名作ミュージカル映画! 『オリバー!』
ポランスキー監督の『オリバー・ツイスト』を見てから、'68アカデミー賞受賞作『オリバー!』を見返したくなりました。金髪のとろけるような美少年、マーク・レスターの出世作ともなった、このミュージカル。舞台がイギリスだし、メインの子役もイギリス人でてっきりイギリスの映画とばかり思っていたのですが、実はアメリカ映画だったというのを後から知ってかなり違和感を感じました。
しかし、見てみるとこちらの映画のほうは、確かに悲惨さよりも明るい希望に満ちた(?)作品となっていて、最新作の『オリバー・ツイスト』とは似て非なるものがあります。ロンドンの男女があちこちから湧き出してなんの脈絡もなく(笑)、いきなり躍りまくるダンスシーンなどは、クラシカルなミュージカル映画を思い出してとても懐かしかったです。元気な下町娘ナンシー役のシャニ・ウォリスの歌声は、とても軽やかでとても気に入りました。
ミュージカル映画でありながら、(どう考えても容姿だけで選ばれてしまったと思われる)マーク・レスターの歌は、正直言って・・・かなりキツイです。吐息と共に囁くようなか細く不安定な歌声。*1歌う時は、コンプレックスが顔に浮びあがっていて気の毒な感じも。
何かのインタビューで、大人になったマーク君が「僕は、歌も踊りも芝居も、何もできなくて・・・。」と言っていただけあります。まあ当時も、「その謙虚さとラブリー・フェイスに免じて許しちゃう!」という感じだったでしょうね。その代わり、周りに超芸達者なドジャー役のジャック・ワイルドなども配してちゃんと見どころたっぷりに仕上げております。
【ジャック・ワイルドの早すぎる死】
そう、どちらかというとこの映画で目が離せない個性派子役は、当時16歳だったジャック・ワイルドのほうでした。何をやっても並外れた存在感で他を圧倒しているし、踊りも歌も独特のワイルド節で盛り上げています。
彼には古き良き大道芸人のような素朴な味わいと目が離せない魅力が備わってました。特にラストシーン、家を失って独りになったドジャーが、フェイギンと再会する場面の小憎らしいほどのチャーミングさは圧巻!!クリクリの黒い眼がいたずらっぽく光ってました。
残念ながらマーク・レスターも大人の俳優にはなれずに終わってしまいましたが、ジャックに至ってはどうもあまり芳しい噂が聞えてこなかったので、「どうしているのかなあ〜」と思っていた矢先、突然の訃報*2を聞いて軽いショックに襲われました。
亡くなる数年前には、舌の切除手術で喋ることもできなくなっていたという彼、あの大人顔負けの達者さで見る人を魅了した少年の姿を思い浮かべると、あまりに残酷な仕打ちだなあ・・・と、泣けてきます。ご冥福を祈ります。
ミュージカル・ナンバーの魅力
ところでこの『オリバー!』。子供ミュージカルと侮るなかれ、素晴らしい名曲揃いです。とにかく楽しくて聞いてると心が弾むナンバーばかり。女の子版ミュージカル『アニー』と対称を成している感じです。映画より前に発売された2枚のアルバムを持ってますが、どちらも出演者の声質が非常に似ています。
オリバー役は、テクニックはあまり感じさせないピュア・ボイス。対するドジャー役は、非常にやんちゃで少しガラの悪い(笑)地声系アルト・ボイスです。そして極めつけの良質な音楽の所以は、子供の歌も良いけれど、大人の歌の魅力が満載なことですね。中でも「ウンパッパ♪」(Oom-Pah-Pah)は楽しくて知らずに体が動き出してしまいます。
日本でも随分昔に黒田勇樹君が舞台版「オリバー」を演じてその時のチラシを持ってますが、行っておけば良かったなあ、と軽く後悔してます。「アニー」と違って、男の子をかき集めてのミュージカルは難しいと思いますが、ミュージカル好き、バレエ好きな男の子も増えてる(?)ようなので、是非再演して欲しい演目です。
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こちらは、'62年録音。役柄のイメージは似たようなもの。