BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

最高の贈り物が手元に!クリッパー完全復刻CD&全曲紹介

少年達の奇跡のハーモニーが今、甦ります!

クリッパーCD

それにしても、ブログを始めた9年前にこんな記事が書ける日が来るとは夢にも思いませんでした。2014年3月26日夜に待望のクリッパーのCDが届きました。何の因果か、超ハードな1週間だったため、余韻に浸ることもできず、やっと今、オールで聴き始めたところです。


今でも夢ではないかと半信半疑、といいますか。クリッパーのエントリを書くと、いつもより渾身になりすぎる(苦笑)私ですが、今回は夢に浮かれて全曲紹介書かせていただきます。シングル曲は、それこそ子供の頃から数千回は聴いてレコードが擦り切れていたくらいですが、針飛びのないCDのクリアな音で聴くと新しい感動に襲われます。


ちなみにメンバー構成は、(CDジャケット写真左から)長女ダイアナ、長男デニス、三男ウォーレン、四男ジョンジョン次男ノエルです。さて、長い長い全曲紹介をいざ!

1.BOY


 クリッパーという名前は覚えていなくても、この名曲を知ってる人は少しだけ多いようです。長男デニスボーイソプラノで歌われており、Youtube動画でも復活しました。クリッパーの作品の多くを作曲したのが、都倉俊一さんでしたが、彼の集大成アルバムにも「BOY」は、歌い手がほとんど無名な存在ながらも選出されました。*1


 全編に”幸福を運ぶ、透明な少年像”を感じさせる曲で、サビの「光を背にして髪は銀色 瞳の色は深い青さ」と続く描写もどこか牧歌風で詩的に響きます。愛の歌ではないのに、誰もがちょっと切なくなってしまうような一瞬のきらめき、それを愛でるような日本人的ワビサビを感じるんですよね。


 そこにデニスの一瞬のきらめきのようなボーイソプラノがまぶされていて、本当に奇跡的な美を感じさせます。シングルジャケットも美しく、子供心に遠い異国の田園風景を駆け行く美少年を浮かべて聴いていました。まだ、ボーイソプラノというものが何なのかハッキリ理解してなかった頃でしたが、それでも”あり得ないほどの美しさ”だけは感じとっていました。


しかしながら「BOY」は、完璧すぎて形容するのが難しい曲です。どうしたら、この素晴らしさを伝えきれるのか、毎度のことながら悶えてしまうのです。この曲の魔力のような生命力は、本当にスゴイの一言。純粋過ぎるからこその””がこもっている、といいますか。魂を惹きつけて離さないのです。


私的には、100年に一曲しか生まれないような傑作だと思います。そしてこの不滅の「BOY」という曲こそが、クリッパーを今に橋渡ししてくれたのかもしれません。優れた曲というのは、それ自体が一つの生命を持っていると思います。そして、それは誰が歌っても同じではない、”選ばれし歌手”が歌ってこそなのです。

2.あいつのストリート


クリッパーの記念すべき日本デビュー曲。この曲は、歌詞がちょっと”おませ”なんですよね。年上のイイ女「あいつ」に翻弄される若い男性の歌なんです。懸命に口説き落とそうとしていながらも、袖にされている健気で”イイコちゃん”な男の子が浮かんできます。ちょっとたどたどしいところがある日本語もご愛嬌。


'70年代の歌謡曲に多いパターンといいますか、フィンガー5の「個人授業」でも見られた、年上の女性教師にアタックする学生の姿に近いですね。日本経済が高度成長をしていて、子供でもイケイケだった時代というか(笑)、今よりももっと男女の仲が厳格で、”女性への憧れ”が逆に強い時代だったためなのかもしれません。


男子から女子へ「抱いてもいい?」なんて問いかけもあり、全般的にキワドイ歌詞が満載のこの曲、今だったらこの程度の曲でもPTAからクレーム入るかもしれませんね。これが、クリッパーの美しいハーモニーで歌われると、毒が抜けてちょっとクスッと笑えてしまうから可笑しいのです。当時、子供だった私ですら、なぜ優等生っぽい外見のクリッパーが「こんな曲歌うんだろう?」って、ツッコミまくりでしたけど。

