BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

来日ソリスト列伝 グレゴール・バウエルンシュミート

印象的なボーイアルト

グレゴール

このコンサートではいくつかの輸入盤CDが販売されていたので手にされた方もいらしたと思いますが、「ヨハネマタイ受難曲ペルゴレージスターバト・マーテル」のソロをとっているグレゴール・バウエルンシュミート(Gregor Bauernschmiedt)君について少し書かせていただきます。


彼は'93年来日時、アルトソロで活躍しましたが、その表現力の素晴らしさに大変感動させられた忘れがたいソリストです。テクニックに優れたソリストは何人か目にしてきましたが、グレゴール君はテクニック以上に彼本来の歌心を曲にのせる術を身につけている稀な歌手だったと思います。


真面目でそれでいてどこか艶っぽい声、聴くほどに心の奥深くまで染みとおるそのアルトで「オンブラ・マイ・フ」や「エリア」などを歌ってくれました。その歌声は、CDの中に変わらず残されており、二重の喜びとなりました。当時の思いを書き留めたノートには、

一生懸命に丁寧に心をこめて歌う少年で、久しぶりにソリスト然とした少年に惚れ惚れした。1人、前へ歩み出て一呼吸おき、(変声期が近いのだろう)歌い始める姿に燃え尽きる前のろうそくが思い起こされて何とも言えない高貴さに胸打たれた。

と書いてありました。少年の持つ広がりのある瑞々しい感性を実感したものです。


'97年の来日公演の模様はBS2でも放送されましたが、ホールでの演奏だったのでカテドラル教会で聞いたような味わい深さはだいぶ薄まってしまいました。音響の良さと独特のムードというのが実力以上に演奏を素晴らしくしているのは否めませんが、聖フローリアンはどちらかというとホールで聴くには不向きな少年合唱団ではないかといつも思ってしまいます。


それにしても今でも目の前にグレゴール君のひたむきに歌う姿が浮かんできて、ああいうソリストにまた会いたいと願う自分がおります。


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