BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

ウィーン少年合唱団 2014山形公演

2014年のウィーン少年合唱団の来日公演ツアーも終わりに近づいてきました。すっかり遅くなってしまったことは否めませんが、5/28の山形公演に行ってきましたので、記憶から呼び戻して(笑)書いてみようと思います。


ウィーン少年合唱団の公演は、3年ぶりかな?とか思っていたら、なんと2009年以来5年ぶり!でした。そうでした、震災の年は来日延期でしたし、東京にわざわざ聴きに行かなくなったら、こんなに空いてしまったのか、と。ツアースケジュールの中に東北が入ること自体が少ない昨今ですからね。


今回は、山形県が2か所(翌日は、酒田公演)も入って珍しいなあ、と思いました。だいぶ昔に山形市にも住んでいたことがあったのですが、当時はウィーン少年合唱団なんてカスリもしなかったですし(笑)。梅雨の始まる前の猛烈に暑い山形に、懐かしさを覚えながら向かいました。


会場となった山形テルサホールは、山形駅前の真裏にあり、地元の友人曰く「再開発が中途で終わってしまって、ここだけ異次元エリアなの」ということ。確かに大きなホテルが立ち並ぶ中に、手つかずの公園でもない芝生なんかがあって、ちょっとお洒落な石畳っぽい道路とか、実に不思議なエリア。


ほんの5分ほど歩けば、最上義光伊達政宗の叔父であり宿敵でもあった武将)の居城であった霞城公園城跡があり、早めに着いたのでお堀の周りを散歩なぞして時間つぶししておりました。しかし、この日は初夏を思わせる本当に暑い日だったので汗だくになってちょっと疲れました。


牛田智大君のピアノ公演以来、訪れるのが2度目のホールでしたが合唱を聴くのは初めてのこと。800名程度の中規模ホールですが、音の響きはなかなかのもの。老朽化している某県民会館なんかよりもずっと音は良く、客席で何か物を落としたりしただけでも響き渡るくらいでした。宝くじ公演、ということでチケット代は2500円という破格の安さも嬉しかったです。


恐らくはあまり外国の少年合唱団などに馴染みのないと思われる、地元から集まったお客さんでホールは満員でした。会場を見渡すと高齢の方が多く*1、あと20年も経つと、こういう”古き良き伝統芸能”を継承していく客層はだいぶ減っていくだろうし、集客も相当厳しくなるだろうな、と感じたものです。

【盛り上がったコンサート】


さて、少年達の登場です。1曲目は、思いがけず客席後方からの登場に観客は早くも大拍手。通路を歌いながら移動して少年達のナマ声には、ちょっと感動を覚えました。壇上に見慣れた制服が並びますが、いろんな人種が混じっているので、かつてほどのドキドキ感はありません。


少年達は、2日前まで関西で公演していたようですから、飛行機で移動してきたのでしょうね、連日の強行軍と慣れない暑さに、どの少年も檀上でややぐったり気味の表情に見えました。最初の宗教曲は、明らかに疲労で集中力を欠いてる少年達が何人か見え、「大丈夫かいな?」と思いながら公演スタート。


まずは少年達よりも指揮の先生に目がいきました。ジミー・チャンというアジア系の先生。ピアノのとてつもないテンポと生き生きと生気に満ちた指導っぷり、異色の存在感に「この明るさは、ただの中国人じゃないよね、もしや香港人?」と思ったら、どうやら当たっていたようで内心ニンマリ。


国際色豊かになりすぎて、団員にしろ指揮者にしろ、アジア系は珍しくなくなったといえ、ウィーン少と香港人の取り合わせ、なかなか不思議で興味をそそりました。その熱情的でパワフル全開な指揮っぷりに、初めは生気のなかった少年達が、どんどん盛り立っていくのが見ていて分かります。


