説明できない奇妙な感じ
ヘンリー・ジェイムズ作『ねじの回転』(The Turn Of The Screw)という小説は、登場人物の少年少女が物語で重要な役割を占めていながら、ちょっと奇妙なストーリーで印象が強い作品です。
純真なはずの少年マイルズと少女フローラを操る’館に潜む邪悪な亡霊達’、そして幼い二人を守ろうとする女家庭教師の神経戦が主題でしょうか。悲劇的な結末*1については、最後まで理由も原因も解明されないため、もやもや感が残る物語です。
小説が発表されてからもいろんな解釈がされ、論争も巻き起こったと言い伝えられてるのは、この作品にそこはかとなく漂うペドフィリア的なムードのせいかもしれません。幼き者達を支配し、魂の契約をしている悪霊という設定が100年以上前の読者にどのような衝撃を与えたか、想像もできません。
西洋的な神や悪魔への畏れといった背景がないと、作品の本当の魅力は分かりにくいのかもしれませんが、それでもどこか脳裏にこびりついて振り払ってもついてくる(笑)のはさすがです。原作を読んだのは随分前になりますが、その後、映画やオペラでこの作品と何度か再会しています。好んで見たいわけではないのに、なんとなく気になる、という不思議な作品なのです。
中でも1番、原作のイメージを捕らえて気味の悪さを味わえるのが(別に味わいたいわけではないけれど)、モノクロ映画『回転』(米'61)です。家庭教師ミス・ジェスル役のデボラ・カーという女優さんが驚きの表情で、目を大きくひんむいたドアップが何よりも怖く感じました。
マイルズ役の子役マーティン・スティーブンス(Martin Stephens)は、まるで生きた人形のよう。メリハリのきいた顔立ちでとても印象的でした。美しくて小賢しさも感じられるマイルズ役はまさに適役です。初めて見た瞬間、「この顔には見覚えがある!」と気付きました。
それは、彼が銀髪のカツラをつけて現れた『光る眼』('60)という映画*2に出演した時にも見せた、美しくも冷酷な表情が印象に残っていたためでした。その後、あまり出演作がなかったようなので、これらの2作で「ホラー向き子役」に認定されてしまったためなのか?などと勝手に推測していました。
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