100年の昔
先日、レンタル店で見つけてすぐに借りた『プリンス〜英国王室 もうひとつの秘密〜』という海外ドラマ(イギリスBBC制作)。これは、ちょっと前に偶然写真で見つけて、とても見たくてたまらなかった作品でした。
写真で見た王子らしき少年がセーラー服を着込んでじっと虚ろな目を向けている。なんて興味を甚だそそられる写真!(笑)、と気になって仕方がありませんでした。ダイアナ妃没後10年という節目ということもあるようですね。そして、ようやく期待に胸膨らませながらご対面とあいなりました。
【歴史から忘れさられた王子】
物語は、およそ100年前のイギリスが舞台。ときの国王、ジョージ5世の末息子ジョン(1905-1919)は、愛らしい少年でしたが、癲癇の発作を持ち、知能や行動にも問題がある障害児で、乳母のララが付きっきりで世話をしています。普段は自由に館を闊歩し、美しい庭を愛でている彼は、高貴な客人が集う時には、人目につかぬよう隠されています。
やがて穏やかで平和な日々は、サラエボ事件をきっかけに第一次世界大戦勃発〜イギリスの参戦〜ロシア革命と激動の時代に打ち破られます。人里離れた隠れ家に移され、誰からも忘れさられているかのように、静かな生活を送るジョンとララ。対する国王と皇后は、危機にさらされている国政のため、あるいは生活のため、ジョンを顧みることがありません。唯一、ジョンに深い親愛の情を持つ兄ジョージも親の無理解に悩んでいます。
英国王室という輝かしい家族の中の”闇”の部分を、特別な誇張もなく淡々と描いた作品です。実にBBCらしい(笑)堅実な作品で、最初の展開もゆったりとしており、正直ちょっと退屈なほど。中盤以降、第一次世界大戦が始まってから、王家の苦悩が少し垣間見えてきてやや興味を引きました。
【ジョンの生まれてきた意味】
それにしても、ドラマの中で国王や皇后というのは息子2人へ細やかな愛情をほとんど見せません。高貴な生まれで、かつ王室の人間というのは、厳格な教育を受けてあんな風になっていくものなのでしょうか。ただでさえそんな淡白な親子関係であり、ましてこの時代、障害を持つ子供は普通の家の子であっても、世間体などもあって何かと隠されたであろう存在。それが王家であれば尚の事かもしれません。
この痛ましいジョン少年には、最後まで実の子供のように愛を注ぎ、「必ず病気は治り、優れた才能を開花させる。」と信じているララという女性が居たことが唯一の救いです。が、幼い王子はわずか13歳で夭折してしまうのです。(最後に特別な見せ場はあります。)別段サスペンスでもないのに最初から最後までちょっと息苦しい気分になるドラマでした。
ジャケットを飾る麗しい子役は、ダニエル・ウィリアム君(Daniel Williams)ですが、この子の登場はわずか1時間弱で、少年期はマシュー・トーマス君(Matthew Thomas)というやや小太りな子役に代わってしまうのが残念です。。。3歳上の兄、ジョージ役の少年より大きくて、顔立ちもなんというか・・・なので(汗)。
ただ、このドラマを見ていてとても興味深かったのは、ジョージ5世の従弟であったロシア皇帝ニコライ2世とその家族の描き方です。非常に因縁深い登場の仕方でしたし、ニコライ一家惨殺の場面も再現されていて(彼らについてとても興味を持ってるだけに)とても生々しいシーンでした。
夭折した王子ジョンは、短い生涯の中で王室に何を残してきたのでしょうか。
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