BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

映画「櫻の園」の淡い恋心(女×女編)

現実か幻想か、その曖昧さが心地良い

'90年に製作された中原俊監督の映画『櫻の園』は、見始めた時から胸のときめきと懐かしさでいっぱいになりました。この映画は、吉田秋生の同名少女漫画が原作*1で、女子高の演劇部がチェーホフの「桜の園」を演じる文化祭当日の数時間の出来事を描いています。

 

あらすじ:優等生で演劇部部長の清水(中島ひろ子)は、同じ部内の長身で綺麗な倉田(白島靖代)に仄かな憧れを抱いてる。普通の子ばかりが集まる演劇部からちょっとだけ異分子で浮いてる、杉山(つみきみほ)がその前日、煙草で補導されたことで文化祭への参加が中止になるかも・・・と浮き足立つ部員達。当日、校則違反のパーマをかけてきて、ちょっぴり反抗的な態度をとる清水、緊張のあまり落ち着きを失っている倉田、そして杉山の真実の想いを包みこみ、もうすぐ『櫻の園』の上演が始まろうとしている。

 

この3人を軸に映画は、”少女達の青春群像”を生き生きと描いていきます。単なる女子高生への過剰な思い入れ(笑)で失敗している映画が多い中、『櫻の園』のリアル感は群を抜いていました。

 

私が本作の中で一番、自分と近い分身に感じたのが部長の清水さんでした。何せワタクシも女子高出身。映画のように演劇部ではありませんでしたが、可愛い女の子が身近にいっぱいいた環境(笑)でしたし、倉田さんのように「宝塚の男役」を思わせるカッコよい同級生がおり、憧れやトキメキを感じていましたから、清水さんの気持ちは痛いほど伝わりました。

 

少女独特の潔癖さと裏腹に、大人の階段を登ろうとする未成熟でちょっとばかり混乱している年代の空気感がこの映画のあらゆるところにまぶされていて、(甘酸っぱい郷愁に誘われ)何度も泣きそうになりました。

 

清水さんが、自分と正反対の杉山さんに自然と心をさらけ出していく様子、倉田さんへの想いが言動になってほとばしる瞬間、そのささやかで、不器用で、だからこそ純粋で愛おしい一瞬、この映画ではそんな奇跡的な美しさの数々が濃縮されていました。

 

今の高校生が見たら、「乙女チックすぎて漫画だよ〜」ってお笑いになるでしょうか?しかし、恋とも呼べないような淡い憧れ、を知らずに生きてきたとしたらなんとももったいない。あの頃の未成熟な自分を「なんか可愛かったな、自分も」と思えるからこそ、今のすれっからし(?)の自分とも付き合っていける、なんて思ったりします。

 

この映画のクライマックスの素敵さ、はちょっと他に例を見ないほどです。この瞬間、何故か不思議な解放感がありました。メインの3人の女の子の気持ちのそれぞれに感情移入できましたし、過去の自分を振り返ることもできたし、何より「可愛いなー、女の子って」(笑)的な愉しみ方もできました。綺麗な映画を見たい方には是非お薦めの一作です。
 ※ストーリーブック兼写真集の大型本まで購入してしまいました。制服も可愛いんです。

 

■予告映像はこちら → Sakura no Sono - YouTube

 

櫻の園【HDリマスター版】 [DVD]

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リマスター版発売されたようですね。(ブルーレイなら嬉しいのですが)本当に甘酸っぱい感動が詰まってます。

 

*1:漫画も読みましたがちょっとニュアンスが違って感じられましたね。櫻の園 白泉社文庫