BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

色褪せない名ボーイソプラノ

またしても友人Yちゃんからのビックリ映像情報がきっかけで、テルツ少年合唱団の歴代ソリストの中でも、今なお愛聴され続けてその名が燦然と輝いている、ハンス・ブッフヒール(Hans Buchhierl)について書いてみよう!という気になりました。とはいえネタを探してみたものの、彼についてはほとんど有益な情報が見当たりません。


'72〜74年にかけて、ハンスがソプラノ・ソリストとして活躍していた頃は、有名ミサ曲や宗教曲の録音が立て続けに発売されています。そして、まさにテルツ少年合唱団の黄金期もここから始まったのではないか、と推察します。今でも復刻盤CDが発売され続けており、彼の清純な歌声は変わらず魂を持って生き続けています。それこそ、もう35年も!


私がハンスの録音を始めて聞いたのは、おそらく「Halleluja」というレコードが最初だったと思います。これは、ハンスの魅力を余すことなく網羅してるようなアルバムで半分以上で彼のソロが堪能できます。しかも、「カロ・ミオ・ベン」「オンブラ・マイ・フ」「アヴェ・マリア」などが馴染みの名曲が特徴的なアレンジで収録されています。

【名盤の中に息づく歌声】


いやオリジナル豊かなのは、ハンスの独特の発声のせいかもしれません。彼のボーイソプラノは、妙に色っぽいのです。一体その色気の源は何か?と思うと、力強く吐き出される息と声の合体、これらが周りの空気を震わせ、まるで”乙女の吐息”のような魅力を醸し出しているから・・・かもしれません。低音は意外と地声に近いのですが、高音を出す時の裏声に切り替わる瞬間は、非常に繊細でありながら、大胆な思い切りもあって耳に心地良い。こんな声は、作ろうとして作れるものではありません。


カロ・ミオ・ベンなんて、「カ(ハ)ロ〜 ミ〜(ヒ)オ べ(へ)ン〜♪」みたいなハンス節なので、ふっと脱力に襲われます(笑)。そして、このワザこそが”中毒”を生み出す源。超個性的なのに、癒やし効果が抜群で何度聴いても飽きず、リラックスさせてくれます。もちろん女声とも全く違う少年の声です。反面、子供らしいのに色っぽいなんとも摩訶不思議な声。同じ曲群でも、まるで解釈が違うのか、と思うほど別な曲に聴こえてくるのです。


ハンス・マジックは、重厚なミサ曲や「クリスマス・オラトリオ」などの大曲にもマッチして、その無垢さ故に変わらず愛され続けており、世界中にハンス患者を増やしているのではないでしょうか。私と同様、ハンスがテルツ少年合唱団のルーツとなってる合唱ファンも多そうです。


モーツァルトのレクイエム」のLPには、そばかす顔の素朴な写真も掲載されていました。ドイツの田舎に住んでいそうな何とも馴染みやすいルックスで、あの歌声とシンクロすると一層好感度が高まります。またコミック「バイエルンの天使たち」でも最初に取り上げられているエピソードに、このハンスをモデルにした、と思われるストーリーがありました。


当時も今もハンスについては謎だらけです。それでも彼の歌声だけは、強い生命力で生き続けています。数十年ぶりに日の目を見た、「歌うハンス」の幻の映像*1。この世には、珠玉の宝物を持っている人もいるもんだ!と目を見張りました。なんだか甘ずっぱい青春の思い出(笑)に似た感動です。


J.S.Bach-Weihnachtsoratorium

J.S.Bach-Weihnachtsoratorium

バッハの「クリスマス・オラトリオ」です。何度聴いても素晴らしい作品。ハンスのソロが味わい深いのです。それだけに何度も再販されていますね。


Halleluja Festliche Musik

Halleluja Festliche Musik


Deutsche Messe D.872

Deutsche Messe D.872

コメント欄でお知らせいただいたので追記します。「Halleluja」からのハンス・ソロがいくつかあるそうです。

*1:残念ながら映像は、現在視聴できなくなっているようです。