BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

忘れられない小説 本の中のいたいけな少年達

ぼくの心臓を盗まないで

久しぶりに本の話題を。映像や音楽のみならず、書物の中に出てくるイメージとしての少年達もやはり気になる存在です。児童書や子供向け作品、名作の数々よりも記憶に留まるのは現代の小説が多く、愛情に飢える少年達が心に残ってしまいます。

(1)ボクの心臓を盗まないで

 最近読んだ小説です。モスクワの孤児ヤーコフがアメリカで里親が待ってると言われて身寄りのない少年達と一緒に船に乗りこむのですが、そこには臓器密売という暗い闇が待ってるという衝撃的な作品。


同じ頃、アメリカ人女性外科研修医アビーが心臓移植をめぐって巨大な陰謀に巻き込まれていき、やがてヤーコフと遭遇し・・・という展開です。単なるサスペンスを越え、現実にも世界のどこかで起こっているのではないか、と背筋が凍る思いが残りました。


僕の心臓を盗まないで (角川文庫)

僕の心臓を盗まないで (角川文庫)

(2)サラ、いつわりの祈り

 J.T.リロイというアメリカ人の新進作家が自叙伝として書いたベストセラー小説。この本に書かれている内容は、彼の実話を元にしています。


幼くしてジェレマイアという名の男の子を産んだ”少女”のような母親サラ・・・次々と男を変え、ドラッグに溺れていくサラに里親と幸せな生活から引き離され、共にあちこちを転々とし、やがて自らも男娼となって街を彷徨う主人公ジェレマイア。散文調で本はなかなか読みずらいため、実はまだ中途なのですが(汗)、最近映画のほうを先に見ました。


ダメダメな母親であっても愛情と愛着を持って慕う子供の姿に一筋の光を感じます。続編も作られる予定だそうです。リロイ氏は映画の公開にあたって日本に来日。成田空港に降り立った瞬間になんともいえない安堵感に包まれ、偏見を持たず真剣に映画や作品について聞いてくれる日本人に感動を覚えたそうです。


■2017.5.7追記:10年前に日本のバラエティ番組「世界仰天ニュース」でも特集されたように、「JT.リロイ」は、アメリカ人女性ローラ・アルバートが生み出した架空の少年作家であることが判明しました。稚拙な嘘に世界中が騙された、という驚きの事件で、最近ではそれを題材にまた映画(「作家、本当のJT.リロイ」)が作られてます。一体、何が真実か分からなくなりますが、ここまで出来すぎてると怒る気にもならず。


サラ、いつわりの祈り (BOOK PLUS)

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サラ、神に背いた少年 (BOOK PLUS)

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サラ、いつわりの祈り [DVD]

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  こちらが映画のDVDです。

(3)ぬいぐるみを檻に入れられて

 だいぶ昔に読んで大泣きの嵐だった小説。これも実話を元にしております。確かタクシーの運転手となった作者がひょんなきっかけで自分語りをしたところ、「本にした方がいい」と薦められ書いた作品、とあとがきにありました。


主人公ジェニングスがぬいぐるみを抱えてあちこちのホームを転々とするのですが、様々な困難に耐えに耐え続け、あまりにもいじらしくて抱き締めたくなります。最後はなんとかハッピーエンド、私的に絶対に手放せない一冊となってます。


 ※原作:
www.amazon.com


ぬいぐるみを檻に入れられて

ぬいぐるみを檻に入れられて

(4)子供たちはどこにいる

 ミステリー作家クラーク女史の初期の頃の作品です。これはサスペンス小説なんですが、とにかく面白い!以前に精神を病んで二人の実子殺しの嫌疑をかけられた主人公ナンシーが、再婚してもうけた二人の子供達。最愛の子供達がある日突然、行方不明になり錯乱状態に陥るナンシー。やがて彼女は周囲の人間達から再び疑惑の目で見られ、追い詰められていきます。


 クラークの作品は、複数の個性的な登場人物が同時進行で物語を進めていくのが特徴的です。彼等の何気ない行動が、見事に組み合わされて、ラストまでハラハラドキドキのスリリングな展開をみせていきます。この小説のラストもあっと驚く大どんでん返しが待っております。


 この作品と双璧となる、少年誘拐事件を扱った『誰かが見ている』もまるで映画の世界のような*1とても写実的で映像が浮かんでくるような面白さでした。現在は長編が多く、これら初期の作品の手法をそのままに大きな世界を作り出してる作者ですが、少々荒削りでも迫力満点だったこの頃の作品が大好きでした。


 ※参考:権田萬治ホームページ Mystery&Media [ ミステリー ] アメリカミステリー散歩・11


子供たちはどこにいる (新潮文庫 ク 4-2)

子供たちはどこにいる (新潮文庫 ク 4-2)

誰かが見ている (新潮文庫 ク 4-1)

誰かが見ている (新潮文庫 ク 4-1)

*1:実際に映画化もされているようです。