BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

’07ウィーン少年合唱団公演感想(1)

初見の印象をサクっと

先日、ウィーン少年合唱団の来日公演を見に行きました。なんと地元で見るのは15年ぶり。(その間、東京ばかりで見ていたわけですが。)'83年の初コンサートもここで見たんだよなあ・・・と思うと感慨もひとしおでした。ちょっと日常的にブルー入っていたので、少年合唱を聴けるだけでも救いでしたし。


良くも悪くも田舎での演奏なので、客席のあちこちでむやみに紙をガサガサ弄る音には、ピリピリしてしまいます。私自身は昔から、一音一音神経を張り詰めて息を殺し、身動きもせず聴いているので、どうしても音にルーズな人の気持ちが理解できないのです。しかし、一方で気取りのない観客の率直な反応は気持ち良い。「合唱を楽しむ」という姿勢、というのはどちらもありなだけに難しいものかな、と感じました。


1曲ごとにブラボー兄さん*1が過剰に声を上げていましたが、あまりに毎回「ブラボー!」を連呼するので、いっそ歌舞伎の「よっ、中村屋!」くらい洗練されてくれるといいのに、とか思ってしまいました。「サイコー!」イマイチだな。「うまいっ」「いいじゃん」「いいね」・・・なんか軽薄(汗)。で、ふと思いました。

 「ヨッシャー!

っとか、いかがでしょう。言い易くて元気が出そう。でも、実際声が上がったらドン引きかもしれません。ってそんなくだらないことはいんですけど(笑)。

【全体的には雑、だけど元気なコーラス】


今年の来日組。Aプロ最初のハイドンアレルヤ」。のっけから大好きな曲でスタートしましたが、これがあららら〜という出来で冷や汗が。。。しかもメリハリに欠けてて、硬軟の聞かせどころがフニャフニャ。今まで聞いた中でも最低レベルだったので、真剣に「どうしよう!」と焦りました。


私がウィーン少年合唱団で最も楽しみにしているのは、冒頭の宗教曲なのですが、2曲目以降多少持ち直してきてホッとしたものの、あまり出来はよろしくなく心配になりました。4曲目、ソプラノのコンラート・ハインドル(Konrad HEINDL)君とトーマス・シュラムベック(Thomas SCHRAMBÖCK)君の二重唱で持ち直します。


コンラート君は、ラテン語(?)の歌詞でもドイツ語訛りでなかったし、顔立ちもゲルマン系には見えず、「東欧かロシア方面の出身かな?」なんて思いながら聴いていましたが、とにかくバリバリのボーイソプラノがピーンとよく伸びてかなり印象的でした。


本当に”少年”そのものの硬質だけれど、それでいて明るめの”晴れ渡った空”を思わせる歌声。ウィーン少年合唱団のソロで久しぶりにあれだけ伸びやかな声を響かせる少年を見たなあ、と嬉しくなりました。その分、情感はあまりありません。というかコンラート君のみならず、ソプラノ陣はみんなそういう歌い方なんですね。


当初、高音が地声みたい・・・(汗)と思ったくらいで、それが中盤からどんどん勢いを増してきて激しさにちょっと戸惑いました。今回のメンバーは、なかなか思い切りが良く、ボーイソプラノ全盛期の少年達が4,5人張り上げまくってます。悪く言えばなんですが、声質はかなり少年ぽさが出ていて、耳慣れてくると「もういい、思い切りやってくれたまえ。」という感じに開き直ってきちゃいます。


その分、アルト陣は元気を全部持っていかれちゃってました。誰かぶちこわすような地声アルトがいないので耳障りはいいのですが、なんだかフワフワと勢いがなく奥ゆかしすぎる感じです。本当にアルトパートはなんとかしてくれないものか、と毎回失望しています。たまには朗々とアルトソロを聞かせるような逸材が出てくれると嬉しいのですが。


終盤、「流浪の民」でソプラノソロをとったニコラス・ヴィンクルマイア(Nicolas WINKLMAIR)君。歌うことが大好き!と全身でアピールしているような子で、この子の声質は、往年のウィーン少年合唱団の声だなあ、と懐かしく思いました。


そうそう、巷で話題の日本人団員カイ・シマダ君。アルトとありましたが、ソプラノパート側で目立つ中央ゾーンに位置し、メゾソプラノみたいな感じでした。優しいけれどちょっと平べったい、日本人特有の声(腹式呼吸っぽい)という感じです。見ていてあまり気にはならない、品の良さがあったので救われました(笑)。


各国の曲コーナーでは、「涙そうそう」が思いのほか良かったです。「浜辺の歌」「さくら」とか十八番の”童謡”シリーズはもういらないかな、と思った一瞬です。アンコールにこれまた大好きな「Somewhere」を歌ってくれたのがとても嬉しかったですね。まだまだ、いろんな曲にチャレンジして欲しいですね。なんだかんだいって、結構楽しいかもしれません、今回の組は。


蛇足ですが、パンフレットに4ページの特集となっていた最愛のゲオルク・ニグル君に大感動。歌手としてもどんどん活動を発展させているのが分かりますし、少年時代から飛びぬけて演技が上手かったので、オペラで活躍しているのが嬉しいです。写真からでも、その個性が伝わってきました。こういう超個性的&実力派ソリストが今のウィーン少年合唱団から出ることは、もはや望み薄ですが、それでもわずかな期待だけは持って見ていたいと思います。


boysvoice-2.hatenablog.com

*1:クラシックコンサートに最近多いが、感極まった声で「ブラボー」と叫ぶ人を勝手にこう呼んでます。感動の体現というより自己アピールに近い感じかな?と私自身は懐疑的。