贅沢三昧。終演後、送り出しでしっかり握手!


座長の小竜丸さんは、さすがベテランの風格で一座の柱となってます。その息子であり、若座長の龍丸君は、今巷を賑わせている早乙女太一君と同年代の17歳。目元スッキリ、シャープな体つきもあって、女性ファンを増やしているとか。和モノをやってる時は、東山紀之にちょっと似てる、と思いましたが、ショーで激しく踊ってる時はまさにジャニーズ系という感じ(なかなか上手いです)。人気があるのも分かりますね。



Hさんお薦めの鈴丸さんは龍丸君の実姉で、女性ながらも立役(男役)をこなす花形役者。気風の良さと度胸の良さを感じさせます。喋るとアネゴ風なのもイケててなかなかチャーミングです。カメラに向けてきっちり目線を送るのは客席が良く見えてるからでしょう、慣れてるな〜と感心。


 


座員の方は、若手とややお年をめした方の二極化してますが、見ていてあまり気にならないのは、若手でも妙に落ち着いたムードがあるからでしょうか。驚いたのは、芝居での龍丸君と鈴丸さんの芸達者さでした。時代調の台詞も楽々こなし、要所にアドリブを入れて笑いをとるなど、若さに似合わぬ上手さに目を見張りました。


この日の芝居は、渡世人に憧れて故郷を捨てた男(龍丸)と彼を追いかけてきた女(鈴丸)が、その一帯を仕切っている親分と知り合い、偽の国定忠治(小竜丸)を斬るよう依頼される、という内容でした。小竜丸さんの迫真の演技が素晴らしく、最後まで飽きずに楽しませていただきました。


一番楽しみにしていた龍丸君の女形は、ただ妖艶、というのではなく、どこかしら独特の愛嬌があっていい感じ。正統派の女形から、鬘を変えて出てくると茶目っ気ある眼で「私がオバさんになっても♪」を軽快に踊ってくれました。最後に男着物姿で「抱いてセニョリータ♪」を披露。イマドキの男の子に戻る瞬間でしたね。


 


Hさんからの受け売りですが、毎回芝居もショーも演目は変わるそうです。またそれぞれの演出なんかも、龍丸君や鈴丸さんなど劇団員が日常的にこなしているそうです。短い司会や「よっ!○○」といった掛け声もやってましたから、本当に何でも自分達でやってるんでしょうね。


劇団としては歴史が浅いとはいえ、そんなことを感じさせないほど「娯楽」として成立っているのに感心。おまけにチケット代は安い。昔ながらの伝統が息づいてる、なんていうと高尚に聞こえますが、本来はこういう世界から日本の芝居文化は発展してきたんだろうなあ、と実感しました。


大衆演劇はいつの時代も若手スターを生み出していますし、折々で注目も集めています。でもそんなことは、その魅力のほんの一部でしかなくて、沢山の劇団が全国を旅しながら、人々に喜んでもらうことを第一に日々精進しているんだなあ、と実感した一瞬でした。