BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

世界初録音されたボーイソプラノ アーネスト・ロウ

アーネスト・ロウ

アーネスト・ロウ(ERNEST LOUGH 1911/11/11〜2000/2/22)というボーイソプラノの名前を知ったのはかなり前のことだと思います。しかし、実際にその歌声を聴いたのは、それからだいぶ経って中古レコード店で彼のソロLPを偶然見つけたからです。


その後、現在に至るまで彼の復刻盤CDがかなり発売されるようになったのでむしろ、アーネスト・ロウという少年は以前よりずっと身近に感じるほどです。


ロンドン生まれのアーネストは、The Temple Churchで(水曜を除く)毎日に歌を歌っていたそうです。そこで次第にボーイソプラノの名声を高め、1927年に15歳でアルバムを録音しています。ボーイソプラノのソロアルバムとしては世界最初*1かもしれません。


もちろん、古い録音ですので当初はSP盤で発売されていたと推察されます。LPで初めて聴いた時も、やはり録音状態の悪さが気になりました。オリジナル音源に雑音がかなり混じって、歌声も篭った感じ。


それでも、彼の歌声には何か言葉にならない”ストーリー性”のようなものがあって、まるで時を越えて語りかけてくるような味わいがあり、心を揺さぶられてしまいました。それはただ古い録音だから、とか歌ってる本人がもはやこの世にいないから、ということだけでなく、何か80年前のロンドンの空気までその声から漂ってくるような言葉にはできない強い魅力と深い余韻があったからです。


何かどうしようもなく懐かしいような、そんなサウンドに「自分はもしかして前世にこの世界にいたのではないかしら?」とさえ感じてしまいます。


とりわけ、「Hear Ye Israel(ELIJAH)」のソロにはいつも魂を持っていかれ、涙がこぼれそうなほど感動してしまいます。この曲は、ちょっと憂いを帯びた声質で歌われるとグッとくる(笑)ので、生で聴いたウィーン少年合唱団の'96来日組のクリストフ・リスト君の歌声も大好きなのですが、また違った意味でアーネストは、私のルーツかもしれません。


くぐもったモノラル録音ではあっても、アーネストの”上品な”歌声を感じ取ることができるのですから、実際の彼の実力はもっと素晴らしかったのだろうと想像できます。クラシカルな録音の場合、意外と可愛らしい素朴な歌声が多い気がしますが、アーネストは、声は少年そのままであっても、歌い方がどこかしら大人びていて、小さな紳士のようなムードを感じさせます。


そして、現代の技術力や素晴らしい歌の技巧とかそういうものだけでは決して作り出せない独特の”歌心”があって、すっと心に染み入ってしまうのです。幸いなことに最近発売されているCDでは、ノイズ除去の技術も駆使されており、相当品質の良い録音となって驚嘆させられました。100年経っても、永久に残って欲しい歌声です。



歌う姿はさすがに残っていなかったのが残念ですが、当時のアーネストを知る人達が語るドキュメンタリーがありました。息子のROBINさんも登場しています。


Hear My Prayer

Hear My Prayer

 中盤以降の音質がかなり良好で、まさに歌声が生き返った感じです。

鳩のように飛べたなら(1927-1938)

鳩のように飛べたなら(1927-1938)

 最新盤。'38年までとあるのでバリトン時代の歌声も収録されているのかしら?

*1:復刻盤アルバムジャケットには、”The most famous choirboy in the world”の紹介文があります。