来日ソリスト列伝　ゲオルク・ニグル - BOY’S VOICE　新・永遠の少年たち

超個性派のソリストとの再会

sugiee2005-05-23

なにやらベタなタイトルになっておりますが（汗）、ウィーン少年合唱団の中で私が最愛のボーイソプラノ・ソリストは、'83年と'86年に来日したゲオルク・ニグル（Georg Nigl）君です。'83年が初めて生の公演を見に行った年でしたので、パンフレットを穴の開くほど眺めておりました。

ゲオルク君を最初に写真で見た時は、「あの時、来日した子だ！」と即、判別できました。ウィーン少年合唱団は当時３年に１回の来日だったのですが、同じコーア（組）が来日することはほとんどなかったため、初めはどうしてゲオルク君が混じっているのか不思議でしたが、それはソプラノ・ソリストに成長していたため、組のバランスを考えての異動処置だったようです。

現在よりも公演回数ははるかに多く、全国各地を４ヶ月にわたり、およそ６０公演ほどの膨大な公演をこなすには、それだけ優れたソリストを要したのでしょう。また、オペレッタ（歌劇）も２種類用意され、そのヒロイン役などは大概相当な技量を必要とするため、「歌えるソリスト」が必要だったのでしょう。このあたり、昨今の来日ソリストには不足を否めません。（すでに辛口）

【一生の悔い】

ゲオルク君の公演は訳あって観に行くことができませんでした。いまだに「一生の悔い」です。'98年まで来日公演はテレビ朝日系で放送されていたので、それで見るしかありませんでした。そしてそれがゲオルク君の歌声に出会った強烈な体験でした。

彼のソプラノはかなり特徴的で、聞いた誰もが言うように＜鋭角的なソプラノ＞です。好き嫌いは大きく分かれると思います。もとより、個性派大好き！を自認している私には最初からゾクゾクとする声でした。

宗教曲でソロを取り、「ラウダーテ・ドミヌム」を歌った時のあの輝くばかりの誇りに満ちた顔を忘れることはできません。ソロとなると萎縮してしまう少年も多い上、初日に限りなく近い頃に録画されている公演ですので100％の実力を出し切ることすら難しいのにわずかばかりの緊張を見せつつも、なんともウットリとしながら（自分の声に、だと思いますが（笑））歌いきりました。

その後のオペレッタはもうゲオルク君の独壇場！ヒロインの女性になり切って、恋人に向ける視線はすでに男の子ではなく、ちょっぴり色気すら振りまいててその演技力にまた一段と惚れました。（女性役というのはなかなか照れるものだと思うのですが、'80年代までの団員達はノビノビ楽しそうに少女になりきって演じていたので演技力だけでも太鼓判でした。）

恋人役はゲオルク君より頭ひとつ小さいミヒャエル・シュビンデンガー君。この凸凹コンビ（笑）がどちらも鋭い独特のソプラノボイスだったので不思議に溶け合って味を出してました。個性的な二人のソリストを伴っての来日なのでハーモニーの美しさでは、ファンの間でも賛否両論だったようでしたが、それだけに「好きな人はたまらなく好き」な味のあるコーアになっていたと思います。

ゲオルク君は、現在でもウィーンで歌手として歌っているとのこと。'80年来日のミヒャエル・クナップ、'89年の超技巧派マックス.E.C.という伝説のソリスト達もやはり歌手として歌っているそうです。あれだけ歌うことの喜びを表現しきってた少年達だからこそ、だなと納得できます。この二人のこともまた後ほど取り上げたいと思います。

ゲオルク君の代表的な録音としてモーツァルトの歌劇『バスティアンとバスティアンヌ』はイチオシ作品です！バスティアンヌ役のドミニク・オリーシュニヒ君の可憐さと上手さも絶品ですが、恋人に責められて能天気に（笑）登場するゲオルク君が最高に楽しく、お気に入りの一枚となってます。」*1他にも「ハイドン／大オルガン・ミサ」（ミヒャエル・シュビンデンガー君のソロも有）があります。

◆30年ぶりにバリトン歌手として来日した二グル君のインタビューです。
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