まあその分、1番の楽しみである宗教曲集は、ちょっと勢いありすぎて音の処理が「雑だな〜」と思ったのも確か。超お気に入りの「スタバート・マーテル」など、もうちょっと余韻を残してくれないと有難味ないなあ、と思ったりもしましたし。とても声が出てるコーアではあったので、ガーッと勢いのまま歌わせて、技術的に粗が出ないようなところで切っている気がしてもったいなかったです。


最近は、合唱団の本来の見せ場であるはずの宗教曲パートよりも、ジャズやミュージカル、世界各国の民謡なんかのほうがはるかに見どころいっぱいのウィーン少年合唱団。無国籍すぎて掴みどころないこともあるのですが、歌える子が揃うととにかく楽しいのは確か。「サウンド・オブ・ミュージック」みたいに何度も聴いてきた曲も、魅せるアレンジと相まってちょっと胸が震えるような美しさでした。


アンコールに歌ったのが、「アナと雪の女王」から”Let it Go”。うーん、予想よりあまりイイとは思わなかったですね。「風立ちぬ」の”ひこうき雲”とどっこいどっこいかしら。今を代表するヒットソングも歌うんだよ、ということですね。

【古風な趣のソリスト達が魅力】


「スタ・バト」で早くも登場したのが、ソプラノソリストフローリアン・E君(スラリと背が高く超美形)とアルト・ソリストルーカス・S君(メガネで額が広め)。アルトパートながら、なぜかソプラノソリスト*2としてもう一人、タミーノ君(「エーデルワイス」のギター演奏が素敵でした)も印象的でした。


一昔前のウィーン少を思わせる、古風な風貌のこの3人のソリストを中心として、ソロパート満載でした。他にも、「アレルヤ」ソロのヴィンセント君とジーノ君(個人的に一番好みの声だったけれど、ソリストとしてはこれからの子)も目に入りました。


とりわけ、アルトソリスト(主にルーカス君)があんなに活躍するとは、ちょっと嬉しい誤算でした。ウィーン少年合唱団というと、生気のないアルト、の印象がずっとあったので。ルーカス君は、落ち着いた高めのアルトボイスで、聴き飽きることのない声でした。かなり音楽的素養もある子という印象で、ピアノや指揮など見せ場が多かったですね。


今回の来日組は、元気があってかなり好き勝手歌ってる(笑)ソプラノパートに比べ、アルトパートが実に落ち着いた風格があって乱れることなく、そのちょっと古風な感じが気に入りました。とにかく楽しめた、のは間違いない。


時間の関係で、チロル風の民族衣装に着替えて、というようなシーンはありませんでしたが、制服姿のままミュージカル風に踊ったり、太鼓や民族楽器で演奏シーンを見せたり、2階からこだまのように歌ったり、と観客を飽きさせないサービスいっぱい。少年達も楽しそうでしたし、生き残りをかけた21世紀のウィーン少年合唱団は、「これはこれでいいか」と納得する部分もありました。


不覚にも「花は咲く」には泣かされました。一輪の花を持って、一列に並んだ少年達が歌うその姿はまさに国営放送お墨付き、とでもいうようなあざとい演出でしたけど、いざこの曲を東北の地で聴くと、本当に震災の記憶が甦って涙が止まらず・・・。少年達の素朴な日本語で歌われると、歌詞も胸に染みて染みすぎて困りました。


やってくれるぜ、ウィーン少(笑)。全体的に突き抜けた明るさと躍動感がある合唱で、とにかく元気をもらって帰ってきました。元気ついでに、セーラー服プリントがある劇団グッズのTシャツまで買ってしまいましたしね。これブルーの襟になってますが、もっと紺にして欲しかったなあ。


でも、これからも私は「こんなのウィーン少じゃない」なんて憎まれ口を叩きながら、またオタクを続けるのでしょう。そういう、あまのじゃくのファンもいたっていいじゃないかな。だって”過去の栄光”のウィーン少が、やっぱり一番好きなんですから。


boysvoice-2.hatenablog.com

*1:まあ自分も決して誇れるほどの若さはありませんが

*2:自分でもパンフレットでそう紹介してましたけど