BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

夢と元気を与えてくれた永遠の少年、山崎圭一

早すぎる死、で永遠に刻み付けられた歌声

山崎圭一

本当に突然、ふっと閃いて山崎圭一君について書きたくなりました。彼は、私の幼少期に出会った夢の少年グループ、ビッグマンモス(BM)*1の一員でした。児童劇団出身の子供達15人ほどで結成されたBMのユニフォームは、赤と白のアメフトTシャツにゼッケン番号が付いたもの。


ヤセヤマこと山崎圭一君のゼッケンナンバーは、27番。デビュー曲、『あの子の心はボクのもの』で文字通りハートを盗まれてしまった(笑)お子様の私は、発売されたEP盤の付録についていたメンバー一覧表を諳んじてメンバーの名前や年齢、ニックネームなどを頭に叩きこんでいました。当初のお気に入りは、一番背が低くて繊細そうなアッチャンこと長谷川淳史君。


一方、巷でBM初期メンバーで人気があったのは、リーダー格だったノンノン(森井信好君。お姉さまを夢中にさせる美貌の少年)とカネゴン兼安博文君。熱血漢のガキ大将?)。そして別格で歌声までも甘い、ラブリーフェイスのコーちゃん(岩田浩一君)。しかし、そんな路線系とはまた違った意味で歌で頭角を現していったのが、ヤセヤマこと圭一君でした。


BMは番組制作のオリジナルナンバーから唱歌、海外の人気ソングなどを歌っており、コーラスグループというより、全員で歌い踊る少年グループでした。今で言うならジャニーズJr.のキッズ版かな。歌は全員で歌い、たまに数名の少年がソロを取るという形式が多かったのですが、その中で”ソリスト”と言っても過言ではないほどの活躍をしたのが圭一君でした。BMでも初めてのソロナンバーだったと思われる『こぐまのテディ』。この曲に衝撃を受け、一気に圭一君にフォーリン・ラブ!となりました。

【小さな体のスーパーシンガー】


圭一君の声というのは、音感・伸び・歯切れが抜群に良く、少年らしい力強さと茶目っ気と潔癖さを持ち合わせた理想的な声で、もっとも私を魅了したのは圧倒的な表現力でした。歌詞がまっすぐ心に響いてきて、熱っぽく語りかけてくれているような調子なのです。それでいて時折とろけそうに甘かったり、やんちゃだったり、澄み切っていたり、と七色に変わるミラクルボイス


こぐまのアニメに向かって、ちょっとおませなラブソングを聴かせる圭一君を見ながら、「小熊と人間って結婚できるのかな?」なんて半分真剣に考えておりました。(→そんな可愛い頃もあったのさ(笑)。)この時のヤセヤマ君のファッションは素朴ながらもちょっとおめかしした感じ。どこかアメリカン・キッズのような異色さで、目が釘付けになったものです。


圭一君は地黒でおでこが広く、目もクリクリと大きい、ビーバーのような歯を持ち合わせた派手な顔立ちに、天然パーマでロン毛という、「ちょっと周りにいないよ、こんな子」と思わせるイデタチでした。惚れてしまえば(笑)そんな個性的な見た目もどんどん気に入っていきました。もっとも、やはり一番惹きつけたのは、その歌声でしたが。


視聴者から歌詞を公募して作られた『やっぱり僕は僕なんだ』は、彼のピークの歌声を存分に詰め込んだような曲で、レコードを数千回聴いた気がします。丁度、3人の新メンバーが加入してきた頃でその中に1歳違いの弟・公彦君がいました。簡潔で短い曲ですが、その歌詞は意外に切実で「勉強もスポーツも弟に叶わない、ママは弟ばかりを贔屓する。でも僕だって頑張ってるんだから比べないで!」という内容なんです。


それを顔もソックリの公彦君との対比で鮮やかに、少しだけ悲哀を感じさせる情感たっぷりに歌い上げる圭一君にどれほどシビレていたか。天性の美声もありますが、等身大の子供の気持ちを全て代弁するような的確な表現力はズバ抜けていて、ただ歌が巧いだけの少年とは一線を画していました。当時は、幸か不幸か伴奏も超シンプルだっただけに歌声だけで勝負!という面があります。


現代では、夢や希望を歌い上げたBMのピュアな世界を再現するのは至難の業かもしれません。ラップやパーカッションの多用で、むしろ歌はちょっとした味付け程度に聴こえてしまうこともあります。子供でも「カッコよく見せたい」というのが意識が邪魔になっている今の少年歌手達を見ていると、シンプルだからこそ、直球で響いてきたBMの歌声はまさに”奇跡”のような瞬間だったと思います。

【ヤセヤマよ、永遠に】


番組で7年間もレギュラーを続けた圭一君(と上級生メンバー達)への感謝をこめて、そしてその変わりゆく歌声を惜しむかのように、最後のソロナンバー『ヒーローになれ!』が発表されました。小学生から中学生へと大人の階段を登っていく上級生達をスポーツの世界を題材にした、ドラマチックな曲でした。ヤセヤマ君は、そこで挫けそうになるアスリートの少年達に熱い眼差しで渇を入れる、”象徴”的な存在の少年。


全盛期に比べると重く低くなっていった歌声と引き換えに、雄雄しく逞しく成長していく1人の少年の想いが満ちていて、何とも言えない感動を覚えました。やがて圭一君の変声後は、その伸びやかな歌声は弟の公彦君にバトンタッチされました。あまり長い時間ではありませんでしたが、兄の思いを受け継いだような公彦君の歌声にも爽やかな風を感じたものです。


受験を控えた中学生という難しい時期に、沢山の素晴らしい歌声を残してくれた圭一君は、仲間と共に番組を静かに卒業していきました。当然、普通の少年に戻っていき、恐らくTVでも二度と会えない予感がしていましたが、そのわずか半年後、圭一君は海の事故で、14歳の短い生涯を終えました。(この事実は、実に20年以上の時が過ぎてから知り愕然としたものです。)


家族や親友など身近にいた人達とは比べ物にならないけれども、たとえTV画面を通してであっても、同じ時間を過ごし、一緒に成長していった彼は紛れもなく仲間の1人であり、一番身近な「歌の上手い少年」でした。そんな彼のことをおぼろげに覚えているBMファンのみならず、決して忘れることはできない永遠の少年として、今でも「愛しているよ」と天国の彼にメッセージを贈りたいと思います。


そして今でも変わらず、元気パワーをもらっています、ありがとうね、と。


boysvoice-2.hatenablog.com
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*1:現在も放映中の「ポンキッキ」の直前に放映されていた子供番組「ママと遊ぼうピンポンパン」の中の少年コーラスグループです。