BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

’88 ドレスデン十字架合唱団の思い出(1)

旧・東独の正統派合唱団

ちょうどあと数日でドレスデン十字架合唱団の来日コンサートが東京で開かれます。演奏曲目は、かなり定番の『J.S.バッハマタイ受難曲』。


大好きなバッハの曲ですし、充分に名曲なのですが、もう少し毛色の変わった曲が聴けないものかな・・・と正直思ってしまいます。聖トーマス教会合唱団の公演時も、この『マタイ』となるとさすがに飽きてしまうのです。


もちろん大好きなフレーズもいっぱいありますし、ソロも素晴らしいのですが、やはり重厚すぎて重苦しく、あまり元気にはなれないせいなのです。(そりゃあ受難曲なので当然ですが)なので今回は、申し訳ないけれどもパスしてしまいました。同じ頃、芝居を見に東京へ繰り出すことになったので、どうせならうまくバッティングさせても良かったなあ、とちょっと後悔しつつ。


ドレスデン十字架合唱団の歌声は、聖トーマス教会合唱団に比べてももっと幼く可愛らしい感じなので、ソロは若干弱々しく響きます。*1しかし、大人数でありながらその合唱は一つにまとまっており、とても聴きやすく、安定感があります。いわゆる「疲れない気持ちの良いコーラス」が持ち味かと思います。


毎回、多くの少年団員と青年メンバーを率いて日本に演奏旅行に来る合唱団。合唱団としては7,8年に一度は来日していますが、頻繁に来日するわけではないので、次に来日する頃には、少年達は青年団員に成長しているか、退団しているか、そんな一期一絵の貴重な出会いになります。

【1日だけのフリータイム同行】


さてそのドレスデン十字架合唱団といえば、忘れられない思い出があります。まだ彼らが東独を代表して来日した'88年、私はペンパルだった団員のS君に会うために田舎から上京しました。このS君とはひょんなきっかけで1年前から文通を始めていましたが*2、まさか来日する日が来るとは思わず、実のところ嬉しいよりも戸惑いの方が大きかったのです。


ドイツ語での手紙のやりとりはなんとか辞書片手に悪戦苦闘しながら続けていましたが、会話は2歳児以下・・・相手も英語は話せず、どうしたものか、と会う前からお腹が痛くなりそうでした。公演終了後、恐る恐るバス前の団員に呼び出してもらいました。S君は、いたいけな少年ではなく(笑)、すっかり”生粋のドイツ人青年”という風格で登場。私といえば引きつり笑いと片言のあやしげなドイツ語でちょこちょこ話しかけるのが精一杯でした。


翌日は、合唱団のフリータイム。前日、つたない会話の中で予定を聞かれ、特に決めてないと言ったら、「これから東京見物に行くから同行しないか。」というお誘いを受けてしまったのです。予想もしてないことだったので、内心「どうしよう!?」と焦りましたが、なんだか勢いで了承してしまった自分。そのおかげで、脂汗をかきながらの長い1日が始まりました。


大所帯の合唱団員は、いくつかのグループに分かれて、ホテルの小型バスに揺られて旅立ちました。引率の先生や関係者と言っても数名なので、S君など青年メンバーは、自分達の予定をあらかじめ立ているらしく、付き添いなしで慣れない東京の街を歩くことになりました。他に陽気な?青年メンバーが2人、そして(どう見ても他の少年達に馴染めないような無口で愛想のないの)少年団員が1人という布陣。そこに、日本人ファンらしき女性が2人ほど交じっての摩訶不思議なメンバー構成になっていました。


(つづく)


O Musica

O Musica

ジャケットが斬新なので思わず買ってしまいましたが、いかにも正統なドイツ民謡集でした。


boysvoice-2.hatenablog.com

*1:アルバムでも少年のソロはかなり少ないです。

*2:団員とのお付き合いはこの時が最初で最後だったので思い出深いです。