3.悲しみの翼


能天気な「キャットマン・ディスコ」のB面に入っていたのが「悲しみの翼」。当時、明るい曲の反転で、暗めの曲をB面に入れてバランスをとるような場合が結構ありました。B面というのは、裏A面でもあってシングル候補曲だったりもするんですけど、逆にいろんなパターンを実験的に冒険することができる面もあったんでしょうね。


すべて八方塞りで、僕たちには悲しみしかない、ふたりに翼があれば・・・なんて、希望も何もないようなんです。でも、そういう自虐的な青春時代って、結構いろんな人が経験してる、成長痛でもあるんじゃないかしら。すっかり大人になった今は「それでも信じられる人が一人いればまだいいじゃん」(笑)って逆説的な幸せを感じるのですが。


この曲ではクリッパーの”泣きのハーモニー”を意識しました。でも、悲しい歌であってもどこまでも爽やかに聴けるのが、クリッパーの魅力。澄み切った青空へ、傷ついた翼で懸命に羽ばたこうとしている、という姿は一縷の希望を感じさせます。ソロはなくて、5人のユニゾンが最後まで続いていきます。

4.プリズムの午後


「BOY」のB面として何度も聴き返した曲ですが、当時はあまり好きではありませんでした。女性的な歌詞と落ち着いたトーンのバラードで、てっきりお姉さんのダイアナが歌っているかと思っていたのです。だいぶ経ってから、「ひょっとしてこれもデニスなんじゃないか?」と思って聴き返してみたら、まさにピンポーン!


むしろ、これがボーイソプラノだとしたら、デニスって「なんて恐ろしい子*2。あまりにも揺るぎ無い、完成された高音域なんです。「あなた」という呼びかけで歌われるこの曲は、恋人と一緒にいる時も、何か言いようのしれない悲しみに覆われている主人公が、その先に見える未来(別れ)を暗示して寂寥感に浸っているような曲と受け止めました。


主人公は男性とも女性とも受け取れるだけに、透明で哀愁を帯びた歌声が生々しさを消しています。そして儚げな歌詞とは裏腹に、非常に落ち着いた安定感のあるボーイソプラノで、同じようにこの曲を歌える少年が果たしてこの世にいるのか、と思うほどの独特の情感があります。しかも、フィリピン人の少年が歌っていながらも、日本語の世界観をしっかり伝えてくれるほど完成度も高いですし。


今にして思えば、本当に隠れた名曲ですね。この曲を濁りもキズもないクリアで聴けた喜びは本当に貴重で、涙ものの体験でした。デニスの歌唱力のすごさに改めて脱帽です。

5.OH!キョーダイ


デビュー曲「あいつのストリート」のB面。まさに姉弟で結成されたクリッパーをそのまま題材にした、騒がしい日常を感じさせる内容です。大家族ものを地で行くような、落ち着きのないバタバタした一家だけど、とても幸せ、という明るく楽しい世界観。


「ボクが出てこなきゃ うちはまとまらない わが家の王様はボクなのさ」のソロがデニス。後から実感したのが、私が最初に出会ったボーイソプラノがこの一節だったこと。「少年なのに、この高くてキレイな声は一体・・・!?」という新鮮な衝撃を受けました。ただ、この頃は曲の流れの中のちょっとした味付け程度に感じていて、その希少価値を知るのはずっと後でしたが。

6.キャットマン・ディスコ


空前のディスコブームという時代を反映したのがこの曲。大言壮語する割に、何もしないうだつのあがらない男、をおちょくってるような歌詞。それでも憎めない。いわゆる”ちょいワル”路線の曲ですね。


「そういわないで まあ見ていろよ」の渋いハスキーボイスは、私も大好きだった三男坊ウォーレン。メンバーの中でも日本人ぽい顔立ちで親しみがあったからです(ソロを歌う姿は、全然見たことなかったにも関わらず)。実際に、当時メンバー内で一番人気があったようです。でも、「あんたのバラード」を熱唱するような少年だったようで、そのキャラクターをファンからも愛されていたようです。


フィリピンに戻ってからの第2期クリッパーでは、メインボーカルも務め主力になっていったウォーレン。もっともっと彼の雄姿を見たかったなあ。

7.宇宙のファンタジー


映画『Be Cool』主題歌で、アース・ウインド&ファイアというグループの曲だそうです。当時のヒット曲カバーですね。曲についての詳しい内容は、下記のブログを参考にして下さい。

 ◆参考:【追悼 モーリスホワイト】Fantasy / 宇宙のファンタジー (Earth,Wind & Fire / アース・ウインド&ファイア)1977 - 洋楽和訳 (lyrics) めったPOPS


やっぱりこれもデニスのソロですね。まさに八面六臂、大活躍のデニス。優しく囁きかけるようなソロが素敵です。大人っぽいスキャットは、デニスかダイアナかな?

