アウグスブルク大聖堂聖歌隊の思い出 - BOY’S VOICE　新・永遠の少年たち

再会が待たれる少年合唱団

'92年に日本に初来日したアウグスブルク大聖堂聖歌隊。とてもお気に入りの少年合唱団です。ドイツには、ウィンズバッハ少年合唱団などのように非常にテクニカルな合唱団もありますが、アウグスは、α波がいっぱい出ているような（笑）綺麗で優しいハーモニーを聴かせてくれます。

真っ赤なベストが目に眩しい上、ちょっとばかし粋な美少年揃いの合唱団ということも強く印象に残りました。'80年代にシリーズで出されたアルバムを初めて聴いたときは、ソリストもなかなかに粒揃いでちょっと驚きました。

来日の時には、「マタイ受難曲」をソロもアウグスブルクの団員で歌ってました。彼等の公演で感心したのは、アルトソリストの充実ぶりでした。身体の大きさに関わらず、とても重みのある大人びた声をした良いアルトが何人も居て、ソプラノに引けをとらず聞き惚れる状態だったのです。

指揮者のラインハルト・カムラー氏は非常に音には敏感なようで、客席で子供が騒いでいると演奏を始めないような方でした。少年達の集中力と優れた演奏を引き出すのはこの厳しさがあってのことなのでしょう。また是非来日して欲しい合唱団の一つです。

【独アウグスブルクでのハプニング】

実はアウグスのメンバーの演奏は、その２年前に現地ドイツで聞いておりました。ドイツ旅行の中継地点として、アウグスブルクに寄り、たまたまこの聖歌隊を知り、運良く大聖堂の中で「夕べのコンサート」を聞くことができました。この時の感動は、とても言葉にできそうにありません。どんな一流のコンサートホールでも敵わない、大聖堂の響き。

天から天使のソプラノが降り注いでくる！こんな体験は子供の頃から夢に見たものでしたがまさに想像以上でした。。残響音があんんなに長く残るなんて・・・。少年達が何を歌ったのか、それすら思い出せませんが、あの日の演奏は一生涯忘れられない宝物です。

そんな感動に打ち震えていた私ですが、コンサート終了後、人並みがある建物に向かっているのに気付き、「なんだろう？」と付いて行ってしまいました。丁度、大聖堂の裏手にあるなんだか小奇麗な建物に人々が吸い込まれるように入って行くのです。

歌い終わった少年達も一緒で、「何かイベントでもあるのかな？」と好奇心に駆られ入っていくと、館内の人に親しげに挨拶を交わして、コートを預けたりしてる人もいます。

特に誰に止められるわけでもないのでそのまま階段を上り、とある小さな一室に入っていきました。そこには椅子も半円形に並んでいて、ドイツ人でいっぱいになってます。ちょうど一つだけ空いてる席を見つけ、座りました。雑然とした中でしばらく時間が流れました。

団員達も、何人かあちこちの席にいたり、床に座り込んだりと、妙にくつろいでます。すると私の隣のオバさんが突然、「日本人がいるわ」とケタケタ笑い出しました。片言のドイツ語は分かったのでその意味は分かったものの次第に「これはマズイかも・・・」と冷汗をかいてきた私は、ひとまず”言葉の分からない外国人”に徹しようと決めました（笑）。

そしてしばらくすると電気が消され、一枚のスライドが降りてきました。其のあたりから記憶が飛んでますが、このスライドにいくつもの写真が映し出されていったのです。その写真は、全くプライベートなもので、団員達の食事風景あり、様々な名所の写真有り、そこでふざけた団員達の顔のドアップなどがあれば、周り中、大笑いが起こりました。

そう、実はこれはアウグスブルク大聖堂聖歌隊がヨーロッパやイスラエルなどの海外公演に行った後の記念写真の上映会＆写真の即売会だったのです。そして周りにいる方々は全て少年達の父兄だった！わけです。完全なる部外者の私がこんなところに紛れ混んでるなんて・・・（大汗）。今でも思い出すと身震いがしちゃいます。今となると時効（？）でしょうが、あの時は本当に失礼致しました（ペコリ）、ということで。

それにしても貴重な経験だったのでもっとしっかり見ておけば良かったわ（笑）、なんて今となると思いますが旅のハプニングとしてはなかなかの一夜でした。団員達とその家族もまるで修学旅行から戻った日本人学生と同じようなことしてるんだなー、と思うとなんだか可笑しくなったり。

しかし、その後、アウグスブルク大聖堂聖歌隊のパンフなどを見て、私の乱入した教室が団員がいつも歌の練習をしてる音楽室だと知った時はなんとも複雑な思いがしました。アウグスブルク大聖堂の公式ＨＰで左端に写っているこの建物が、実は彼等の寄宿舎でもあったのです。それにしても

　まったく人間、知らないってことは恐ろしいものです。