BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

「ぼくのバラ色の人生」のとびきりピュアな世界

何故、こんなに泣けるんだろう?

1997年にベルギー・フランス・イギリスが合作した映画『ぼくのバラ色の人生』は、日本で翌年に公開されました。私は、初日の最初の上映に駆けつけ、胸を高鳴らせていた見ました。

 

この映画は、性同一性障害の少年を描いたストーリーです。主人公リュドヴィックは、周りの人々(自分の家族も含めて)の差別や偏見によって心を傷つけられながらも、「自分はいつか女の子になる・・・」と信じている7歳の少年。

 

女の子のようなセミロングの髪型(撮影時は、地毛ではなくカツラだったそうですが)をしてピンクの服をまとうと、一瞬、「本当に女の子?」と信じてしまうほどの可憐さです。

 

何の疑いもなく、サッカーよりお人形が好き、クラスメートの男の子と結婚したい、とも思ってるリュド。こんな少年の純真さが周りの大人たちを困惑させ、家族の平安まで乱していく。父親は失業の危機に合い、母親はノイローゼ寸前まで追い詰められ・・・とテーマ性からすると暗くなりがちな物語をたまげるような(笑)カラフルな色調や楽しい音楽を交えながら、生き生きと描いていきます。

 

この映画を見たとき、私は映画が始まってすぐからリュドヴィック(ジョルジュ・デュ・フレネ)のいたいけな表情に、全編泣かされっぱなしでした。多分、人生で一番泣いたのではないか、と思う映画でした。それはおそらく、映画の中のリュド少年が自分の幼い頃の姿に重なるものがあったためでしょう。

 

もちろん、リュドのように本気で女の子(自分の肉体と異なる性)になる!という強い意志があったわけではないのですが、女の子らしく振舞うことが幼い自分にとってほとんど意味がなく、男の子になりたかった(少なくとも男の子のように生きたかった)と思っていた幼少期を持つ者としては、周囲の無理解に対するリュドの悲しみや居心地の悪さというのはストレートに胸に響いてきて、言葉の端々で涙が止まらなくなったのです。

 

結局、後天的(笑)に女になっていった私にとって残ったものは、自分の失った性=「少年性」という架空の世界を追い求めることなのかも、とふと思うことがあります。(ちょっとこじつけかな?)私のように過剰に反応しなくても(苦笑)、この映画は充分魅力的で、何度見ても楽しめます。

 

普通、当たり前だと思ってる男女の違いとか世の中の思い込みの理不尽さ、なんかもさり気なく描き出してくれますし、ラストのちょっと皮肉な終わり方もクスッと笑いを誘います。当時来日したジョルジュ少年はインタビューに対して、

 

「僕はリュドのように女の子になりたいとは思わないけど、もし彼みたいな子供がそばに居たら分かってあげられると思うよ」


と、実に素敵な発言をしてました。 本当にお薦めの映画です!

  

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