8.ディスコ・ダック & 13.ディスコ・ダック シングルVer.


こちらもリック・ディーズというアーティストのカバー曲。アルバムには英語版、シングルには日本語版が収録されており、どちらもあひるの口真似で歌っているのは、ひょーきんで愛されキャラの四男ジョンジョン。この曲を最後に、クリッパーは日本を去るのですが、その頃にはデニスも変声してきてボーイズグループとして、少年性を前面に出して存続していくのが難しくなっていたのでしょうね。


最近では、子供から少年アイドルへ息長く活躍するグループも増えてきているかもしれませんが、やはり子供時代のピュアなサウンドからの脱皮をするには、厳しかったのだと思います。あのフィンガー5ですら、あきらの変声期の壁を崩せなかったほどですから。まして祖国が日本ではない、育ち盛りの少年達では・・・。


口の悪い”ディスコ・ダック”を生き生きと歌っていたジョンジョンを想像しながら、なかなか次の作品が発売されないなあ、と寂しく思っていた当時を思い出します。でも、明るく楽しいこの曲が最後だったから、フェードアウトしていく悲しみ救われたのかもしれません。

◆参考:Disco Duck (Part1)/ ディスコ・ダック (Rick Dees / リック・ディーズ)1976 - 洋楽和訳 (lyrics) めったPOPS

9.ハロー・アメリカ


英語の歌詞が多いのですが、これ完全に日本人オリジナル曲だったんですね。汽車でシュポッポ、アメリカ旅行だ!という子供の目線の可愛い曲ですね。実際には、汽車どころか飛行機でなきゃ絶対無理でしょ、な広大なアメリカですけど。


芸能人がステータスとして行くことはあっても、当時の一般人には、アメリカ旅行なんて宇宙旅行並みに難しかった時代です。だからこそ、”アメリカ=夢の国”としてよく題材になっていました。外国といえばまずアメリカ、というくらいに。クリッパーは、フィリピン生まれで英語が堪能だったので自然ですし、もしかしたらアメリカでデビューしたほうがもっと売れたかもしれませんね。

10.ビコーズ・オブ・フラワー(DAHIL SA ISANG BULAKLAK)


フィリピン民謡とあり、歌われているのはタガログ語の歌詞です。今回、ネットで調べてみたら、1967年のフィリピンの映画「ビコーズ・オブ・フラワー」と関連があるようですね。アカデミー外国語映画賞へフィリピンから出品された映画ということですから、本国でかなりヒットしたのではないか、と。


その映画の主題歌なのかな?とてもしっとりとした、落ち着いた旋律です。日本ではあまり耳にしないタイプの異国情緒を感じさせます。ソロではありませんが、この曲もデニスがリードをとっているようで、他のメンバーはコーラスを担当しています。

11.ダンシング・クイーン


さすがに洋楽音痴の私でも、このABBA(アバ)の1976年発のヒットソングは知っていました。現在でもどこかで耳にするような超有名な曲ですね。クリッパーの曲が'78-'79年頃で構成されていますので、当時としては、比較的新しいヒットソングを集めていたというわけですね。


軽快なサウンドとソプラノ。この曲のソロは、クイーンっていうくらいだからダイアナ?でも、デニスのような気もするし、うーん、まだ聴き分けられておりません。クリッパーがカバーしたことで、逆に'70年代の息吹を強く感じさせていますね。
◆追記:コメント欄のBochibochidesuwaさんのお話によると、この曲もソロはデニスと思われる、ということです。

12.ANAK(息子)


当時フィリピンで大ヒットした曲で、日本でもかなり話題に取り上げられていました。カバーしたアーティストも多かったと思います。原曲は、髪の長いおじさん?が歌っていた記憶がありますが、歌詞もなかなかに切ないのです。


親の視点から描き出された歌。喜びに包まれた息子の誕生、その息子はやがて親へ反抗しグレて出て行ってしまった、今はどこに住んでいるのかも分からないが悪い噂を聞いている、という悲嘆の歌なのです。祖国の大ヒット曲ですけど、少年達が歌うのは不思議な内容でもあります。


