BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

ウィーン少年合唱団初の日本人団員に巷は大騒ぎ?

ちょっとしたカイ・シマダ旋風

今年のウィーン少年合唱団公演がようやくスタートしたようです。月日の経つのは早いものですねー。公演に先立ってマスコミへの記者会見が開かれた、ということですがこれが思わぬ活況の様子で、例年にないほどの報道量にビックリしています。もちろん、その理由は、ウィーン少年合唱団初の日本人団員が来日メンバーにいる、という事実。


そういうときに限って、いつもは見ている朝のワイドショーを見逃して(汗)、ファンでもなんでもない知人に「なんかやっていたね、見たよ〜。」なんて言われてしまいます。仕方ないのでネットニュースや公式ブログでその様子をチラホラ見ていました。「AERA」の最新号('07.4.30-5.7号)では、カラー2頁ほどでカイ君についての記事もあり、かなり力入っているぞ〜という感じです。


初耳でしたが、すでに2人目の日本人団員*1も在団しており、その少年の場合はソリストになる可能性もありそう、とのこと。いやはや・・・時代の流れが速すぎてついていけません。しかし、こんな一連のフィーバーぶり(こんなのまだ序の口でしょうけど)を知ると、日本人一般にとってもウィーン少年合唱団はいまだに「特別な存在」なんだなあ、と改めて感嘆してしまいます。

ウィーン少年合唱団のグローバリゼーション】


合唱団が日本人の団員を募集している、と聞いたのがもう2年ほど前のこと。当時は、「日本からドイツへ合唱留学して寄宿舎で暮らすなんて日本人少年が、本当に見つかるのかしら?」とやや懐疑的でもあったのですが、カイ君の場合は家族の薦めではなく、本人が希望したということで、主体的に動いたんだなあ、と驚きました。


まだ少年でありながらウィーンに単身留学して、寄宿舎生活に入り、ドイツ語を覚え、随分と順応している、と報道されていましたが、子供だからといって環境に馴染みやすいとは限らないはずでしょうから、陰で相当努力したんだろうなあ、と推察します。日本での凱旋公演(笑)もつつがなく無事に終わってくれるといいなあ、と思います。


しかし、カイ君ばかりにスポットが当てられると、ちょっとした「客寄せパンダ」にならないか、という心配も。記者会見の時は、ウィーン側の関係者が随分神経質なくらい特別扱いしないようにしていたそうですが、このあたりに理由がありそうです。実際、報道の後でチケット申込が殺到、とか聞くと「はあ、そういう展開ですか。」と引いてしまう面もあって。(何事も新しいファンを獲得するにはいいのかもしれませんが。)


老若男女、海外で勝負する日本人ミュージシャンは、数え切れないほどいますから、カイ君もこういう稀有なチャンスを利用し、思う存分楽しんで頑張って欲しい、と素直に思う一方で長年のファンとしてはかなり複雑な気分です。私自身は、子供が集まらなくて人数が減ってしまっても、ウィーン少年合唱団は、「ウィーンとその周辺地域の子供達」で構成されている合唱団であって欲しかったからです。


だいぶ以前から、ウィーンに住むオーストリア人にとって「ウィーン少年合唱団の団員」という選択肢はあまり魅力のないものになっていたようです。海外ツアーが多いので、半年ほどの短い期間で教育のカリキュラムを組まれるのは進学の面からも不利、加えて世に名高い”寄宿舎生活”は、可愛い盛りの子供と家族を引き離し(週に1回は自宅に帰れるものの)、抵抗が強いのも分かります。子供自身にも合唱より、ゲームやスポーツなどいくらでも興味を刺激するものが溢れていますし。


ウィーンから離れてもっと田舎へ団員集めに奔走し、それもままならぬと全世界に募集をかけグローバル化を図ってきた合唱団。今回、初の日本人団員という報道は、日本人にはビックリニュースになりますが、もう数年前からアメリカ人は当たり前、中国人やインド人なんかも入っていてウィーン多国籍少年合唱団と言ってもいいのじゃないか、というほど国際化の道をつき進んでいます。高校野球でシード校に越境入学する球児達、にちょっと似ているかも。*2


それによって何が変わったか。歌声はもちろん、往年の響きとは全く違います。もはや違う合唱団として、切り離して考えないといけない、という感じです(→これがなかなか難しい)。コーラスの実力云々は育て方にもよりますし、世界中から有望な少年達を集めているのですから一概には言えませんが、上手であってもカリスマ性に欠け、「とても庶民的な合唱になったなあ・・・。」と毎度感じてしまいます。


最も違和感があるのは、多数の外国人団員がオーストリア民謡やウィンナワルツ・ポルカなどのウィーン少年合唱団十八番を歌ってる時や、やたらネイティブな発音で(笑)英語のミュージカルナンバーを歌われるとき。音楽には国境はない、とは言うけれども、そこはかとなく立ち込める「ウィーンの息吹」がコンサートホールで最近感じられなくなってきました。

【時の流れが変えゆくもの】


それにしても伝統を守る、というのは並大抵ではないのですね。よほど(宗教的、芸術的)バックボーンがしっかりして揺るがない地位にある、いくらでも子供の入団希望がある、金銭的な支援もある、有能な指導者がいる、などのプラスアルファの要素がないと難しいのでしょう。


昨今では、素晴らしい歴史と業績があっても、男女平等の高まりや生き残りをかけて少年少女合唱団になってしまう、という恐ろしい(→少年合唱ファンにとって、という意味ですが)流れもありますし。。。


外国人団員であっても、オーストリアで生まれ育っていたり、ハーフだったり、移民という場合は、まだ気にはならないのですが、外国籍の少年達が今後もどんどんウィーン少年合唱団に越境入団していく、という流れが加速すると、それこそ”名のみのブランド”になってしまいそうで危惧してしまいます。一方、他国で”埋もていた美しいボーイソプラノ”と出会うチャンスは生まれるので、一体どちらがいいのか、難しいものです。


そんなテンション低いことを言っていても公演がくれば、どこ吹く風でコンサートにおしかけ、普段のミーハー熱はUP↑していくでしょう。一体どこのどいつだ、3回分のチケットとってるやつは(笑)。

ウィーン少年合唱団公式ブログ(JAPANアーツ)より
 レポート: ウィーン少年合唱団2008
  → 詳しい記者会見レポが載っています。


故郷の歌~ドイツ・オーストリア民謡集

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待ち望んだRCA名盤シリーズ復刻!改めて聴いてみたのですが、ソロを歌ってるのは、もしかしたら'80年来日のミヒャエル・クナップ(5曲目)とイェルク・クルシッツ(17曲目)ではないかな?


野ばら&ます~シューベルト,モーツァルト,シューマン&ブラームス

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こちらは、何度か復刻されていると思いますが、この組み合わせのは持ってなかったと思ったので買いました。この「ます」「野ばら」のソロをどれだけ聴いたことか(笑)でも色褪せない魅力があります。

*1:眼鏡をかけ、まだ幼さを残している姿も載ってます。

*2:地元の馴染みの高校が甲子園に出場する!と思っていても、ほとんど他県出身者ばかりだった、みたいな。