BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

テノール歌手、ペーター・シュライアーのボーイ・アルト時代

sugiee2005-06-18

私がウィーン少年合唱団に興味を持ち始めて地元のレコード店のクラシック売り場でLPを物色していた'80年頃、とても気になる1枚のレコードがありました。


ジャケットの半分にクラシカルなモノクロ写真の少年、そして残り半分に声楽家と思われる男性歌手の写真。その時は何度も手にとって悩みつつ、買うのをためらってしまったものです。その後、だいぶ経ってそのレコードがCD化され、更に数年後、輸入盤でも復刻CD化されると今度はためらうことなく、即購入しました。


その少年こそが、世界に名高いドイツのテノール歌手、ペーター・シュライアー(PETER SCHREIER)のボーイ・アルト時代の姿だったのです。ボーイ・ソプラノと異なり、ボーイ・アルトというのはなかなか地味な存在(?)でCDが発売されるというのはかなり稀なことだと思います。


素晴らしいボーイ・ソプラノが100人いたら、優れたボーイ・アルトは1人くらいの比率になるかもしれません。いえ、もちろん、優れた声を持ったアルトの少年は多いと思いますが、どうしてもボーイソプラノに比べると分が悪いのでしょうね。ですので、'50年代というかなり古い時代にCDが出せるほどにソロを歌い(しかも比較的録音状態も良い)、今に残るというのは当時、相当評判のボーイ・アルトだったのではないでしょうか。


この音源は、モノラル録音に近い感じで、本当の実力のほどは伝わりづらいと思いますが、当時ドレスデン十字架合唱団の団員だったペーター・シュライアー少年時代の歌声は、この合唱団が今に変わらず持ち続ける素朴で温かい響きを内包してます。とても堅実な歌いっぷりですが、ちょっとふわっと持ち上がるようなソフトな声質で、古風な七三分けの少年が楽譜を手に歌っている姿が目に浮かぶようです。


選曲もいかにもドイツ系らしくかなり地味め(汗)ですが、朗々と響くペーター少年の歌声を聞いてると、何故か妙に懐かしい気分になります。戦後の復興期*1に現れたボーイアルトの少年はきっと人々に生きる活力を与えたのではないか、などと想像したりして。


昨今、3大テノール歌手、パバロッティも引退を表明しましたが、シュライアー氏も引退とのことです。テノール歌手としての魅力と偉大さは、私には専門外なため(笑)あまり分かりませんが、一時代を築いた方達の引退はやはり寂しいものです。


Boy Alto Dresden Kreuzchor

Boy Alto Dresden Kreuzchor

この趣き深いジャケットもお気に入りです。ちょっと今は聴けないタイプのボーイアルトじゃないかな。

*1:ドレスデンは、”エルベのフィレンツェ”と呼ばれたほどの美しい都だったそうですが、連合軍の爆撃で大被害を受けました。