BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

日本生まれの清純なボーイソプラノ、村上友一

今なお、飽かずに感動を与える美声

村上友一

このところ、あまりに世俗の煩わしさに追い立てられて全く気持ちの余裕がありませんでした。気が付くと、音楽すら聴く気力もなく、生きながらの抜け殻状態、というか。久しぶりに原点に帰って、ボーイソプラノについて書きたくなったので、特に元気をもらえる美声を聴きかえしてみました。


ボーイソプラノファンであれば、その名を一度は聞いたことがあるかもしれません。小樽出身の村上友一君。1979年生まれということで、写真の中の「小学生」面影はもはやなく、成人男性となっているわけですね、改めて考えてみると驚きの事実です。


雑誌『ショパン』で紹介され、限定盤のミニCDを購入したのが彼との出会いです。'90年発売のこのミニCDは、ヨーロッパのボーイソプラノが歌うような定番の曲が揃っていました。*1CDジャケットでシルクのフリフリブラウスに身を包んで微笑む”醤油顔の少年”に若干戸惑いながら、何の気なしにこのCDの第一声を聴いて、度肝を抜かれました。

【外国人と一味違う歌声】


日本人の少年の典型的な(と勝手に思ってるだけですが)優しく、か弱く、平べったい歌声ではなく、”正真正銘ボーイソプラノ”が溢れんばかりの魅力で満たしてくれたからです。良く聴けば、微妙に欧米の少年とも声は違います。世界中を探しても滅多に出会うことの出来ない、著しく清純で透明感のある歌声、それに加え、友一君の歌声には、天性の明るさが充満し、弾むように歌い上げている。


限りなく心地よく優しい風を運んでくる、友一君の美声に包まれて、一瞬にして虜となりました(笑)。「日本にもこんな素晴らしい歌声の少年がいるんだ!」という感嘆の次に、「一体どうやったらこんな歌声を生み出せるのだろう?」という素朴な質問が浮かんできました。もちろん、優れた先生に歌唱指導を受けたたまものなのでしょうが、生まれもった声の良さと感性の鋭敏さがあればこそ、でしょう。


ミニアルバムには6曲だけでしたが、日本ではなかなか録音として残ることが少ないクラシックの選曲が嬉しかったです。特にスカルラッティの「すみれ」はブラボー!すっかりマイベストとなっています。そしてこの6曲にモーツァルトの「恋とはどんなものかしら」という有名なアリアを含めて、器楽とのオムニバスアルバムが『air』というCDに収録されて発売されました。


またこの「恋とは〜」が筆舌に尽くしがたい魅力です。全く恋を知らない(笑)乙女・・・少年ですが・・・が目を輝かせ、恋に憧れを抱いて歌っているかのような、穢れを知らぬ歌声です。技術的に歌える少年は多くいたとしても、友一君のような声で歌える少年は、そうはいないかもしれません。それほどに彼の声はあまりにも麗しく、ごく自然体でありながら、魂を揺さぶります。


友一君には、超限定盤のオリジナルアルバムもありました。*2こちらでは、日本の童謡などを中心の歌っています。日本人のDNAを感じる素朴な歌声でそれはそれなりに良いのですが、正直言って彼の天性のソプラノでクラシックや宗教曲、オペラのアリアをもっと聴きたかったです。いまだに残念無念〜。

【日本人ボーイソプラノへの願い】


友一君を知って、1つ学んだことがあります。日本にも当然のことながら、優れたボーイソプラノの少年が何人も存在しているはずです。しかし、彼らの大多数はその限られた時期のほんの一瞬の輝きを、多くの人々に存分知ってもらうチャンスを逸して、「少年の日の懐かしい思い出」としてアルバムの1ページを飾って終わっているのではないしょうか。


地元のコンサート会場で楽しく歌う程度ではなく、どうか少しでも多く美しい歌声を世に残して欲しい。そして、そんな埋もれた少年達の録音をどうにか世に出して欲しい、と。1人だけのソロアルバムが難しかったら、数名のオムニバスアルバムでも良いのです。そんな小さなきっかけがいろいろなものを生み出していくのではないか、と。


欧米の伝統に培われたボーイソプラノとは違う、日本独自のボーイソプラノの大きな可能性を友一君は教えてくれました。少年の美声を愛する方々、友一君の歌声をどうか聴いてみて下さい。全く新しい扉が開くかもしれません。



4:35あたりから、友一君のソロが聴けます。

ボーイソプラノの館(村上友一編):murakami
 → 友一君の経歴など詳しく紹介されています。


air ボーイ・ソプラノとピアノ・ソロが奏でる

air ボーイ・ソプラノとピアノ・ソロが奏でる

ピアノとボーイソプラノが交互に入ってるオムニバス・アルバムです。友一君の魅力が余すところなく楽しめます。私の所有するCDの中でもお宝度高し!

*1:特に英国のアレッド・ジョーンズが良く歌っていたような曲でした。

*2:但し、自主制作盤のため入手困難な幻のCDです。