一方でもう一人、”神童”と言われた日本人ヴァオリニストがおりました。その名は、渡辺茂夫さん。茂夫さんのことは、著名人の生い立ちを取り上げる番組で知りましたが、非常に悲劇的な人生を歩まれた方でした。父の季彦さんに幼少時期から特訓を受け、国内で「神童」と評判になります。
'50年代には演奏会などで活躍し、その才能を認められ、14歳で米ジュリアード音楽院へ無試験入学(アメリカ留学)するも、16歳で自殺未遂、その事件で脳に致命的な障害を受け*1、そして数十年の闘病生活の後、他界されました。
その後、彼の人生をまとめた本を読み、復刻されたCDを購入しました。久しぶりにそのCDを聴き返してみましたが、その卓抜な”技巧”より、まるで彼の”心の叫び”が凝縮されているような生々しいヴァイオリンの響きが胸に訴えてきます。
「神に選ばれた少年」が辿った痛ましい生涯でしたが、短い演奏人生の中でも家族や多くの人達に愛された、一人の音楽家の尊い歴史だったと思いたいです。せめて、未来の音楽家達には、苦しみより喜びの多い日々がありますように・・・。
■2006.5.20追加情報
渡辺茂夫さんの貴重な録音が2枚続けて発売されます。
blog.goo.ne.jp
ozekiaさんのブログで、渡辺茂夫さんのTVドキュメンタリーの話が連載されています。とても詳しく興味深い内容です。
- アーティスト: 渡辺茂夫,メンデルスゾーン,クライスラー,ショパン,ビエニアフスキ,シューベルト,サラサーテ,タルティーニ,東京交響楽団,東京フィルハーモニー交響楽団,田中園子
- 出版社/メーカー: EMIミュージック・ジャパン
- 発売日: 1996/07/24
- メディア: CD
- 購入: 1人 クリック: 12回
- この商品を含むブログ (6件) を見る
- 作者: 山本茂
- 出版社/メーカー: 文芸春秋
- 発売日: 1998/12/10
- メディア: 単行本
- この商品を含むブログ (7件) を見る
*1:二度とヴァイオリンを演奏することも自他を認識することすらできなくなりました。