BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

「トーマの心臓」の原点、『寄宿舎〜悲しみの天使〜』

美しい少年達の特別な友情

寄宿舎


トーマの心臓」ファンであれば知らない人はほとんどいないと思いますが、この傑作漫画のモチーフとなった映画が『寄宿舎』('65 仏)です。


日本公開時は、「悲しみの天使~ジョルジュとアレキサンドル」という邦題であったようですが、今から40年以上も前の作品でモノクロ画像ですがその世界は、瑞々しい美しさに溢れていて、少年映画として色褪せない魅力に溢れています。


あらすじ:少年時代の潔癖、かつ頑なで自己愛の強い時期にジョルジュは一人の美少年、アレクサンドルと寄宿舎の中で運命的な出会いをする。神学校の厳格な監視下の元で、惹かれ合う二人はささやかな手紙のやりとりや、人目を忍んで密会を重ねることで”特別な友情”を育んでいく。しかし、同性愛については過剰なほどに厳しい時代のこと、やがて二人の関係は監督者の知るところとなり、無残にも引き離されてしまう。ジョルジュに送った手紙の束を全て返されるアレクサンドルは、一瞬にして蒼白となり、唐突な別れがやがて彼に悲壮な決意を選ばせてしまう・・・。


この映画、禁断の少年愛の世界・・・と修飾されることも多いのですが、愛というにはまだ幼い、(今の尺度では測れない)もっとピュアで穢れなき友情というイメージです。キスの代わりに”血の誓い”をしてしまうようなところは、逆にゾクッとくるほど官能的ではありますが(笑)。そういえば、「君の詩を書いたんだ。」という台詞もなかなかの殺し文句ではありますね。

【映画の魅力】


私にとっては最愛の映画ですし、アレクサンドル役のディディエ・オードバン(Didier Haudepin)は、”永遠の美少年”として、いつまでも輝きを失いません。


温室の中でジョルジュに「してはいけない事って知ってる?」と真顔で聞くアレクサンドル*1は、何も知らない無垢な天使ではなく、ちゃんと現実世界に属している少年に思えます。一方で二人の純粋すぎる関係は、むしろ自由の少ない閉ざされた世界だからこそ成立したのだろうと推察します。


決して特別な少年達ではなく、大人への向かうまでのひとときのゆらぎを持つ時期、家族から引き離された寂しさから愛を求め、寄り添っている”擬似恋愛”に近いものだったのかもしれません。たとえささやかな魂の触れ合いだとしても、厳格な規律を守らなければならない世界では許されざる罪となってしまうものなのでしょう。まさに共同体の危機となるからでしょうか。


この映画の中では、痛ましい結末になっていますが、それでもオードバン少年の天衣無縫な存在感と笑顔は、限りなく魅力的です。本当に限りある一瞬の”天使”のような美貌だと思います。相手役のフランシス・ラコンブラードは、ちょっとマリオネットみたいな顔立ちでしたが*2

【オードバン少年のその後】


オードバンは、俳優からやがて監督へと道を歩んだそうです。青年時代の彼の映画をチラッとだけ見たことがありますが、その厚めの唇以外とクリクリ眼以外は昔の面影を見出せない・・・(汗)ということで余計に少年時代が貴重に感じました。なんだかんだ言っても、彼の全身から匂い立つような”少年性”はたまりません(笑)。


復刻されたパンフレットを読んだとき、ジャン・ドラノワ監督の経験談がありました。映画を撮るにあたって神学校の寄宿舎に寝泊りし少年達の生活を目撃したときの話です。そこで実際に、年頃の若者達が早朝ミサに向かう少年達の中から”思いをかける少年”を一目見ようと早起きしてている、という出来事でした。その話自体がすでに映画以上に映画的、と印象に残りました。


claranomor.exblog.jp


寄宿舎 ?悲しみの天使? [DVD]

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古い作品ですが、これを凌ぐ少年愛映画はなかなかないと思います。マイベストです。

*1:「知ってるけどそんなことはしないよ」と答えるジョルジュに満面の笑顔で近づくアレクサンドルには卒倒ものでした。

*2:若かりし頃の郷ひろみのようでもあり(笑)。