BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

忘れられないドキュメンタリー  「小さな留学生」

一人の中国人少女の成長物語

子供の教育、なんて私の専門分野ではないので偉そうなことは書けませんが、少年少女ものを何気なく見ているとたまにとても気になる”普通のお子様”達に出会います。なんの縁もありませんが、「ああ、今頃あの子は一体どうしてるのかな?」なんて時折思い出すのです。過去のTVドキュメンタリーでとても面白かった作品を紹介していこうと思います。


フジテレビで2000年に放送された『小さな留学生』。今から10年ほど前のお話です。日本に単身赴任していたサラリーマンのお父さんの元へ、中国人の母娘が一緒に暮らすためにやって来ます。クリクリとした目と利発そうな受け答えが印象的な一人娘の張素ちゃん、9歳。日本に来て一生懸命勉強して「日本人なんかに負けない」「1番になるんだ!」と目を輝かせていました。


しかし、日本の小学校に転学して初めての授業で、全く日本語が分からず、呆然と教室の中に佇むだけの張素ちゃん。中国に居た時には教師の問いに手を挙げないことは1度も無かった、というほどの活発な少女が、1時限目の授業が終わって、廊下で心配そうに見守っていた母親の元に走りこんで涙をポロポロ流して訴えます。


 「何も分からないの・・・(涙)」

それでもお母さんは偉かった。娘の涙を拭いてあげながら、

 「分からないとこがあったら先生に聞きなさい。」


と冷静になだめます。ここで日本の子供だったら、大概萎縮したり、グズったりしてしまうと思うのですが、張素ちゃんは即座に踵を返し、真っ直ぐ先生の元へ。国語の教科書を開いて、すぐに「読み方を教えて!」と熱烈アピール。言葉が分からなくても、とにかく先生の話す通り、発音を繰り返していくのです。


その姿に「偉いわー、この子!」とビックリ。やがてクラスの同級生達が集まってきて、我も我もとばかり張素ちゃんに群がって日本語を教え始めていきました。


担任の女先生は、クラスメートの少女に張素ちゃんと登下校を一緒にするようにと頼む、という心配りもしてさり気ないバックアップもしていました。最初は全く会話のない二人の少女が、2年後にはペラペラとお喋りをするようになり、課外授業などでレッスンを重ねた張素ちゃんは日本語もペラペラに上達して成績もクラスで首位になるほどの成長を見せます。


「日本人には負けない」と勝気な発言をしていた彼女も、この頃には、「そんなことより皆と仲良くすることが大事なの」と発言を変えていました。おかあさん曰く、「昔はとても負けず嫌いだった子ですが、日本に来てあの子も何かを学んだんでしょうね。」と語ってました。


その後、母娘は中国へ帰ります。ドキュメンタリーは、中学生になった張素ちゃんのその後の姿を映しました。北京のごく普通の国民学校に通う彼女は眼鏡をかけてすっかり中国風の女の子に変貌していました。日本語の授業では、先生よりも流暢な日本語を話す様子もあり、どこから見ても普通の優等生に見えました。TVは、自転車と車が激しく行き交う北京の街中をスタスタと目的地に向かって歩む張素ちゃんを映して終わりました。

【ドキュメンタリーから思うこと】


子供は環境に馴染みやすい、と言われますが、必ずしもそう上手くいくとは限りません。海外留学生や帰国子女の場合、その日本と諸外国のカルチャーギャップにかなり思い悩むことも多いと思います。まして、日本の社会はとかく”ムラ社会”になりやすいので、過剰に疎外感を感じることもあるんじゃないか、と思います。そういう時に、自然と導いてあげるような周りの優しい思いやりは大切なものだなあ、と改めて思いました。


私が子供の頃、外国人は宇宙人かスターか(笑)、と思うほど手の届かない存在でした。小学校に海外の先生達が授業を見学に来たりする*1と、わけも分からず握手を求めたりやたらとハイテンションになっておりました・・・汗。今でこそ、次第に身の周りにも外国人が増えてきてますが、まだまだその点は発展途上な自分なので、ちょっと反省しちゃいます。


それにしても、張素ちゃんのようなガッツと根性は道を切り開くものなんだなあー、と思いました。シャイな私(ホントか?!)もあやかりたい・・・ものです(笑)。

*1:やたらと研究授業の多い小学校でした。