BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

来日ソリスト列伝 クリストフ・リスト

ウィーン少年合唱団'96年来日組

ウィーン少年合唱団を始めとする少年合唱団の来日メンバーの中で特に気に入ったソリスト(ソロ奏者)を取り上げたいと思います。コンサートに通いまくっていた主に'90年代がメインで、しかも不定期更新となります(笑)。


まずは、年代を追って・・・と思ったのですが、ウィーン少年合唱団については、無作為・思いついた順にいこうかと方向転換しました。ウィーン少年合唱団は、'98年組までテレビ朝日系列で公演の模様*1を放送しておりました。


しかし、貴重な来日公演はこの後放送されなくなり、そのため来日公演の印象も薄まった感があります。最近は、プログラムそれぞれ1回ずつしか足を運ばないため、よほど印象に残らないと「あれ、いつのことだったけ?」みたいなことになってしまいます。


'98年のアルトのオットー・ヤウス君や'00年アレックス君、'02年のペーター君なんかもなかなか優れたソリストだったのですが、オットー君以外は映像が残ってないのがつくづく残念です。


ということで私の中で印象に残ったソリストは、'96年のクリストフ・リスト(Christoph List)君から始まります。しかし来日時点で第一ソプラノは彼ではなく、ほとんど「ファルセットじゃない?」と思われる成熟したアレクサンドル・ナーダー君でした。


アルトのハンス=ユルゲン・クロイター君は、古風なタイプのアルトソリストでこの組の中では目立っていたと思います。*2


'96年組は全体的な組の印象は、過去最悪でした。とにかく歌の実力(これもあまり良いとは言えませんでしたが)よりも何よりもマナーが悪く、特に中盤以降の公演では不快感すらありました。公演中の私語や注意散漫な団員もいて、ウィーン少年合唱団の何かが変わったな、と強く思わせられた年代でした。


もちろん、これは指導者の力量不足が一番だとは思います。それでも、寄宿舎生活をさせようと問題児を送る親が居て困ってる・・・などという裏事情も何かで読んだことがありますし、現在に至っても慢性的な子供不足で世界各国からの入団を許しているようですから、質の低下はジワジワと世界有数の少年合唱団を悩ませているのかもしれません。

【 出会いは1曲の衝撃から始まった 】


その中で私がめっぽう惹きつけられたのは、小柄な、雰囲気もどこか地味な(笑)クリストフ君でした。それは、初日の"Hear, ye Israel”のソプラノ独唱にやられてしまったのがきっかけです。繊細だけれども伸ばした高音がピーンと張り詰めてて、まさにボーイソプラノの魅力そのもの。


おまけにこの哀調を帯びた曲とクリストフ君のもつ独特の憂いを帯びたような高音がマッチして鳥肌ものでした。合唱の中でも時折、ハッとする美しい声は彼のものであり、あと1年遅かったら・・・と早い来日を惜しんだものです。


最近、DVDで再販された「天使のうたごえ」では、オペレッタの『村の床屋』でズースヒェンという村娘役を演じてます。残念ながらソロは少しカットされてましたが、可憐な女の子として彼の姿を今も楽しむことができます。


まだまだ、声量も弱く、誰もが認めるソリストではないと思いますが、あの憂いを帯びたソプラノ声は私の中で強烈な印象を持っており、かなり熱烈に愛しているソプラノです。


その後、偶然にも同年9月にウィーンの楽友教会ホール*3での定期コンサートを見る機会があり、メンバーが半分以上変わった来日組のメンバーを見ることができました。


夢のコンサート、と楽しみにしていたのですが、実際は各国の観光客の団体客ばかりでその人達のマナーがあまりよろしくなく、「これなら日本で聴いた方がずっと楽しめるかも・・・」と思いました。


それでも、クリストフ君が半年前よりははるかにソリストらしくなってて(第一ソリストになっていたようです)誰よりも声を響かせて歌っていたのには感激でした。そんなクリストフ君、プライベート盤のCDを出したことまでしか知らず、他にソロの録音を残してないのか、未だに気になっております。


天使のうたごえ [DVD]

天使のうたごえ [DVD]

'96年組来日公演のライブビデオです。今はプログラムから無くなってしまった、オペレッタ『村の床屋』(抜粋)が収録されてます。

アウガルテン宮殿への道 ウィーン少年合唱団とともに

アウガルテン宮殿への道 ウィーン少年合唱団とともに

日本人ハーフの少年が団員として活躍する様子を母親の目から綴った興味深い手記です。

*1:合間にウィーンでの寄宿舎生活、日本での印象的なエピソード、団員へのインタビューなど

*2:アルトに歌える少年が居る時は、決まってオペレッタが『村の床屋』。これには参りましたが・・・(笑)

*3:ウィーンフィルニューイヤーコンサートで有名な黄金のホールではなく、同じ建物内のもっと地味なホールでした。