BOY’S VOICE 新・永遠の少年たち

少年の声と少年文化に特化したブログです。

思い出の一頁、聖フローリアン少年合唱団’97来日公演

素朴で温かな歌声

たまたま家の中で片付けを行っていたら、8年も前の公演の感想文が出てきました。今では記憶が曖昧になっている公演ですが、折角なので思い出の一ページを公開しようと思います。


'90年と'93年に続いて聖フローリアン少年合唱団の来日公演に行きました。今回は、'93年に大感動した東京マリア・カテドラル教会でのコンサートということでいつも以上に気合も入ってました。この教会は、装飾の派手なヨーロッパの教会とは一味違って、簡素で質実剛健なイメージです。私の個人的な感想からいうと、響きも硬質な(まるで洞窟を思わせるよう)感じがします。


しかし、この独特の響きが聖フローリアン少年合唱団の柔らかく、実に優しい歌声ととてもよく合っていて一層美しさを引き立ててくれるような気がしました。水をうったような静けさの中、少年達の歌声が辺りに響きわたると、魂が吸い込まれていくような心地良さを感じ、とあらゆる雑事が消えて透明な気持ちになっていきます。本当に、「この瞬間のために自分は生きていたのだ」と思えるほど彼等の歌声は純粋で清らかでした。


 指揮者のフランツ・ファーンベルガー氏は、'78年にウィーン少年合唱団を率いて日本公演を行い、その後、聖フローリアン少年合唱団で長らく指導を続けているそうですが、氏のなみなみならぬ指導力と深い愛情が少年達の音楽性に表されていると思いました。決して目立つリアクションをするわけではないのですが、まるで幼子を見守る父親のような優しさと懐の深さを感じるといったら大袈裟でしょうか。


宗教曲は、バッハの「主よ、人の望みの喜びよ」やシューベルトの「アヴェ・マリア」「自然のなかの神」といった耳馴染みの曲が並びました。いつも思うのは、彼等のコンサートにはものすごく懐かしさを覚えてしまうことです。


'70年代や'80年代の初めに録音されたウィーン少年合唱団のアルバムが原体験となってる私には、このようなレパートリーがその頃と重なって昔に引き戻されるのだというのも理由の一つです。しかし、それ以上に”素朴で気品のある心”を感じさせられるからかもしれません。


 ソプラノ・ソリストルドルフ君の歌った「アヴェ・ヴェルム・コルプス」「子供らよ、うたえ」も、とても良かったです。教会コンサートということで、また違った緊張感もあったのでしょうが、一音一音確かめるように大事に歌い上げる姿は素敵でした。


小さなアルトのクリストフ・プラウドゥル君との「ヘンゼルとグレーテル」からの二重唱も不思議に子供らしさより、歌い手の風格が感じられてきました。合唱も全体的に安らぎを感じさせる素朴な歌声でした。「時代がどんなに変わっても失いたくない大切なもの」それが私の聖フローリアン少年合唱団に感じている思いです。


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