ただ、クリッパーの卓抜したハーモニーはどんな大人の歌であろうと歌いこなしてしまうのです。むしろ、哀哭が強い内容だけに、過剰な感情を入れず、ただ歌としてあるがままに歌っていることが、余韻を残してくれていると思います。

14.クリスタル・リバー


LPには収録されていなかったB面で、実はこれもカバー曲なんですね。収録時間の関係なのか、この曲だけ外れたのは謎でしたが、見事に復活してくれて嬉しかったです。とはいえ、この曲はちょっと地味で、個人的には、あまり好きではなかったのですけど・・・(汗)、とはいえ完全収録には欠かせません。


「クリスタル・リバー」のリフレイン、フェードアウトが印象的です。

【1枚のCDが投げかけた問い】


今にして思えば、クリッパーって決して子供向けのキッズグループではなかったのですね。アイドルでもないし。実験的なグループで、そういうお手軽な存在にするには、音楽性が高すぎた、という感じです。どんな曲でも、あの美しいハーモニーにかかれば、高尚になってしまうのです。でも、程よい心地良さが必ずあって、癒されまくりですし。「ポップス界のリベラ」みたいな存在かも。


クリッパーのCDを手にして、無上の喜びがあったのは間違いありません。復刻盤CD自体が貴重で、何十年の時を超えて、奇跡的に復活するわけですし、そこには今とは比べ物にならないほどの思い入れがあるわけです。子供時代に夢中になったものであれば、それは原体験と結びついて、記憶や思い出に深く染みついているわけですから尚のこと、誰でも感動を抑えられないでしょう。


更に、それが世にほとんど知られていない、知る人ぞ知る作品であれば尚更です。「クリッパーについてこれほどまでに恋焦がれているのは、もしかしたら私だけかもなのかもしれない。」と思って、CD化なんて諦めていたのも事実ですし、少数派過ぎて絶望的な思いを抱いていた時間が長くありました。


B級アイドルよりもずっと知名度は低い、アジア系の少年姉弟グループなんて、一体誰が覚えているでしょう・・・。でも、数百万人がなんとなく覚えている歌手よりも、熱烈に愛したファンが数百人(もしかして100人以下かもしれませんが)いて、その愛がどれだけ深く長く続いているのかが大事なのだ、と今回のことで実感しました。


もちろん、だからといって誰もが奇跡的に復刻されるわけではありません。その想いに裏打ちされたような確かな実力があったからこそ、そして作り手(SONY)の方々の温情があったからこそ、クリッパーのCDを手に出来たのだと。私は、SONYの回し者ではありませんし(笑)、なんのロイヤリティも頂いてはおりませんが、心から感謝の言葉が出てきます。


音楽業界は少しでも利益がなければ、非情にアーティストを切ったり、原盤争いなど醜い争いを聞くことも多いのですけれど、「素敵な音楽を作り出したい」と思う熱情を抱いて仕事をしている方もゼロではないと信じていたいと思いました。CDの売れない時代です。CDがイベントのおまけのように売られる時代です。


ゴミのように捨てられ、まるで無価値で邪険な扱い受けるCDと、たった1枚でも魂を洗われるような奇跡の1枚との違い。同じフォーマットでありながらこの違いはなんなのか、とここ数日考えていました。安い配信や違法ダウンロードで、ただの「データ」となってしまった音楽に寂しさを覚えている昨今でもあります。


でも音楽って本当は、心をときめかして日々の雑念を振り払い、魂を救ってくれるだけのパワーもあるものですよね。時には、世界を動かすことだって、奇跡だって起こすことができます。私は、ささやかだけれど本当に幸せな奇跡のような一瞬をもらいました。クリッパーのCDを手にとってくれた、名も知らないファンの皆様。私と共に少しでも幸せを共有してくれたら嬉しいです。そして、今も


 クリッパーCD絶賛、発売中!


最後は宣伝になっちゃったかな(笑)。


www.sonymusicshop.jp
(オーダーメイドファクトリ商品のため、通販のみです。)

*1:後に、この曲は別の男性グループにカバーをされてドラマの主題歌にもなっていますが、それでも収録曲はクリッパーのほうでしたね。

*2:ガラスの仮面姫川亜弓風に、読んで下さい