天才子役のその後は・・・
私が一番心を動かされた子役と言ったら、ジャッキー・クーガン(Jackie Coogan 1914/10/26〜1984/3/1)を外すわけにはいきません。チャップリンの『キッド』の名子役です。
この100年あまりでも少年子役と言えば彼が筆頭と言っても過言でないほど、全世界で愛され、亡くなった後もスクリーンで永遠に輝いているのが凄い、と思います。
浮浪紳士チャーリーに拾われ、実の親子以上に深い結びつきを持ったKID役。時には養父の相棒として窓ガラスを割るやら、怪しい商売(笑)を展開するのですが、その時々で見せるジャッキーの演技は無声映画というのを忘れるほど表情全てが生き生きと輝き、動作は敏捷、人を魅了しないではおかないのです。
初めてこの『キッド』をテレビで見たときには、もちろんストーリーでも泣かせられましたが、ジャッキーの演技力の凄さに感動を覚えたものです。
一世を風靡したであろう「この天才子役のその後は一体どうだったのか?」とだいぶ気になっていました。チャップリン没後の特集番組にフィルム出演した老ジャッキーは昔の面影が全くなく、普通のお爺さんに変貌していて驚かされたのですが、それでも知りたいという欲求は高まりました。
【 1冊の本から知る子役残酷物語 】
そしてそれ以後、『ハリウッドのピーターパンたち―黄金時代の子役スター物語』という本を読んだことでやっといくつかのエピソードを知ることができたのです。この本の著者は、ディック・モーアという'30年代のアメリカの人気子役です。彼が自分のルーツ(というか「魂の彷徨い」に近いのですが)を再確認したいがために、当時人気だった30名ほどの人気子役達にインタビューを試みたノンフィクション本です。
当然、あまりにも年代が古いため扱う子役の多くは、かろうじて名前程度で知ってるナタリー・ウッド、シャーリー・テンプル、エリザベス・テーラーくらいしかおりませんが、その中にジャッキー・クーガン*1の名もありました。
子役の残酷物語という副題があるだけあって、大恐慌時代に「子供は誰でもみんな子役をして親を養うものだと思っていた」などと語るほどに酷使された子役スター達。その”搾取された子供時代”は、とても痛ましいものがありましたが、わずか数年の間に100本以上の映画に出演するような人気子役達はその時代を映し出す”光”であり、大人たちの”夢”でもあったことが良く分かります。
またモーア氏の歯切れの良い語り口と元子役スター達の率直な発言の数々はユーモラスさもあってとても楽しく、今回久しぶりに読み返してみてまた尚、楽しめました。
ジャッキーは名だたる元子役スター達の中でもズバズバと歯に衣着せぬ毒舌ぶり(?)が目立ってます。またその生涯もなかなかに波乱万丈でした。当時からさすがに群を抜いて有名で、青年ジャッキーに憧れていた少女(子役)もいたり、その人物の関係図も想像すると面白いものがあります。
但し、子役達はステージママの影響で、役を取り合うライバル同士*2、友達同士にもなれず、まして恋愛なんてとんでもない!という状態で、交流はなかなか持てなかったようです。
ジャッキー・クーガン 驚きの生涯
- 8歳当時で週給2万ドル(もちろん最年少?の億万長者)
- 「キッド」撮影期間は1年間。その間、毎日曜日チャップリンが一緒に連れ廻った。*3
- 母親と買い物に出かけたら3000人の見物客が集まり恐怖を覚える。以後、ほとんど外出しなくなった。
- ジャッキーの名前の付いた様々なグッズが売り出された。
- 父親と数名で乗り込んだ車が大事故を起こし、ジャッキーのみ奇跡の生還。
- 母親がマネージャーと再婚し、二人でギャンブルなどに浪費。ジャッキーがそれまで稼いだ1千万ドルを全て使い切る。ジャッキーは母親達を告訴。最後は示談となり、ジャッキーには苦渋の結果となった。
- 私財を失った失意のジャッキーが、チャップリンにお金を借りに行く。その場で現金1万ドルの小切手を渡された。「チャップリンは、永遠の友達」と語るジャッキー。
- 成長後は次第に人気を失ったが、結婚や従軍などの経験を経て俳優業も続ける。
- '84年に心臓発作で他界した。
特に驚いたのは、母親とマネージャーを告訴した出来事です。結局、ジャッキーには巨額の富に対する何の見返りもなく、かなり悲惨な結果となりましたが、これを機に'39年、子供の財産権を守る<クーガン法>が制定されたということですから、その影響の大きさが想像されます。
しかし、このクーガン法にもまだ抜け穴があって当時、多くの子役が実の親にその財を奪われたということです。最近では、マコーレ・カルキンも彼の親権を巡って親が対立するなどトラブルに見舞われたのですから、根深い問題なんでしょうね。
スクリーンの上で信じられないような名演技を見せたジャッキー・クーガン。彼自身の生涯は、必ずしも幸せではなかったかもしれませんが、彼の死後もその演技は永遠に人々に感動を与えるのだと思うと、やはりその活躍には大きな意味があったのだと思います。最愛の子役の一人なので、まだまだ’クーガンへの道’は続くのです(笑)。
![キッド・コレクターズ・エディション [DVD] キッド・コレクターズ・エディション [DVD]](https://images-fe.ssl-images-amazon.com/images/I/21RMDJYGBZL._SL160_.jpg)
- 出版社/メーカー: 朝日新聞社
- 発売日: 2004/01/23
- メディア: DVD
- クリック: 9回
- この商品を含むブログ (31件) を見る

- 作者: Diana Serra Cary
- 出版社/メーカー: Scarecrow Pr
- 発売日: 2003/10
- メディア: ハードカバー
- この商品を含むブログ (1件) を見る

- 作者: ディックモーア,酒井洋子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1987/03/31
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 1回
- この商品を含むブログ (3件) を見る